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日立が50代男性に「執拗な退職勧奨」、慰謝料20万円の支払い命じる 横浜地裁

2020年03月24日 18:21  弁護士ドットコム

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日立製作所で働く50代男性が、部長から違法な退職勧奨を受けたとして、慰謝料など計272万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が3月24日、横浜地裁であった。新谷晋司裁判長は、原告の請求を一部認め、慰謝料20万円の支払いを命じた。


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判決後、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開いた男性は、「仕事を取り上げられながら退職強要面談を受け続け、絶望感を覚えました」と訴えた。



●計8回のキャリア面談

判決文によると、男性は1988年4月に入社し、ソフトウェア関連の業務を担当。2016年4月以降は課長職となり、業務管理をおこなっていた。



2016年8月から計8回、部長と個別でキャリア面談が実施された。その中で「仕事のアウトプットが雑すぎ」、「期限を守れない」などと言われ、日立グループ内異動や社外の転職支援を薦められた。



男性は4回目の面談で「日立を辞めるつもりはない」と答えたが、その後も面談は実施され、部長は「給料が下がったら、社外転身を考えるのか」、「できないのに高い給料だけもらっているって、おかしいよね?」などと述べた。



新谷裁判長は、退職勧奨について、一旦退職に応じない旨を示した従業員に対して、説得を続けること自体は「直ちに禁止されるものではない」とした。



ただ、部長による退職勧奨は「相当程度執拗」であり、裏づけなく他部署での受け入れの可能性が低いことをほのめかしたり、他の従業員のポジションを奪う必要があるといった男性を困惑させるような発言をしたりすることは、「退職以外の選択肢についていわば八方塞がりの状況にあるかのような印象を、現実以上に抱かせるもの」と指摘した。



さらに、面談の中で、能力がないのに高い賃金をもらっているなどといった部長の発言は「男性の自尊心をことさら傷つけ困惑させる言動」であり、部長による退職勧奨は「不当に抑圧して精神的苦痛を与えるもの」で社会通念上相当と認められる範囲を逸脱したものと認めた。



●2008年以降、2割の社員が人員削減の対象に

経団連は、終身雇用や年功序列など「日本型雇用」の見直しを訴えている。電気情報ユニオンによると、2008年のリーマンショック以降、2019年までに電気産業114企業の社員のうち、公表されただけで約2割にあたる50万8413人が人員削減の対象となっているという。



代理人の高橋宏弁護士は「電気産業はリストラが続くと言われている。残りたいという意思を明確にしておけば、執拗な説得は違法であると明確になった」と判決の意義を語った。



男性は面談を録音しており、「証拠としても大きかったし、主張の正当性が認められたポイントだと思う。きちんと録音して記録することが大事」と話した。



●日立製作所「今後の対応を検討します」

日立製作所は弁護士ドットコムニュースの取材に「判決内容を精査し、今後の対応を検討します」とコメントした。