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『スカーレット』武志の“日常”を体現する存在 真奈役の松田るかって何者?

2020年03月15日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『スカーレット』写真提供=NHK

 連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)で、川原武志(伊藤健太郎)が在籍する窯業研究所の事務員・石井真奈を演じているのが松田るかだ。第23週では、慢性骨髄性白血病を宣告された武志との距離が急速に縮まり、今後の関係が気になっている視聴者も多いだろう。


参考:『スカーレット』第139話では、照子(大島優子)や信作(林遣都)も適合検査を引き受ける


 フレッシュな顔ぶれが多く登場する朝ドラで、松田るかの名前を聞いてピンと来た人は、かなりの確率で特撮好きと思われる。『仮面ライダーエグゼイド』(テレビ朝日系、2016年10月~)では、ヒロインの仮野明日那/ポッピーピポパポ/仮面ライダーポッピーを演じ、日曜の朝にその存在を広く知らしめた。


 1995年生まれでダンスが特技の松田は、アクションにも対応できる幅の広さを持ち合わせた女優だ。『エグゼイド』のポッピーはゲームの世界から生まれたバグスターで、現実世界では看護師の明日那という人格を持つ二面性のあるキャラクター。また、ドラマ『賭ケグルイ』(MBS/TBS)シリーズで百花王学園の生徒会役員・皇伊月、『だから私は推しました』(NHK総合)で地下アイドル「サニーサイドアップ」リーダーの花梨を演じるなど、多彩な持ち味を発揮してきた。


 『スカーレット』で真奈の登場は第19週から。京都の大学を卒業し、信楽窯業研究所の研究生になった武志との初対面は、あわてて開いたドアをぶつけてしまうという王道感満載のシーン。当初から真奈にはコメディリリーフ的な役割も期待されていたと思われる。真奈は武志の親友・宝田学(大江晋平)の先輩という設定で、真奈が武志に好意を抱いていることは第127話で明らかになる。次世代展の作品づくりで居残り作業をする武志に、真奈は差し入れをする。


 「うまいこといっているんですか」と尋ねる真奈に、武志は親友の永山大輔(七瀬公)とうまくいっているのかと聞き返すが、逆に真奈を怒らせてしまう。「川原くんには言いません。さいなら!」と言い捨てて、もう一度「頑張ってください」と言い直す真奈のツンデレな姿に、意中の人を前にして隠しきれない本心があらわれていた。


 ストレートに思いを表現する真奈とは反対に、武志はおそろしいほどに鈍感。そんな2人による駆け引きにならないやり取りも見ていてほほえましかった。両親に似たのか、なかなか進展しない関係に変化が見られたのは、皮肉にも武志の病気がきっかけだった。


 病気のことを知らない真奈は、意を決して武志の部屋でたこ焼きパーティをすることを提案。自称「たこ焼き日本一」の真奈による「タコがおぼれてる」衝撃的なビジュアルを目にして、一瞬、武志の頭からは病気のことが吹き飛んだに違いない。次世代展に落選してやけ酒を食らう武志を介抱した際には、ドキリとする場面もあったが、病気の事実を共有することでさらに思いは深まった。


 真奈は武志にとっての「日常」を体現する存在だ。第138話で、武志は「今日が君の1日なら、君といつもと変わらない1日を過ごすだろう」と本に書いた。ストレートに思いを伝える真奈は、ありふれた日々を積み重ねた先にある武志の「未来」でもある。マスクをしたまま「逢いたかった」と筆談で伝え、手を握る武志と真奈。2人の間に言葉以上の思いが交わされていた。


 松田は「真奈は、病気の人を好きになったわけではなく、好きな人がたまたま病気になっただけ」と公式サイトのインタビューで答えている。まっすぐに自分を見つめる真奈の存在は、限りある時間と向き合いながら、自分の色を探求する武志にとって大きな支えになるだろう。松田自身にとっても、今作はアクションやダンスを封印して臨む女優としての勝負作。最終盤の『スカーレット』でどんな色を見せてくれるだろうか。


■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。