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「若葉マーク」デビュー、その前に…改めて知りたい「運転者標識」の車体表示ルール

2020年03月19日 09:41  弁護士ドットコム

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「初心者マーク」などの標識を自動車に貼る際のルールを知っていますか? 先日、運転免許証を取得したばかりの初心者運転者の事故が話題になりました。事故車に貼られていた初心者マークの貼り付け位置が誤っているというのです。


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また、免許取り立ての初心者が初心者マークを貼らずに運転した場合、法律違反にあたることも「知らなかった」という声も目立ちます。新しい生活をきっかけに自動車デビューする人も多い新年度を前に、運転者標識の法的な決まりごとについて改めて整理してみました。



●免許取得ホヤホヤの若いドライバーが起こした事故

報道によると、3月11日の午前10時半ころ、福井県鯖江市の「マクドナルド西鯖江店」にプリウスが前方から突っ込む事故が発生。運転者の男性が駐車場に車を止めようとして、誤って急加速したとみられています。男性も軽傷を負いましたが、店の女性従業員も重傷で救急搬送されたといいます。



店内に頭を突っ込み、車体後部だけ外に出したプリウス。話題の多くは車体後方の右サイドに貼られていた「初心者マーク」に集中しました。



「初心者マークどこに貼っとるんじゃ! アルミボディだから磁石シートタイプは付かない、は言い訳にはならない。どうやってでも、見やすいように表示するのが義務」



「そもそも初心者マークの貼る位置が間違ってる時点で違反」



また、初心者マークを貼ることが義務だと知らない人もいるようです。この機会に、初心者マークや高齢者マークなど表示標識についてルールを確認してみます。



●初心者マークのほかに何があるの?

道交法にもとづく自動車の運転者が表示する標識(マーク)は、現在では4種類存在します。



(1)初心運転者標識(初心者マーク) (2)高齢運転者標識(高齢運転者マーク) (3)聴覚障害者標識(聴覚障害者マーク) (4)身体障害者標識(身体障害者マーク)



(1)の「初心者マーク」は、黄色と緑色の矢羽のようなデザインで、1972年から導入されました。「若葉マーク」の呼び方もおなじみです。表示対象者(道交法71条の5第1項)は「普通自動車免許」と「準中型自動車免許」を受けた人で、当該自動車免許を受けていた期間(当該免許の効力が停止されていた期間を除く)が通算して1年未満の人。



ちなみに、免許取得から1年以上を過ぎても運転技術に自信のない人は、初心者マークを付けていても問題ありません。



なお、初心者マークを表示する必要のないケースも一部紹介します。「自分の場合は付けるべきなんだろうか?」と悩むことが少なくないケースだと思われます。



(A)準中型免許の取得後1年未満の人が、普通自動車を運転するときは、初心者マークを表示する必要はありません。 (B)普通免許を取得して2年以上経ってから、準中型免許を取得した場合は、初心者マークを表示する必要はありません。



(2)の「高齢運転者マーク」は、1997年の道交法改正によって導入されました。当初は橙々色と黄色の2色に塗り分けられた「もみじマーク」と呼ばれるデザインが使用されていましたが、「枯れ葉マーク」や「落ち葉マーク」などネガティブな意味合いの呼ばれ方をするようになったため、ドライバーからは不評。



2011年から「四つ葉のクローバー」とシニアの「S」を掛け合わせた現行の4色のデザインに変更されました。表示対象者(道交法71条の5第4項)は普通自動車対応免許を受けた70歳以上の人で、加齢に伴って生ずる身体の機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼすおそれがある人です。表示対象自動車は初心者マークの場合と同じです。従前の「もみじマーク」も使用可能です。





(3)の聴覚障害者マークは、2008年の道交法改正によって導入されました。両耳の形をモチーフに蝶に見えるようにデザインされたことから、「蝶マーク」や「蝶々マーク」などと呼ばれています。



表示対象者(道交法71条の6第1項、71条の6第2項)は、普通自動車・準中型自動車を運転することができる免許を受けた者で、両耳の聴力が補聴器を用いても10mの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえない程度の聴覚障害のあることを理由に免許に条件を付されている人です。





(4)の「身体障害者マーク」は、2002年の道交法改正によって導入されました。四つ葉の植物をモチーフとするデザイン。表示対象者(道交法71条の6第3項)は、普通自動車対応免許を受けた人で、肢体不自由であることを理由に当該免許に条件を付されている人です。「準中型自動車」は表示対象自動車ではありません。





●4つのマークのうち、表示義務のあるもの

表示しなければ道交法違反となるもの(罰則等あり)が(1)初心者マークと(3)聴覚障害者マークです。表示を努力義務としているもの(罰則等なし)が(2)高齢運転者マークと(4)身体障害者マークです。



●行政処分と罰則

(1)初心者マークと(3)聴覚障害者マークを表示せずに運転した場合、道交法違反になり、反則金4000円と行政処分点数1点が課せられます。これは公安委員会による行政処分です。



一方、反則金を納めなかった場合は、罰則が科せられることもあります。(1)初心者マーク(3)聴覚障害者マークを表示せずに運転した場合、2万円以下の罰金(道交法121条1項9号の3)が科せられる可能性があります。



●表示位置

冒頭で取り上げた事故において、ネット上で多くの人が言及していた点です。事故を起こした自動車は車体後方の右サイドに初心者マークを貼っていました。しかし、この位置は貼るべき正しい位置ではありません。



初心者マークを含む4つの運転者標識の表示位置はすべて同じく定められています(道路交通法施行規則9条の6)。車体の前面と後面の両方に、地上0.4メートル以上1.2メートル以下の見やすい位置に表示してください。



指定場所以外の場所に貼ったり、前か後ろの片方に1枚だけ貼ったりしても、違反となりえます。きちんと前後2枚を指定の位置に貼りましょう。



また、フロントガラスにマークを貼ることも禁止されています(国交省の定める道路運送車両の保安基準29条4項)。他のドライバーに見えやすい位置に、前と後ろにマークを付けましょう。



●マークを付けた自動車には優しくしよう

上記の4つの標識に該当する表示対象者が対応するマークを付けて運転しているときは、危険防止のためにやむをえない場合をのぞき、その自動車に対して幅寄せや割り込みをすることも道交法違反(71条5号の4)になります。



違反すると、車種に応じて5000円から7000円以下の反則金と行政処分点数1点が課せられます。また、反則金を納めなかった場合は、罰則が科せられることもあり、5万円以下の罰金(道交法120条1項9号)が科せられる可能性があります。マークを付けて走ることは、自分の身を守ることにつながるわけです。



ただし「初心者マークを付けた準中型自動車」に対する上記行為は違反対象外となります。しかし、だからと言って、その自動車に無理な幅寄せや割り込みをしても良いことにはなりません。良識を持って運転してください。