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ローエンドモデルの存在が輝く新MacBook Air - 松村太郎のApple深読み・先読み

2020年03月19日 18:02  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
AppleのMacBook Airは、ノート型Macのなかで最も人気のあるモデルでありながら、長らく放置されてきた経緯があった。2018年10月の刷新でようやくRetinaディスプレイが搭載され、当時のスタンダードだったバタフライメカニズムのキーボードを搭載した。ボディを100%リサイクルアルミニウムで作っていたことにも驚かされた。

3月18日、iPad ProとともにMacBook Airも刷新された。今回の新モデルでは、2019年10月に登場したMacBook Pro 16インチモデルと同様に、シザー方式のMagic Keyboardを採用している。ストロークは0.55mmから1mmへと深くなり、「薄ペタ」という感覚だったのがしっかりとした打ち心地が得られるようになった。薄さゆえに頻発していた不具合も改善されるはずだ。新モデルでも100%リサイクルアルミニウムのボディは引き続き踏襲され、47%もの二酸化炭素排出を削減している。

プロセッサは第10世代Intel Coreシリーズを搭載する。標準ラインアップは1.1GHzのデュアルコアIntel Core i3、同じく1.1GHzクアッドコアIntel Core i5。オプションで1.2GHzクアッドコアIntel Core i7が選択できる。Appleによると、プロセッサの処理性能は最大2倍、グラフィックスは最大80%高速化したとしており、さらにストレージも256GBからと倍増させ、ビジネスでも不満なく使える正常進化となった。
○リモートワークにまつわる性能は文句なし

カラーバリエーションはこれまで通り、ゴールド、シルバー、スペースグレイの3色展開で、FaceTime HDカメラ、スピーカー、マイク、ヘッドフォン端子を備える。Thunderbolt 3ポートは左側に2つまとめられ、6K解像度の外部ディスプレイまでサポートする。

MacBook Airをメインマシンにして通勤や通学で持ち運び、オフィスや学校、自宅で大きなディスプレイにケーブル1本で接続し、充電しながら快適に利用する、という使い方も可能だ。バッテリー持続時間は最大11時間のワイヤレスインターネット、最大12時間のApple TVアプリのムービー再生をうたっている。

もちろん、さまざまなアプリを立ち上げて同時に利用したり、より負荷の高い作業が加われば、バッテリー持続時間は短くなる。それでも5~6時間確保できれば、外出先での仕事を十分に実現できるはずだ。

リモートワークで欠かせないのがビデオ会議だ。自宅に家族がいる場合、イヤフォンマイクやAirPodsなどを利用することになるが、MacBook Air単体でのビデオ会議性能はどうだろうか。

MacBook Airのステレオスピーカーは音量が25%大きくなり、低音は2倍の音量が出るという。MacBook Pro 16インチモデルでは、2つのウーハーを背中合わせに配置し、振動を抑制しながら豊かな低音を実現した特許技術が用いられている。MacBook Airも低音に言及しており、同様の仕組みが活用されたかもしれない。

加えて、指向性ビームフォーミングを持つ3マイクアレイも採用されており、よりクリアな音声とノイズキャンセリング性能が期待できる。再生、録音双方のオーディオ性能が高められている点は、リモートワークのビデオ会議でも威力を発揮してくれるのではないだろうか。

ちなみに、MacBook AirはDolby Atmos再生に対応しており、ノートパソコンでのエンターテインメントコンテンツの再生でも高い満足度が得られる可能性がある。
○狙いはローエンドモデル

Magic Keyboardを採用したMacBook Airは信頼性とキーボードの打ち心地を改善したほか、オーディオ性能も高めている。そして第10世代Intel Coreプロセッサは、処理性能とグラフィックス性能も大きく伸ばした。

にもかかわらず、米国では999ドルから、日本円では税別10万4800円からと価格が大きく引き下げられ、戦略的な価格設定になった。学生・教職員向けのアカデミック価格は税別93,800円からと10万円を切り、さらに4月6日までの購入で1万8000円分のギフトカードが付いてくる。

新しいMacBook Airは、この価格設定を最大限に享受できるローエンドモデルが注目だ。前述の通りリモートワークなど、普段とは異なる環境での仕事が増えるなかで、充実した環境を1.29kgという軽さで持ち歩けることは強い味方となる。しかも、耐久性が高く質感も良いアルミニウムは、環境負荷が少ないリサイクル素材だ。

もちろん、MacBook Proほどのパフォーマンスは期待できないが、普段のビジネスや教育の現場で十分な実力を発揮してくれることは間違いない。実機でのパフォーマンスについては、追ってレビューで検証したい。

著者プロフィール松村太郎1980年生まれのジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。Twitterアカウントは「@taromatsumura」。(松村太郎)