2020年03月13日 07:11 リアルサウンド
感染症の世界的流行を意味する“パンデミック”を引き起こしたとWHOが認めた新型コロナウイルスの猛威は、テック業界に前例のない影響を及ぼしつつある。感染が拡大しているイタリアでは、Appleがついに大きな決断に踏み切った。Apple以外の大手テック系企業も、感染による打撃を被っている。
(参考:今秋、iPhone 12がバカ売れする? アナリストが“スーパーサイクル”を予想)
・再開時期は不明
Apple専門ニュースメディア『MacRumors』は11日、イタリア全土のApple Storeが閉店することを報じた。ひとつの国にあるApple Store全店舗が閉店するのは、中国に次いで2例目となる。閉店する理由は、当然ながら、イタリアにおける新型コロナウイルスの感染拡大を受けてのものだ。なお、イタリア国内のオンラインストアとオンラインサポート、そして電話によるサポートは継続される。
今回の閉店決定に先立って、Appleは感染の影響の大きかったイタリアの一部のApple Storeを閉店し、そのほかの店舗は営業時間を短縮していた。営業再開時期に関しては、今のところ、何の情報もない。イタリアに先立って全店閉店措置を行った中国では段階的に店舗営業を再開しているが、イタリアで同様の措置が取られるとしても、全店舗の営業が再開されるまでには時間がかかるだろう。
・影響はGoogleやSamsungにも
新型コロナウイルスの影響は、Appleだけではなく他の大手テック系企業にも広がっている。Forbesが11日に公開した記事では、そんな大手テック系企業への影響がまとめられている。
Appleに関しては、前述のイタリア全土のApple Store閉店のほかにiPhone 9(SE2)の発表が遅れるのではないか、という憶測がある。この憶測を報じた10日付のCult of Macの記事によると、同メディアが信頼するAppleにつながる情報筋は「主要な2つの製品の製造が遅延している」と語った。「2つの製品」の詳細は明らかではないものも、状況的にそのなかにiPhone 9(SE2)が含まれる可能性は高いだろう。また、3月下旬に開催が噂されていたApple製品の発表会も、同社の本社があるアメリカ・カリフォルニア州でも新型コロナウイルスの感染が広がっていることからキャンセルされるという見方が広がっている。
Googleは、毎年5月上旬に開催している開発者会議「Google I/O」の開催をキャンセルした。また、現在、Google Playストアで「新型コロナ」と検索しても関連アプリが表示されないようになっている。この措置は、新型コロナウイルスに関する誤った情報が拡散しないためのものと見られている。
感染が拡大している韓国を代表するテック系企業であるSamsungは、Galaxy Z Flip等の最新スマホを製造する同国内工場の労働者のなかから新型コロナウイルス感染の陽性反応が検出されたことを受けて、製造拠点を一時的にベトナムに移行させた。
・Apple Storeの運営方法も変更
新型コロナウイルスのApple Storeへの影響については、Apple専門ニュースメディア『appleinsider』も11日付の記事で報じている。その記事は、世界各地にある営業中のApple Storeのなかには運営方法の変更を指示された店舗があることを伝えている。
複数の情報筋が同メディアに話したところによると、AppleはApple Storeに対して「キャパシティを下回る」店舗営業を行うように指示したことにより、入店客数が制限されるようになったようなのだ。店舗内に滞在する訪問客が減れば、客どうしの距離が広がるので、感染拡大の予防につながると考えられる。また、店舗内に設置しているイスの数を半分に減らした店舗もあるという。店舗スタッフどうしの距離を1メートル以上に保つところもあるようだ。
もっとも、以上のような店舗運営方法の変更は、店舗のある場所やサイズ、そして訪問客数によって異なっている。それゆえ、日本国内の各Apple Storeにどのような指示が出されているか、さらには実際にどのような運営方法の変更があるのかについては定かではない。
新型コロナウイルスが世界規模で感染拡大するなか、テック業界への影響はさらに広がると言わざるを得ない状況となっている。こうした影響により、5G実装の世界的な遅延という事態が現実味を帯びてきたのではないだろうか。
(吉本幸記)