トップへ

嵐 二宮和也の歌声に宿るアーティストに対するリスペクト Mrs. GREEN APPLE「Attitude」カバーを聴いて

2020年03月14日 09:51  リアルサウンド

リアルサウンド

 嵐・二宮和也がパーソナリティを務めるラジオ番組『BAY STORM』(bayfm)。3月8日のオンエアは、素晴らしい音楽を生み出したアーティストを心から尊敬する二宮のまっすぐな人柄が溢れ出た放送回だった。


(関連:嵐・二宮和也、自作ではないソロ曲で見せた新境地 グループのライブ重視と俳優業が背景に?


 同オンエア終盤、普段であれば嵐の楽曲を流す場面で、この日は特別に“ある楽曲”をカバー収録してきたことを明かした二宮。その出来栄えを前情報なしでまずはリスナーに体験してほしかったのだろう。ここでは「本当に大変だった」とだけ告げて、カバー音源をさっそく披露。ピアノ伴奏の放つ爽やかなポップネスと、音楽を通してたくさんの人を救おうとする、歌詞に込められた力強さのコントラストが印象的な楽曲が届けられた。二宮が今回カバーした、5人組ロックバンド・Mrs. GREEN APPLEが歌う「Attitude」である。


 Mrs. GREEN APPLEについて少し解説しておこう。同バンドでは、ギターボーカルを務める大森元貴がメジャーデビューを目指す上で、自身の明確なバンド像にマッチするメンバーを集めたという。いわば、大森自身や彼の生み出す楽曲はバンドの“心臓”であり、その意志を音楽によって明確にするのが、メンバーの役割なのだろう。また、今回カバーされた「Attitude」は、彼らが昨年10月に発表したアルバム表題曲。そのラストを飾る〈書き綴られた歌詞は/私のそう、遺言〉などのフレーズが象徴するように、大森を筆頭とする彼らがその活動に対して、まさに“命を懸けている”ことを強く示す楽曲と評しても過言ではない。


 そんな彼らの作風は、前述したようなポップネスを放つ明るいメロディの背後に、ポジティブながらもどこか切ない歌詞を隠し持っている。「Attitude」もその例に漏れず、ドラムマシンやボーカルエフェクトを駆使した、アレンジの技巧が映えるトラックが印象的だ。また、二宮も苦戦したという大森のハイトーンボイスも相まり、カバー曲として簡単に真似できる代物ではない。


 あわせて、バンドの所信表明をする特別な一曲だからこそ、彼らのファンの間でも少なからず賛否両論となっていたのは仕方のないことだろう。ただ、ひとつだけ確信できたのは、二宮がカバーした際の細かな歌い回しや、オンエア内での発言には、Mrs. GREEN APPLEに向けた彼のリスペクトの感情が大いに存在していたことだ。


 カバー音源が披露されて第一に「二宮和也はこんな歌声も出せるのか」という驚きがあった。二宮といえばやはり、嵐で全員曲を歌っているイメージが色濃い。だからこそ、今回のように一人のシンガーとしてマイクを握った際の歌声は、普段とはがらっと印象を変えた弾むような軽やかさがあった。また、彼のリスペクト精神は、カバー時の繊細な歌い回しの機微からも伝わってくる。細かな言葉の発音などを挙げればキリがないのだが、例えば、曲中でも特にリズム感を要求される〈誰かとね 愛し愛されて死にたいの〉の部分は、原曲にアレンジを加えずにそのまま再現していた。


 しかしながら、ただ原曲のモノマネをするだけの二宮ではない。大森ら本人に対して、時には自身の解釈やエッセンスを織り交ぜることも、リスペクト精神が表れた部分といえる。大サビを迎える頃には、楽曲の雰囲気を損なわせない塩梅で、自分なりに抑揚をつけるアレンジを披露。楽曲が抱く“誰かを音楽で救おうとする”意志を、二宮なりの勇敢さをもって歌い上げたのだった。


 また、サビの〈A.t.Ti.Tude/私のA.t.Ti.Tude〉のフレーズには、最後の〈de〉が4拍続くシーンがある。ここでも一音一音をブレることなく、それぞれの音を正確にぶつけており、シンガーとしての歌唱力の磐石ぶりを感じられた。以上を踏まえるに、二宮による今回のカバーは“お遊び”のようなものでなく、Mrs. GREEN APPLEの音楽に対して真剣に向き合った機会だったのではないだろうか。


 その姿勢は、カバー音源披露後のコメントにも共通していた。オンエア中、二宮は「このアルバム、すごく良いんで聴いてください」「本当にすごい好きで、ずっと聴いてて」と、彼らの作品を賞賛し、カバーが叶ったことに感謝を示すばかり。これまでに両者の面識はないようだったが、オンエア後には大森がバンドの公式Twitterを通じて反応。「とてもとても光栄です。素敵なカバー、ありがとうございました!」と、二宮の想いが自身にまで届いたことを伝えていた(参考:https://twitter.com/AORINGOHUZIN/status/1236649714457567232)。


 ここまで振り返った通り、愛聴するアーティストや楽曲に対して真摯に臨みながら、自身もそのファンの一人である気持ちをオープンに発信している二宮。今回カバーした「Attitude」も、Mrs. GREEN APPLEへの純粋な愛情の延長線上にあった行動なのだろう。嵐とMrs. GREEN APPLEの双方のファンが交流を深める架け橋となったことも、彼らが築いた確かな功績といえるのではないだろうか。


 今回は割愛したが、同ラジオでたびたび開催される企画「ニノフェス」では、二宮がお気に入りのアーティストを紹介しながら、彼らの楽曲に対して共感し、時には「一番最初に見つけたのは自分」と冗談交じりに“古参”ぶりをアピールする場面も見られる。二宮が育む、アーティストへの尊敬と感謝の精神が、今後もさまざまなアーティスト同士を繋ぎ合わせ、その歌を必要としている人に〈どうにか届くように〉と願うばかりだ。(一条皓太)