2020年03月13日 10:11 弁護士ドットコム
新型コロナウイルスの感染予防対策として、傍聴席を減らす異例の措置をとる裁判所が増えている。傍聴制限をかけなくても、それぞれの裁判官が法廷内で「席の間隔を空けて座るように」と傍聴人に呼びかけるケースもある。
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最高裁では、傍聴人に対し間隔を1メートル程度空けて座わるよう指示。全国の裁判所に対しても、政府の専門家会議や世界保健機構(WHO)から示されている知見を参考に予防対策について情報提供をしているという。
一方で、傍聴席に制限が設けられていることを知らなかった傍聴人と職員の間でトラブルになった裁判所もあり、事前にホームページで知らせるなど、周知徹底も求められている。
弁護士ドットコムニュースの取材によると、最高裁が傍聴席を減らす措置をとったのは、3月6日から。裁判所が持つ唯一の図書館である最高裁判所図書館も3月5日から3月16日まで臨時休館している。
最高裁によると、全国の裁判所に対し、「当面は約1メートルの間隔を空けて着席するよう、傍聴席の利用方法を定めるといった措置や、傍聴券交付の際の感染拡大防止策を検討するといったことも考えられるところです」などと通知したという。
全国では、傍聴席を減らす措置をとる裁判所が増えており、東京高裁と東京地裁はそれぞれ、3月12日から傍聴席の間隔をあけるため席数を減らすとホームページで告知した。
全国で感染が拡大する中、3月12日現在、感染者数が全国最多で、緊急事態宣言が出されている北海道の札幌地裁では、「個々の裁判官の判断で、傍聴席を1席から2席空けるよう呼びかけています」と話す。
北海道に次いで感染者数が多い愛知県の名古屋地裁は3月12日から当面の間、管内の支部も含め、「おおむね1メートル程度空けて傍聴席に座っていただいています」という。名古屋高裁も同様の措置をとっている。
北海道、愛知県、東京都に次いで感染が確認されている大阪府の大阪地裁および大阪高裁も、3月12日から制限を始めた。「通常より傍聴席数が大幅に減少します。ご理解とご協力をお願いします」とサイトに掲示している。
事前に傍聴席に制限がかかることを知らなかった傍聴人が苦情を言うケースもある。前橋地裁では3月9日からこの措置を始めた。
実際にどれだけ制限があったのか、前橋地裁に確認したところ、6つある法廷で合計216席が57席にまで減っていた。事前の周知が徹底していなかったため、3月9日には傍聴席が60席から16席に減らされていた4号法廷で、傍聴希望者が入れず、裁判所の職員に苦情を述べる場面があったという。
裁判は憲法37条や82条により原則公開と定められている。刑事事件の被害者や遺族が優先的に傍聴席を確保できる制度もあるが、傍聴席の制限措置が長引けば、裁判の公開にも影響を与えそうだ。