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『恋つづ』は王道を超えた 視聴者の心に“恋”を灯した上白石萌音×佐藤健の功績

2020年03月19日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『恋はつづくよどこまでも』(c)TBS (c)円城寺マキ/小学館

 視聴者を胸キュンで圧倒し続けた『恋はつづくよどこまでも』(TBS系、以下『恋つづ』)の最終回が3月17日に放送された。開始1分で訪れるバックハグからのキスという勢いのあるオープニングから、ラストの職場のど真ん中でのキスまで、天堂(佐藤健)と七瀬(上白石萌音)の甘い生活が描かれ、これには視聴者も悶絶。SNS上には「胃もたれ」の声も上がっていた。「たけもねロス」「恋つづロス」の声が叫ばれ、とにかくイチャイチャし続けた最終回だが、実は本作は“王道”ラブストーリーの基盤に則った構成で、演出の部分でも光る箇所が多くあった。今回は、最終回の見どころをおさらいしつつ、『恋つづ』がなぜここまで多くの人を魅了したのかを分析したい。


【写真】佐藤健のバックハグ


■空港での七瀬からの「バーカ」にキュン! 二人の合言葉になった台詞


 空港で、天堂からの注意事項を受ける七瀬は威勢良く「はい!」と答える中、最後に天堂が言った「浮気するなよ」という言葉には、思わず七瀬も「バーカ」と天堂節で応戦。天堂の胸元を掴んで引き寄せ、キスをする七瀬は、いたずらっ子のような笑みを見せる。2人の間の「バカ」は愛情を含んだ合言葉になっていた。今まで天堂から放っていた台詞が、七瀬の口から飛び出すことで、2人の間に信頼関係が築けていることがわかる。こうした絆の深さは恋愛描写の中でもとりわけ心を掴むだろう。


■恋人と釣り合っているのか問題 格差恋愛の永遠のテーマ


 医師と看護師でキャリアも違う、年の差もある天堂と七瀬。どんなに信頼関係ができても、そこに付随してしまう“格差”に悩まされるのは恋愛あるあるだろう。そんな悩める七瀬が、自分のために成長したいと一念発起する姿は恋愛において理想の形だ。自分を成長させてくれる恋ほど素晴らしい関係性はない。さらに、天堂はそんな彼女を快く留学に送り出す。ただイチャイチャしているだけでなく、芯のあるカップルとして描かれた2人は、視聴者にとって理想の恋人同士になるように見られたのではないだろうか。


■雨の中で落ち込む七瀬を救う 傘を差し出す天堂


 会えない時間というのはより恋する気持ちを育む。待っている時の不安や焦れる気持ちは、大切に想う人がいる人なら誰しもが経験するだろう。留学に行く際の不安な気持ちを吐露する彼女を、天堂は優しく抱きしめるのであった。七瀬はここで、天堂がいないとダメだという自身の気持ちを再認識し、ずぶ濡れの姿で視聴者に感情移入させた。お互いを大切に想う気持ちを改めて知った七瀬の姿には切なさと愛しさが滲む。


■まるでシンデレラ! 靴の脱げた七瀬に靴を差し出す天堂


 院内でささやかながら執り行われた2人の結婚式。ここでも七瀬は靴が脱げて転ぶなど、彼女らしいドジを踏む。そんな時は天堂がいつものようにサッと彼女をサポートするのであった。靴を手に七瀬に履かせてあげるシーンは、まるでシンデレラのワンシーンで、魔王が王子になった瞬間であった。


 最終回だけでもこれだけ多くの胸キュン要素が盛り込まれていた本作。これ以外にも、キスやハグ、甘い言葉の数々など『恋つづ』に盛り込まれたキュンシーンは数知れず。こうした“胸キュン全部盛り”はラブコメの伝道作『花より男子』(TBS系)以来の衝撃だろう。まさに恋愛ドラマでときめきを感じたい人にはうってつけの作品であった。


 SNSなどでの反響の大きさに加え、安定した高視聴率も獲得した『恋つづ』。これはひとえに佐藤と上白石が築いていた作品の安定感ゆえだろう。恋愛ドラマが伸び悩む昨今のドラマ市場で、本作はしっかり結果を出した。その理由には、多くの視聴者が見たかった“王道のラブストーリー”דやりすぎなほどの甘い展開”があげられるのではないだろうか。


 さらに今やキャリアを持つ実力派俳優の域に達した佐藤健が、若手俳優さながらのキュンキュンラブコメに挑戦したことも大きい。佐藤のドSぶりは30代の俳優だからこそ出せた貫禄であり、そこからは腕のいい医師であることもしっかりと伝わってくる。さらに壁ドンやキスシーン1つとっても、ライトなキスではなく、しっかりと愛の感じられる濃厚な大人のラブシーンになっていたことも要因だろう。程よい刺激がラブコメに加わることで本作は魅力を増した。佐藤が培ってきた役者としての経験や知見の広さが本作をここまで押し上げたといえよう。


 一方で、上白石はそんな佐藤にしっかりついていくという健気さが七瀬と重なり、評価を得た。役者として佐藤の背中を追い、指導され伸びていく姿はまさに天堂と七瀬そのもの。物語の秀逸さだけではなく、役者陣の力あっての成功だったと感じる。


 30代に差し掛かる頃から、王道ラブコメやラブストーリーを演じなくなる俳優は多い。どうしても若手のフレッシュな役者が担うことが多いのが現実だ。しかし、今回の結果を踏まえると、熟練した芝居経験と、人生経験ゆえの深みのあるラブシーンはラブコメをより豊かにすることがわかる。この経験則から、今後こうした胸キュンラブストーリーが台頭することを期待したい。多くの人の心を潤した『恋つづ』には感謝の気持ちでいっぱいだ。


(Nana Numoto)