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チュートリアル徳井義実、『テラスハウス』スタジオ復帰か? “バランサー”としての活躍を振り返る

2020年03月18日 10:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』(c)フジテレビ/イースト・エンタテインメント

 「お父さんが家出中」。その知らせを受けてから帰りをどれだけ待ちわびたことか。『テラスハウス』(以下、『テラハ』)のスタジオパートを支える大黒柱であり、「お父さん」と呼ばれて久しい徳井義実さん(チュートリアル)が、ついに活動再開を発表し、先日舞台復帰を果たした。


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 「いなくなって初めてその大切さがわかる」とはよく言うけれど、それは『テラハ』における徳井さんにも同じことが言えるだろう。ここではお父さんの帰還を純粋に願い、雑味のないエロおじさんとしての立ち位置から、YOUさん・山ちゃん(山里亮太/南海キャンディーズ)らとのトークの相乗効果や、“バランサー”的な役割に至るまで、徳井さんがテラハに残してきた功績を振り返ってみたい。


■雑味のないエロおじさんという立ち位置
 徳井さんといえば、恋愛経験が人よりも豊富で、トレンディドラマをこよなく愛し、ときおり妄想癖が暴走してしまうようなキャラクターが印象的だ。その、恋愛レベル的に一歩リードしたような立ち位置から発せられる言葉に、ハッとさせられる場面が少なくない。


 そんな彼は、ちょっと下ネタ的な発言をしてもなんだか許されてしまう、というより不快感を与えない特異なキャラクターを有している。分析するに、YOUさんが直接的な表現を多用してしまい「言いすぎてしまった……」と反省することがあるのに比べ、徳井さんの下ネタはすべてを笑いに昇華しているからこそ、“なんだか軽く受け取れる”のだろう。印象的なシーンを振り返ってみよう。


 2015年より配信された東京編『TERRACE HOUSE BOYS & GIRLS IN THE CITY』の第10話。美容師の達也とモデルのみのりがお互いを意識し合う状況のなか、達也は『ガールズアワード』への出演が決まったみのりに、自身が勤める美容室でヘッドスパをしてあげる。達也がみのりの頭皮に手をかけた瞬間、副音声が急に熱気を帯びだす。


(達也の手つきの滑らかさを見て思わず)
徳井「エッロッ!!」
山里「これはちょっと……Bじゃないですか」
徳井「Bですよ、これは」
YOU「Bですね~」
(みのりが「あー」と声を出し、達也が「痛いってこと?」と聞く。みのりは「気持ちいい」と答える)
徳井「“インドの前戯”ですよ、これ。『カーマ・スートラ』のやつです」


 “インドの前戯”。この比喩表現ともつかない架空の喩え表現は、徳井さんの優れた言語感覚を証明するものだろう。彼がときおり発する「しぐれとんなぁ!」という表現も、なんだかその言葉でしかその状況を言い表せないような気がしてくるほど、艶やかなセンスで満ちている。


YOUや山里亮太との相乗効果
 さすがはTVバラエティで活躍してきた男としか言いようがないが、徳井さんは他の出演者との相乗効果により、エンターテインメントをさらに高みに押し上げる天才だ。『テラハ』では、とりわけYOUさんと山ちゃんとの会話によって生まれるドライブ感が、ひとつの魅力になっている。


 スタジオパートの“お母さん”ことYOUの場合は、妄想癖の性格が徳井さんとバッチリと噛み合い、ときに想像だにしない世界へと私たちを誘ってくれる。そして山ちゃんとは、言葉のラリーとでも言えるような超ハイレベルのトークの末に、印象深いパワーワードを生み出す。


 たとえば、2016年より配信されたハワイ編『TERRACE HOUSE ALOHA STATE』の大志に付いた「ギルティ侍」という呼称や、前述した東京編で夏美の普段は隠れたもうひとつの側面を的確に言い表した呼び方「冬美」は、実は徳井さん発信で生まれているものだ。しかし、そうした場面の一連の会話の流れを聞いていると、YOUさんと山ちゃんとのトークの相乗効果があってこそ発された言葉でもあるのだとわかる。トークの熟練者たちが集まることで“普通のこと”が“おもしろいこと”に変わる。そうした瞬間を、私たち視聴者は何度も味わってきたのではないだろうか。


■“バランサー”としての立ち位置
 「ギルティ侍」が生まれたハワイ編のPART3-4。大志と同じく俳優を志している侑哉が、よく寝坊をして学校に行けていないという話題を聞いて、副音声の山ちゃんは「“起きられなかったらしょうがない”はダメよ」と指摘する。その言葉にハッとしたのか徳井さんは「2週連続遅刻したけどな俺……」と罪深そうにぽろっと言葉を漏らす。


 些細な場面ではあるけれど、このことからも徳井さんは、テラハメンバーの負の側面を見るときも、まずは自分の姿を鑑みて、自身のだらしなさを認めるなどしてから評価する性格だということがわかる。そうした人物が、毒舌的な立ち位置にいる山ちゃんの対局に置かれることによって保たれる『テラハ』のバランス。徳井さんが稀有な“バランサー”であったことは、やはり彼がいなくなったからこそ気づくことができる。暴走しすぎる山ちゃんの暴言や誰も拾うことができないYOUさんのアダルティな言葉たち。その行き場をなくした言葉たちに真の生命が与えられるとき、それは徳井さんが『テラハ』に帰還したということを強く印象づける喜びに満ちた瞬間になるのだろう。(文=原航平)