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賃貸住宅を借りるときの「敷金」、民法改正でトラブルが減る? 4月1日施行

2020年03月22日 09:41  弁護士ドットコム

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2020年4月1日に施行される改正民法で、敷金の取り扱いを含む「賃貸借終了時のルール」が明文化されることになった。


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これまでは、判例やガイドラインなどをベースに運用されていた実務上のルールに基づいて、賃貸借終了時のトラブルに対処していた。



その実務上のルールを明文化したのが今回の改正であるため、賃貸借契約をめぐる解決指針・ルールが大きく変わるわけではないが、あらためて法律という形として明確になったことで、トラブルに発展するケースが減ることが期待される。



●敷金は何のためのものなのか

マンションやアパートなどの賃貸物件に住もうとするとき、不動産会社や大家(賃貸人)と賃貸借契約をむすぶ。



その際、家賃とは別に、おおむね家賃の1~2カ月分の金銭を支払うことが多い。これが「敷金」だ。敷金は、家賃の滞納や退去時に必要な修繕などにそなえて、預ける「担保」の役割をもっている。



したがって、家賃の滞納もなく、退去時に修繕の必要がない状態で賃貸物件を返せば、敷金は基本的に借りた側に戻ってくるという運用になっている。



●敷金に関するルールを明文化

ところが、退去時の敷金の返還についてはこれまで法律上の規定がなく、「大家さん、敷金返して」「いや修繕が必要だから返さない」というようなトラブルが繰り返し起きていた。



そこで、今回の法改正では、「敷金は、入居者の支払うべき債務を担保する目的で、入居者が賃貸人に支払う金銭である」と明確に定義した上で、



・敷金は、賃貸借契約が終了して賃貸物件の返還を受けたときなどに返還する
・敷金の返還額は、入居時に支払った敷金から家賃などの未払い額を引いた残額とする



といった、判例をベースに運用されていた実務上のルールをあらためて民法に明記した(622条の2)。



なお、地域によっては、賃貸借契約をむすんだ際に「権利金」「保証金」などの名目で支払う金銭があるが、名目にかかわらず担保の役割をもっていれば、「敷金」に当たることも明記された。 



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また、賃貸借契約が終了する際の「賃貸物件の原状回復義務の範囲」も、民法に明記された。



賃貸物件の入居者が借りてから退去するまでの間に生じた損傷は、入居者が回復しなければならない。これが「原状回復義務」だ。



一般的に、原状回復に必要な費用は入居時に支払った敷金から差し引かれ、その残額が敷金の返還額となるため、「敷金」と「賃貸物件の原状回復義務の範囲」は密接に関連している。



ところが、現状回復義務の範囲についても、敷金と同様にこれまで法律上の規定がなかったため、トラブルが多数発生していた。



そこで、今回の法改正で、「通常損耗(賃借物の通常の使用によって生じた損耗)」や「経年変化」を除き、入居者は賃借物件を受け取った後に生じた損傷の原状回復義務を負うことを明記した。





これは、国土交通省作成「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」や具体的なトラブルに関する判例をベースに運用されていたこれまでの実務上のルールに沿った規定である。



●民法改正で「敷金の取り扱い」が特段変わるわけではない

「敷金の取り扱い」に関する今回の改正は、賃貸借契約をめぐる実務上の運用を大きく変えるようなものではない。



もっとも、これまで多数発生していたトラブルの解決指針・ルールが、法律という形で明確になったことで、トラブルに発展するケースが減ることが期待されている。