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“ぼっち大学生”の日常動画、なぜYouTubeでブレイク? パーカーくんの魅力に迫る

2020年03月17日 11:51  リアルサウンド

リアルサウンド

動画サムネイルより

 昨年から今年にかけて大物グループの解散や芸能人の多数参入など、大きな地殻変動を起こしているYouTuber業界。もはや素人の参入は難しいと目されている中、ここ数ヶ月の間に登録者数が3桁から30万人以上になった一般人のYouTubeチャンネルがある。それが「パーカーチャンネル(パーカー / 大学生の日常)」だ。


(参考:格闘家YouTuber朝倉未来、あおり運転で怒鳴り込んできた男を撃退「めちゃめちゃダサい」


 名前の通りパーカーがトレードマークの彼は、神戸の国立大学に通う学生で、“ぼっち系YouTuber”を名乗っている。“ぼっち系YouTuber”とは、グループ系YouTuberが全盛なためか、一人で活動しているYouTuberがそう名乗っていることが多いようだ。


 彼の動画の内容は、たとえば大学でのぼっち生活だったり(大変真面目に授業を受けている様子)、スターバックスで勉強したり、現在の住居であるワンルームで料理したり掃除をしたり、たまに高速バスや新幹線を使って旅行に行ったりと、いち学生の日常がアップされている。


 なぜそんな日常が注目されているのか? それは彼の独特のスピード感ある口調にある。神戸から東京行きの夜行バスで「安い値段で東京に行ってやろうという方々が集まっているわけですね 」と軽く毒づいたり、たかだかワンルームを掃除をする際に「まず床から片付けないと機動力が下がってしまう」と語ったりと、やっていることはVlog(※ブログのような動画、videoとblogからなる造語。モーニングルーティンなどの日常動画を指す)に入るのだろうが、ユーモアと知性のある語りがテンポよく繰り出される様子は、筆者のような中年としては、vlogというより往年のテキストサイト(※90年代後半~00年前後に流行した日記調のテキストがメインの個人サイト)の匂いを感じてしまう。


 昨年末に公開された「【疑問】大学ぼっちはテスト期間をどのように過ごしているのか【大学生の一日】」の再生数は160万(2020年3月現在)を超えており、他の動画も軒並み数十万再生されている。チャンネルを開設したのが昨年の6月、秋に1000人を突破したかと思えば、年末には10万人、そして現在は35万人にせまる勢いだ。コメント欄には同年代も多いが、それより上の世代からの“保護者目線”なコメントも目立っているのも特徴だ。


 YouTuberというと、派手な髪色で大騒ぎしているというイメージを持っている大人もまだまだ少なからず存在するが、黒髪でシンプルな服装(地味だが清潔感はあるのがポイント)で、仕送りを受けずに学費を稼ぐためにYouTubeチャンネルをやっているという苦学生な一面もあるためか、“大人も応援したくなる”という珍しいタイプのYouTuberかもしれない。


 この数字の伸び率からして、YouTuber事務所や企業からの声もかかっていると思われるが、動画をみる限りそういった誘いは全部断っているようだ。動画内の発言によるとYouTuberとして身を立てるのではなく、他の大学生がバイトをやっている感覚でYouTubeチャンネルをやっているそうで、Twitterでも「収入が増えても今の金銭感覚を保つことが美学」と語っており、そこがまた、大人たちの心を掴むのかもしれない。


 また、“ぼっち”には当然自虐的な意味も込められているが、“ぼっち”に悩んだりしつつも、それを楽しんでいる雰囲気が感じ取れることも、視聴者が共感、安心してみることができる理由のひとつだろう。


 過激な動画や辛いニュースが多い中、気が滅入っている人は、パーカーくんの滔々としたユーモアで息抜きをしてみてはいかがだろうか。


(藤谷千明)