2020年03月18日 10:11 弁護士ドットコム
石碑が汚れていたので、きれいにしようと「白いペンキ」で塗った――。
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沖縄県南城市にある聖地「ヤハラヅカサ」の石碑が、ペンキで塗られて、市が対応を苦慮している。
市文化課によると、ヤハラヅカサは、琉球の創世神「アマミキヨ」が、初めて沖縄本島に上陸した「神聖な場所」とされており、市の「有形民俗文化財」に指定されている。
沖縄本島南部の「百名ビーチ」の北端にある海中(岩礁)にあり、「ヤハラヅカサ」と刻まれた石碑が建てられて、県内外から参拝する人が訪れていた。
ところが、市文化課に3月11日、「白く塗っている人がいる」と連絡が入った。確認してみると、県内の男性が、掃除の一環として、白いペンキで石碑を塗ったことがわかった。
石碑は20年近く前に建て直したものだが、満潮時には、海に沈んでしまうため、藻などが付着して汚れてしまうという。
この男性には悪意がなく、「きれいにしようと思った」ということだが、市は、警察に被害届を出すかどうかなど、対応を協議している(17日)。
はたして、どのような罪に問われる可能性があるのだろうか。
文化庁によると、国が指定した文化財(重要文化財)を損壊した場合、5年以下の懲役または禁錮または100万円以下の罰金とされる(文化財保護法195条違反)。
しかし、ヤハラヅカサは「市指定」なので、文化財保護法の適用対象とならないのだ。
また、今回ペンキが塗られたのは、ヤハラヅカサそのものではなく、ただの石碑なので、市の「有形民俗文化財」ですらない。
ただし、要件がそろえば、器物損壊罪(刑法261条・3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料)が適用される可能性がある。
一方、那覇市・崇元寺にある県指定有形文化財の石碑「下馬碑(げばひ)」の土台に缶スプレーで塗料を塗ったとして、50代男性が3月13日、文化財保護法違反の疑いで逮捕された。
沖縄タイムスによると、50代男性は容疑を認めているということだ。南城市のケースと同じように思えるが、どうして、こちらは「文化財保護法違反」が適用されたのか。
実は、こちらの「下馬碑」は、県指定有形文化財であるが、それと同時に重要文化財に指定されている「旧崇元寺第一門および石牆(せきしょう・石垣のこと)」の一部とされているのだ。
したがって、那覇市文化財課によると、下馬碑は、重要文化財に含まれるとして、文化財保護法が適用されたということだった。