一向に収束時期が読めない新型コロナウイルスの感染拡大は、経済にも大きな影響を及ぼしている。倒産する企業も出てきており、今後も経営が立ち行かなくなる企業が相次ぎそうだ。
東京商工リサーチは3月9日、2月分の全国企業倒産状況を発表し、倒産した全国651件のうち1件が「新型コロナウイルス関連倒産」とした。
倒産したのは、感染者が相次ぐ北海道の「北海道三富屋」。コロッケの製造販売を手掛け、地元のテレビ番組で紹介されるほどだった。だが今年、札幌市内で開催されたイベントに出店すると、新型コロナウイルスの影響で来場者が伸び悩んだことから集客に苦慮、資金繰りが限界に達した。負債総額は約7446万円。
香港デモからの新型コロナで京都の着物レンタル会社が倒産
同社や帝国データバンクなどによると、3月に入ってからも新型コロナウイルス関連の倒産は発生している。
西日本初の倒産となった兵庫県神戸市の「ルミナスクルーズ」は、レストランクルーズ船を運営。2018年以降に立て続けに発生した自然災害による運航中止が相次いでおり、新型コロナウイルスによる多数のキャンセル発生が追い打ちをかけた。負債総額は約12憶4300万円。
さらに、京都市の「京洛和蒼」が続く。近年、外国人観光客らを対象に市内で着物レンタル事業を展開していたが、19年の香港政府デモ、今年の新型コロナウイルスの感染拡大で、インバウンドが急減し、事業継続が困難になった。負債総額は推定1憶5000万円となっている。
倒産以外にも、飲食チェーンが中国からの撤退を決定。北海道のバス会社は、従業員10人を2月末付けで解雇し、営業停止を決めた。一部報道によると、同業者の中には従業員約25人中22~23人を解雇した企業もあったという。
航空業界も震撼、アナリスト「アジアは特にぜい弱」と指摘
海外に目を向けると、ヨーロッパ最大級の地域航空会社、イギリスのフライビーは3月5日に破産申請。新型コロナウイルスによる渡航自粛などの影響で、航空需要が減少していることが理由だという。航空アナリストは英BBCの取材に
「アジアの地域航空会社は、新型ウイルスの発生源となった中国の旅客に大きく依存しているだけに、特にぜい弱だ」
などと指摘している。
政府は2月、新型コロナウイルスの影響を受ける企業に対し、5000億円規模の資金繰り支援や雇用調整助成金の特例措置を打ち出したほか、金融機関に返済猶予などの条件変更対応を求める支援方針も表明した。
現時点では収束の目途も立たず、影響もはかり知れない新型コロナウイルス。影響が長引けば観光業だけでなくあらゆる業種に甚大な影響が出てくると思われるが、帝国データバンクはこうした政府の支援方針に
「過去のリーマン・ショックや震災などの危機発生時には、強力な資金繰り支援が倒産抑制に寄与してきたことからも、今後の抑制効果が期待される」
と一定の評価を示している。同社によると、年度ベースでの累計倒産件数は2月までに7736件で、前年同期比4.5%増。2019年度の倒産件数は前年度の2.8%減から一転、2年ぶりの前年度比プラスが見込まれるという。