トップへ

新型コロナウイルスの感染マップ装うマルウェア出現 フェイクニュースとの戦いは世界規模に拡大

2020年03月14日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

BUSINESS INSIDER「Hackers are using these fake coronavirus maps to give people malware」より

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、リアル空間だけではなくインターネット空間でも脅威が高まっている。こうしたインターネット空間における脅威は、「よく見える」ことによって人々に感染する性質を持っているようだ。


(参考:新型コロナウイルスの影響でイタリア全土のApple Store緊急閉店 広がるテック業界への打撃


・関連ドメインの50%は危険?
 『BUSINESS INSIDER』は13日、新型コロナウイルスの感染拡大マップを装ったマルウェアが発見されたことを報じた。現在、感染拡大マップは急速に注目を集めており、アメリカでは世界最高峰の医学部を擁するジョンズ・ホプキンズ大学や大手メディア『The News York Times』がマップを提供している(トップ画像参照)。今回発見されたマルウェアは、こうした信頼に足る感染拡大マップを悪用したものだ。


 発見されたマルウェアは、まずEメールあるいはSNSとしてインターネットユーザの目にとまる。目にとまったEメールやSNSのなかには、新型コロナウイルスの感染拡大マップへのリンクが貼られている。そのリンクを開いてしまうと、ユーザのログイン情報や銀行口座番号等を盗み取るマルウェア「AZORult」が仕組まれたプログラムが実行されるのだ。


 テック系メディア『TweakTown』も、12日にこのマルウェアについて報じた記事を公開した。その記事は、セキュリティ会社Check Pointが実施した新型コロナウイルスに関連するマルウェアの調査結果を伝えている。その調査結果によれば、同ウイルスに関連するドメインの50%以上が悪意のあるマルウェアをPCにインストールするように設計されていることがわかったのだった。


・スタンフォード大学を騙るアドバイスも
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴って拡散しているのは、マルウェアだけではない。同ウイルスに関する誤った情報を伝えるフェイクニュースも、急速に広がっているのだ。テック系メディア『The Verge』は12日、こうしたフェイクニュースの一例を報じている。その偽りのニュースは、Google創業者であるセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジの母校としても知られるアメリカの名門大学スタンフォード大学の付属病院の重役からのアドバイスと称していた。


 その偽りのアドバイスによれば、「少なくとも15分毎に数回水を飲む」とウイルスを殺菌でき、また10秒間息を止めて「咳、不快感、こわばり、圧迫感等がなければ」ウイルスに感染していないことを確かめる、とのこと。これらのアドバイスは医学的根拠のない誤りである。(嘘の)アドバイスはさらに続き、新型コロナウイルスは「太陽に弱く」「26~27℃で殺菌できる」とも述べられているが、これも誤りである。


 『The Verge』の記事は、たとえ親しい友人や家族から新型コロナウイルスに関する情報を教えてもらったとしても、その情報が信頼できる情報源かどうかチェックすることが重要、と述べてフェイクニュースに対する注意を喚起している。


・イギリス国際開発省が支援
 フェイクニュースの拡散は、アメリカではなく世界規模の問題となりつつある。こうしたなか、イギリス政府において国際協力政策を担当するイギリス国際開発省は12日、フェイクニュースに対抗する活動に資金援助することを発表した。資金援助を受けるのは、エボラ出血熱が発生した時にフェイクニュース対抗運動を指揮した実績のある人道支援団体H2Hネットワークで、支援額は50万ポンド(約6,600万円)にのぼる。


 H2Hネットワークは、フェイクニュースに対抗するにあたり、世界各地のヘルスケア関連のインフルエンサーと連携する。そうしたインフルエンサーのひとりには、700万人以上のTwitterフォロワーを抱えるフィリピン在住YouTuberのBianca Gonzalez氏がいる。


 新型コロナウイルスに関するフェイクニュースは、先進国だけではなく発展途上国にも広がっている。例えば、ミャンマーでは枕元に刻んだタマネギを置いて眠るとウイルスがタマネギに吸収される、あるいはショウガジュースが新型コロナウイルス対策によい、といった誤情報が流れている。当然ながら、イギリスでもこうしたフェイクニュースが拡散しており、そんなニュースのなかには新型コロナウイルスは中国当局によって作られた生物兵器、という陰謀論も含まれる。


 新型コロナウイルスと人類の戦いにおいては、リアル空間における公衆衛生上の戦いとインターネット空間における情報戦という二正面作戦の遂行が求められている。このふたつの戦線には決定的な違いがある。ウイルスは見えないのに対して、マルウェアやフェイクニュースは目で確認できるのだ。それゆえ、新型コロナウイルスをめぐる情報戦に関しては各ネットユーザが十分に用心すれば、勝利することができるだろう。


(吉本幸記)