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『PS5』の発売にも影響? ゲーム業界に広がる新型コロナ流行の余波

2020年03月11日 12:22  リアルサウンド

リアルサウンド

中国のApp Storeから削除されたゲーム『Plague Inc.』

 新型コロナウイルスの話題で持ちきりの昨今。世界ではまだ流行途上ながら経済への影響が出始め、懸念が大きく広がっている。それはゲーム業界も同じこと。今回はゲーム業界で広がる新型コロナウイルスの影響をまとめた。


(参考:Apple中国工場、新型コロナウイルスの影響で操業停止


・Nintendo Switchの生産と出荷に遅れ
 日本のゲームフリークに馴染み深いところでは、任天堂が販売するゲームハード『Nintendo Switch』の本体およびその周辺機器で、生産と出荷に遅れが生じた。日本国内市場向けの製造拠点は中国にある。現地で新型コロナウイルスの被害が広まり、製造機能が麻痺しているとのことだ。


 この遅れにより任天堂は、『Nintendo Switch あつまれ どうぶつの森』セットの予約開始日を2020年2月8日から延期すると発表。3月発売の注目タイトルに思わぬ影響が及ぶこととなった。一旦は未定となった同セットの予約開始日だが、その後、3月7日への再決定が発表されている。任天堂ではマイニンテンドーストアにおける予約販売を中止し、全国販売店への出荷を優先するという。


 こうした遅延の問題は、Nintendo Switchのケースだけにとどまらない。コナミデジタルエンタテインメントから3月19日に発売予定の『PCエンジン mini』『TurboGrafx-16 mini』『PC Engine Core Grafx mini』本体およびその周辺機器でも、同様の理由から生産・出荷遅延が発生している。同社によると、3月6日以降に予約したユーザーへの発送が3月20日以降になるという。詳細は後日改めて告知するとのことなので、状況を注視したい。


 このように新型コロナウイルスの流行は、ゲームハードの生産・出荷に多大な影響を与えている。今後収束に時間がかかるようであれば、2020年末発売予定『PlayStation 5』『Xbox Series X』の流通にも支障をきたしかねない状況だ。


・ソニーは『PAX East』『GDC 2020』への参加をキャンセル
 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は、新型コロナウイルスへの懸念を理由にアメリカの大規模ゲームイベント『PAX East』への参加をキャンセルした。同イベントには、『FINAL FANTASY VII REMAKE』や『The Last of Us Part II』など、複数の注目タイトルがプレアブル出展され、デモンストレーションを披露する予定だったが、実質的に延期となった格好だ。


 また、同じくアメリカで開催のゲーム開発者会議『GDC 2020』では、SIE、コジマプロダクション、エレクトロニック・アーツ、Epic Games、マイクロソフトなど、多くのゲーム関連企業が参加キャンセルを表明。不測の事態にイベントそのものの延期が決定した。新たな開催日は2020年夏を予定しているが、その頃に沈静化しているかは不透明と言わざるを得ない。


 そのほか、eスポーツイベントでも中止が相次ぐ。個々のプレイヤーに及ぶ影響はまだ限定的だが、市場全体では確実にコロナ流行の余波が広がる現状となっている。


・風評的に被害を受けたタイトルも
 なかには風評的に被害を被ったケースもある。


 Ndemic Creationsが開発・販売する『Plague Inc.』は、プレイヤー自らが伝染病ウイルスとなり、人類の滅亡を目指すシミュレーションタイトルだ。同タイトルは、新型コロナウイルスの流行にともなって、1月21日に中国、1月23日にアメリカでiOSアプリダウンロード数1位を獲得。一躍話題のゲームとなった。


 その一方で、“不謹慎”というバッシングが顕在化。ゲーム内の感染対策が混乱を招くなどの理由により、中国のApp Storeから同タイトルが削除される事態となっている。こうした流れを受けてNdemic Creationsは、新型コロナウイルスの感染対策をおこなううえでゲームを参考にしないように、という異例の声明を発表。マーケットを失うだけでなく、対応にも追われる結果となってしまった。


 本来であれば、外出控えの流れから盛り上がりを見せるはずのゲーム市場。バッドニュースは少なくないが、プレイヤーが一丸となってマーケットを盛り上げていきたいところだ。


(結木千尋)