いきなり!ステーキ創業者の一瀬邦夫社長(ペッパーフードサービス)が3月12日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)に出演した。番組内では、すかいらーく創業者の横川竟(きわむ)氏も出演し、2人の経営観の違いがネット上で話題となった。
スタジオでは、2013年の創業から5年間好調だった「いきなり!ステーキ」が、なぜ2019年に赤字に急転落したのかをテーマに話し合われた。19年に一瀬社長が店舗の前に手書きの張り紙をして原価率の良さなどをアピールした件について、意見を求められた横川氏は
「僕個人の趣味で言うと、僕は書きません。商売というのはこれを商品で表現することです」
とバッサリ。ネット上では「横川さんが正論」などと称賛が集まった。一方、一瀬社長を冷ややかに見る人が目立ち、挙句には「公開処刑」と表現する人まで出る始末だ。(文:okei)
「お客様本位」の横川氏、「自分本位」の一瀬社長と見えてしまう
一瀬社長自身は低迷の原因を「出店を急ぎ過ぎた」と分析。「何が何でも達成しようとしたことが大きな反省です。お客様がいない所にも出店してしまった」と語る。これに、横川氏は
「一瀬さんは企業側の"したい思い"がたくさんあったため、どこかが欠落した」
と指摘。おそらく"日本一にしたい"という思いが強すぎて店をたくさん作ってしまったが「そうすると人材や良い立地が無くなる」と、企業が数字だけを目標に店舗数を増やすことの危険性を説いた。
しかし、一瀬社長は「僕は全然そうは思っていない」と反論。日本で一番のステーキ屋になろうと思ったわけではないし、従業員たちにも「『店舗数が一番になったとしても日本一なんて絶対言うなよ』と、ずっと戒めながらおごることなくやってきました」としている。
また、一瀬社長は「自分の食べたいものをお客さんに売る。お客様が喜んでくれるに違いない」という考えが根底にある」という。一方で、横川氏は「自分が好きなものと、お客様が求めているものが同じならそれでいい」として
「僕は同じだと思っていなかったので。自分のおいしいものが相手も美味しいとは限らないという前提で、相手の口に合わせた味と素材の組み合わせをした。基本はお客が求めているものを売らない限り売れないです」
と持論を語った。
両者とも「お客に喜んでもらいたい」という思いは同じだが、どうしても横川氏のほうが「お客様本位」で、一瀬社長が「自分本位」に聞こえてしまう。
他にも「いきなり!ステーキは意外と高い」という街の声に対し、一瀬社長は原価率から考えれば「決して高くない」と訴えたが、横川氏は
「肉以外の価値が少ないからと言っておきましょうか。要するに立って食べることに価値があるかと言うと、ない」
とこれまたバッサリ。言い方は穏やかだが、内容は厳しい。さらに「輸入関税は下がってきているのに、肉の値段は高くなってきている」と客が感じる矛盾と突くと、一瀬社長はたまりかねたように「それだけ言われちゃったら、見ている人は横川さんの方が権威があるから」と話に割込み、いきなり!ステーキの経営努力を語った。
「いきステがなぜ大失速したのか何となく分かって来た」という声も
横川氏の的確な指摘に反論する姿勢に、ネット上では「一瀬社長は助言を素直に聞けない自己中心的な人」という印象を受けた人が少なからずいたようだ。
「いきなりステーキが何故大失速したのか。このやり取りを見ただけで何となく分かって来た」
「自分の意見がすべて正しい、悪いのは自分以外というスタンス。評価は客観的に見ている自分以外ということを忘れたらこうなるんだろうな」
といった声が多数リツイートされている。
確かに、横川氏の言葉は外食産業のみならず、すべての商売の鉄則、法則が盛り込まれており、これを素直に聞けない人は先がないという印象が残った。とはいえ、番組は横川氏がメインのゲストだっただけに、全編横川劇場になっており、いきなり!ステーキが割を食った感はある。一瀬社長は「また誤解されるのでは」と心配していた。