ヤフー知恵袋に2月末、妻から不妊治療のために「正社員を辞めてパートで働いてもいいか相談された」という夫の投稿がありました。夫は、子どもが欲しいので不妊治療には賛成しながらも、妻が今の仕事を辞めるのは「大反対」だそうです。
理由は、仕事を辞めても子どもが産まれるとは限らないことや、子どもがいない今でさえ夫の収入だけでは赤字の生活を送っていることなど。妻の収入が一時的に減っても、再就職することで現在と同じ年収になればいいが、
「一度辞めたら同じ条件での再就職は無理だと思います」
と綴っています。仕舞いには、妻に対して「仕事を辞めたいのは楽をしたいだけなのでは?」と疑い出し、妻の希望をどう思うかと問いかけました。(文:篠原みつき)
「不妊治療は会社を辞めないと難しい」という指摘も
投稿者の思い描く生活は、あくまでも"妻も正社員の収入"が前提のようです。投稿者は40代前半で年収が650万円、妻は30代前半で年収500万円とのことでした。
さらに「子どもの世話だけをするのとお金を稼ぐのとどちらが大変か。それはお金を稼ぐことです」とも書いており、投稿者の「子どもよりお金が大事な人」という印象はぬぐえません。
この相談の回答欄には「今の時点で赤字なのが最大の問題」などと夫の金銭感覚を含めた批判が相次ぎました。また、中には
「妻に対する思いやりも不妊治療に対する理解もなさそうだし、わざわざ治療してまで子供持つ必要ないんじゃないかな。(中略)奥さんにはもっといい人見つけてもらったら?」
と不妊治療どころか、離婚を薦める声も。「仮に妊娠出産したとして、ツワリは甘え。産後に里帰りはダメ。とか言い出しそう」とモラハラを予測する人もいました。
さらに、他の回答者からは「不妊治療は会社を辞めないと難しい」「精神的、肉体的にキツイ思いをするのは女の方」という指摘もありました。比較的初期は仕事をしながらでも通院可能ですが、段階が進めば「週3回病院」「受精卵を体内に戻し安静にするのに半日必要」などもあります。
女性の身体の状態を見ながらの治療は、必ずしも予定通りにはいくとは限りません。仕事を頻繁に休めば、職場に気を遣って、かえってストレスがたまることも考えられます。
どちらにせよ、不妊治療には2人の協力が不可欠です。もし仕事を続けながら妊活や子育てをするなら、夫の家事・育児への協力は必要になります。回答欄には、それを分かっているのかという疑問も多数挙がっていました。
働きながら不妊治療、経験者の約96%が「両立は難しい」と回答
一方で「辞めないほうがいい」という意見もあります。「不妊治療にもお金がかかる」「子どもが大学に行くころには60~50代になっている、いまのうちにお金を貯めておいたほうがいい」という助言です。「1か月は様子を見ては?」というアドバイスもありました。
確かに、再就職では年収が下がったり、出産後は非正規雇用になる女性が多いのも事実です。今の時代、正社員を続けたほうがいいという考え方も理解できます。
2017年にNPO法人Fineが実施した仕事と不妊治療に関する調査によると、働きながら不妊治療をしたことのある人の95.6%が「両立は難しい」と回答しています。うち、働き方を変えた人は約40%、「退職」を選んだ人は半数にのぼっていました。
厚生労働省は、企業に不妊治療をしながら働き続けられる環境整備を求めており、社会的にも理解が進むことが理想です。何より、パートナーである夫には「不妊治療は楽をしたいための方便」などと思ってほしくはないものです。