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竹内涼真が語る、『テセウスの船』撮影の日々 「出口が見えない時はとりあえずがむしゃらに」

2020年03月22日 17:11  リアルサウンド

リアルサウンド

竹内涼真『テセウスの船』(c)TBS

 竹内涼真がTBS日曜劇場の初主演で挑んだヒューマンミステリー『テセウスの船』が、3月22日に最終話を迎える。ミステリー作品ならではの考察に加えて、登場人物たちへの愛のあるツッコミが飛び交い、SNSの反響と視聴率が共に盛り上がりを見せている。


【写真】キャスト発表時のポスター画像


 「音臼小無差別大量殺人事件」の犯人の息子として生きてきた主人公・田村心(竹内涼真)は、過去にタイムスリップしたことをきっかけに、事件当時の父・佐野文吾(鈴木亮平)の無実を確信し、事件を食い止めて過去と未来を変えようと奮闘。先週放送された第9話では心の奮闘も虚しく、庭から見つかった青酸カリが決定打となり、文吾が警察に連れて行かれてしまった。視聴者の意見がここまで分かれるほど、誰にも黒幕が分からない前代未聞の展開で最終回を迎える。


 雪山を駆けずりどんなに必死に頑張っても悲惨な展開ばかりが待ち受ける主人公・心。SNSでツッコミが入るのは、いつしか感情移入してしまった視聴者の応援の熱の表れだろう。そんな愛される“心さん”を作り上げた竹内涼真が、自身が感じた心さんの苦悩と、涙の演技、そして物語のラストについてもギリギリのところまで明かしてくれた。(編集部)


■「竹内涼真だったらみきおを見失わない」


――私も“ポンコツ心さん”という記事を書かせていただきましたが、本当に愛される役柄ですよね。視聴者からもツッコミが……。


竹内涼真(以下、竹内):ありがとうございます。周りのみなさんからお話も聞きますし、自分でSNSを見たりもしました。現場でも、スタッフさんが見せてくれて、それを読んでみんなで笑っていました(笑)。


――演じていて、「これはないよね」と思っちゃうシーンも?


竹内:ありますよ!(笑)。竹内涼真だったら(お楽しみ会当日に)みきおを見失わないですし、死体を見たらまずは警察に電話しますし、事情をちゃんと説明します。でも、実際にはタイムスリップなんてないけど、その状況にいたら冷静な判断はできるのかな?って。これは常に現場でも話していますし、たとえばノートを投げたり、死体を見た時にとった行動には、必ず理由付けをして、その理由を明確にした上で演じているんです。なので、僕らとしては「なぜ?」と思ってもらえてありがたいんですよね。


――私たちは、思うツボなわけですね。


竹内:そうです(笑)。


――ビックリするような考察もありましたか?


竹内:“僕(心)が犯人”という人もいましたよね(笑)。本当に最後までわからない物語になっているので、おもしろいなと思いながら、僕ら以上に想像を膨らませて盛り上がっていることを実感しています。どんどん『テセウスの船』の物語が膨らんでいっている感じがして、すごく嬉しいです。


――最終回の脚本を読んだ時の感想を聞かせてください。


竹内:現代の最悪な家族の状況から始まって、第10話の間に(現代と過去を)行き来して、「自分の家族はこういうものだったんだ」と知ったことで、彼の気持ちは救われた部分が大きいんだなと思いました。心が(過去の)佐野家を客観的に見ている場面には、モノローグが入る。そのシーンが最終回でもあるんですけど、心としては第1話から第10話までを通してみると、幸せだったんじゃないかなって。あとは黒幕が「なぜ佐野家を追い詰めるような行動をとったのか」っていう理由がちゃんと台本に描かれていたので、スッキリしています。


――4カ月の撮影期間を振り返ると、あっという間でしたか?


竹内:あっという間じゃなかったですね(笑)。主人公の気持ちを作るのがすごく大変で。彼が背負ってきたものや、現実世界で見てきた大変なことを、どう視聴者のみなさんに分かっていただくか……。どういうリアクションをしたら、物語に引き込むことができるのかを大切にしなきゃと思っていたんですけど、そこに気持ちを持っていける時といけない時があるんです。田村心としてブレずに気持ちを持っていけるかが勝負というか。毎日集中を切らさずにいるのは当たり前のことだけど、やっぱり大変でした。


――苦しかった?


竹内:苦しい時もありました。心が直面している状況が辛いので、やっぱりそういう気持ちになっちゃうんです。でも佐野家の子どもたちがとても元気だし無邪気で。彼らと一緒にいると、キツくてもがんばれました。


――精神的に一番辛かったシーンはどこですか?


竹内:第1話のタイムスリップ前ですかね。30年間殺人犯の息子として生きてきて、唯一の味方である奥さんが死んでしまう。味方が目の前から消えてしまうのはすごく辛いことだし、そこから物語が一気に展開していくので、立ち上がりが一番キツかったです。どれくらい彼が追い込まれなくてはいけないのかという過酷な人生を探るまでが苦労しました。


――肉体的に一番辛かったのは?


竹内:やっぱり雪山ですね。思っている以上に前に進まないんですよ。しかもスニーカーなので(笑)。スニーカーで雪山を走っちゃダメなんだなと改めて思ったし、寒さもあって。半年前からロケで行くはずだった場所が、暖冬で変更になったんです。急遽、雪があるところを探したら、ものすごい雪で天候も安定しなくて。でも、現代からタイムスリップした心が、吹雪の中でもがいて、がむしゃらに家族のためにがんばろうとする『テセウスの船』のイメージは、あの過酷なロケのおかげでできたかなと。


■「最終回の僕の気持ちにエンジンがかかった」


――主人公としてたくさん登場人物と接する役柄だったと思いますが、共演者との特に印象的だったシーンはありますか。


竹内:ずっとお会いしたかったユースケ・サンタマリアさんとも初めてご一緒して。ユースケさんが、本番に何を言い出すかわからないっていうドキドキ感が、すごく楽しかったです(笑)。(ユースケ演じる金丸は)第3話で死んじゃいましたけど、気持ちが合って、いろんなお話をさせていただきました。


――父親役の鈴木さんとは物語の重要展開で共演するシーンが多かったと思います。


竹内:(鈴木)亮平さんにはすごく助けられました。心は気持ちが先行する役なので、どうしても前のめりになりすぎちゃう時があったんですけど、亮平さんが一歩引いて見てくれて。ミステリーは後々の展開に影響することもあるので。亮平さんとも相談しながら作り上げた部分もあるし、亮平さんが言う文吾さんのセリフは、田村心にすごく響きました。


――振り返って特に一番印象に残っているシーンはありますか。


竹内:第3話で「あなたが父親だ」と打ち明けるシーンは、本番にいくまでに2時間以上かかったんです。でも、気持ちでぶつかってみたら、結果あのシーンができて。撮影中は本当のお父さんだと思っていましたね。


――家族との撮影のシーンはどんな雰囲気でしたか。


竹内:撮影しているとどうしても過去と現代がフラッシュバックするので、お母さん(和子/榮倉奈々)が現代ではあれだけ苦しんでいたのに、過去では笑っていたり、2つの人生を知っているので、些細なセリフや表情でもグッときちゃうんです。あと、家族の(番家)天嵩くんと(白鳥)玉季ちゃんの演技で、最終回の僕の気持ちにエンジンがかかったといっても過言ではなくて、2人の表情や演技にも、注目してもらいたいです。


■「僕はすごく好きなラスト」


――竹内さんから見て、心さんはどういう存在?


竹内:不器用だし、物事の伝え方や、やっていることが正解なのかはわからないけど、彼が発する言葉や行動には人を動かす力があると思うんです。それくらい「家族を守りたい」っていう気持ちが誰よりも強い人間で、その諦めない気持ちを一番大事にして演じました。


――そういう心さんを演じてきて、竹内さん自身に響いたことは?


竹内:出口が見えない時は、とりあえずがむしゃらにやったほうがいいんだなって(笑)。


――(笑)。クランクアップを迎えて、やり切ったという感じでしょうか?


竹内:本当にきつかったです。終わってスッキリしたなという感覚もあります(笑)。視聴者の方は結末が気になっていると思いますが、第1話から積み重ねてきたものがちゃんと完結する感じがあって、僕はすごく好きなラストでした。


――今作を経て、改めて見えた課題は?


竹内:気づかされたこともたくさんあるし、現場をやりながら思ったこともあって。“これが課題”というよりは、課題はそれぞれの作品の中で見つけることなのかなと思いました。
あとは、準備が大事ということですね。


――最後に、竹内さんにとって『テセウスの船』はどんな作品になりましたか?


竹内:自分の気持ちなのか、役の気持ちなのかがわからなくなるほど、ものすごい熱量で演じられた作品です。あとは観てくださる方の声がどんどん広がって、ひとつの作品として完成するんだと改めて感じました。それも含めて『テセウスの船』が自分の中ですごく好きな作品になったので、よかったなと思っています。


(nakamura omame)