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ジュンペロ、SUGIZO、sleepyhead 武瑠……ジャンルを問わないアーティストとのコラボ 新たな相互作用の起点に

2020年03月14日 10:01  リアルサウンド

リアルサウンド

ジュンペロ『20/700000000』

 X JAPANから続くヴィジュアル系シーンでは、しばしばバンドのメンバーがソロでも活動する。その活動には、シーン内外に関係なく、本人に共鳴した別のアーティストが参加することが多い。


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 直近の例でいえば、DOG in Theパラレルワールドオーケストラ(DOG inThePWO)の準々(Gt)のソロプロジェクト・ジュンペロの『20/700000000』(2020年)がわかりやすいだろう。前作『13/700000000』(2019年)でも、DARRELLの藍(Vo/Gt)、Develop One’s Facultiesのyuya(Gt/Vo)、BAROQUEの圭(Gt)、猫曼珠のCazqui(Gt)、VersaillesのMASASHI(Ba)というシーン内の実力者を迎えていたジュンペロ。


 本作では、colormal(イエナガ、Gt)、八十八ヶ所巡礼のKatzuya Shimizu(Gt)とマーガレット廣井(Vo/Ba)、JYOCHOのだいじろー(Gt)、skillkillsのGuruConnect(HIRONAKASUGURU、Ba)、それでも世界が続くなら・菅澤智史(Gt)と、シーン外の名手を迎えている。面識のあるなしにかかわらず彼が尊敬しているアーティストにオファーをしたということもあって、いずれの曲も参加者の特徴が活かされている。特にだいじろー参加の「浄化俟ち~渋谷編~」と菅澤参加の「虚無る~浅草編~」は、エレクトロにアコースティックギターやシューゲイズギターを組み合わせた曲で、彼の特徴であるファニーなポップさとは異なるアプローチを聴かせている。


 こうした人間関係を繋いでいくもののひとつに、アーティストの実力と才能がある。たとえば、SUGIZOが、BiSHのアイナ・ジ・エンド(以下アイナ)をカバーボーカルとして迎えて発表した「光の涯」(2019年)だ。


 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』第四弾エンディングテーマとして発表されたこの曲は、もともと『ONENESS M』(2018年)に収録された作品だ。原曲では、彼自身が「僕ら界隈のシーンの中での僕が最も尊敬する先輩」と語るMORRIEが作詞・ボーカルを手掛けており、美麗なトラックとMORRIEの深淵な歌詞と深く優しい歌声が特徴となっている。この曲のボーカルカバーを、面識のなかったアイナに依頼した理由は、彼女のソロ曲を聴いて「ポテンシャルは無限大だなと思った」からだという(引用:BARKS、以下同記事より引用)。その結果「存在感が予想を超え」たと絶賛。アイナ自身もこのコラボレーションで「新しいものと、自分の中に眠っていたもの、出したことのない感じの声が勝手に出た」と、新しい体験をしたようだ。


 思えばSUGIZOは1stアルバム『TRUTH?』(1997年)収録の「KANON」で、坂本龍一に加えて、1996年にデビューしたトリップホップユニット・Lambのルー・ローズをボーカルに迎えており、実力あるアーティストを自身の作品に迎えることに積極的だった。


 このような交流は音源制作に限った話ではない。たとえばBAROQUEの圭(Gt)のソロ作品『4 deus.』(2019年)。彼の微細な表現が活きたギターエレクトロニカの大作である本作は、彼が一人で作りあげたものだ。一方で、ライブでの彼は、BAROQUEの怜(Vo)やBAROQUEのサポートを務めるTHE NOVEMBERSの高松浩史(Ba)を始め、関わりの深い数々のアーティストと共演している。また、BAROQUEのアートワークを手掛け、彼らのライブでもパフォーマンスを披露した、デコレーションフラワーアーティスト・相壁琢人(ahi.代表)の個展『Adam et Eve-Adam-』への出演は、彼の才能が音楽以外のアートフォームにも共鳴した例といえる。


 音楽以外のアートフォームがきっかけとなったコラボレーションの例として、sleepyheadの2019年作「endroll」(『endroll』収録)も挙げられる。この曲は、イメージと歌詞を武瑠が、コードとメロディをTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也(Vo/Gt)が、リズムをプロデューサー/DJのIttiが手掛けた共作で(参照:ナタリー)、シューゲイズなギターとダークなドラムンベースが融合した、彼の世界観を新しい側面から表現した曲になっている。山中はsleepyhead以前から武瑠との交流が深く、今回の作品参加を「損得勘定ではない」と発言していたが(引用:ナタリー)、二人の出会いのきっかけは、武瑠が手掛けたあるファッションブランドの映像だったようだ。


 このように、それぞれのアーティストがソロ活動でシーン内外のアーティストや文化と相互に作用しながら、さまざまな観点で表現を拡張し、磨き上げている。彼らが再度バンドに立ち返ったとき、その経験が混ざり、ぶつかり合って、刺激に満ちた作品が生まれる。そして、その作品が、また新しい相互作用の起点となっていくのだ。(エド)