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Facebookが仮想通貨Libra計画を方向転換、デジタル通貨を提供へ

2020年03月09日 07:31  リアルサウンド

リアルサウンド

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 Facebookが、独自の仮想通貨を発行するという当初のLibra構想を大きく方向転換し、既存の通貨に基づいたデジタル通貨を提供する準備を進めていることが分かった。独自のグローバルな金融システムを構築するという野心的な計画だったが、各国規制当局が、軒並み反対の姿勢を示していた。


(参考:米国議会がFacebookの仮想通貨Libraに危機感 「我々の信頼に値しない」


 ユーザーがお金を受け取り出来るデジタルウォレットCalibraの計画は、引き続き進めるが、ローンチまで数カ月の遅れが出るという。3月3日に『The Information』が報じた(参考:https://www.theinformation.com/articles/facebook-scales-back-libra-plans-bowing-to-regulators)。


・撤回ではなくむしろ拡大? 万人に金融サービスを提供
 Facebookは、銀行口座を持たない17億人の人々が単一の国際通貨を、簡単に世界中に低コストで送金できる金融サービスとして、2019年6月にLibra計画を発表した。しかし、ここにきて米ドル、ユーロ、日本円といった中央銀行発行の通貨に裏付けられたステーブルコインに落ち着くことになった。こうなるとLibraは、PayPalなどフィンテック系の既存の決済システムと大きな違いがなくなるかもしれない。


 一見して事業規模の縮小のようだが、この件に詳しい人物によると統一のグローバルコインの夢は死んでいないという。新たな計画は、元のビジョンの撤回ではなく、むしろ拡大する可能性があるという証言を『Bloomberg』は伝えている(参考:https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-03-03/facebook-weighs-libra-revamp-to-win-over-reluctant-regulators)。


 Libra Associationのポリシー・コミュニケーション責任者であるダンテ・ディスパルテ氏は「Libraは、規制に準拠したグローバル決済ネットワークを構築する目標を変更していない」と述べる。


 Libra Associationは、仮想通貨の開発と、そのブロックチェーンネットワーク管理のためにスイスに設立された非営利団体で、当初Facebookを含む28社が参加した。最近、VisaやMastercard等が離脱したが、ShopifやTagomiが新たに加わっている。


 『The Verge』は、Libraに当局の厳しい視線が向けられるのをある程度予想し、Facebook一社ではなく、Libra Associationという形をとったと分析する(参考:https://www.theverge.com/2020/3/3/21163658/facebook-libra-cryptocurrency-token-ditching-plans-calibra-wallet-delay)。


 しかし、Facebookは個人データ保護において、度重なる失態を演じ、米国の議員からも金融ネットワークを管理する信頼に値しないと反発されている。他にもマネーロンダリングやテロ資金への悪用も課題になっている。


 自国通貨の主権を損なう可能性があると懸念する中央銀行もあり、Libraに対抗してか、欧州中央銀行やイングランド銀行等が独自の仮想通貨の研究も進めている。


・Calibraが収益化の秘密兵器
 Facebookのデヴィッド・マーカス氏は、Libraネットワークが中央銀行の事業を妨げることはないと強調している。


 Libra Associationの当初の予定では、2020年にLibraを発行する予定だった。技術的なテストは既に行われいるが、規制に関する課題により、足止めされていた。


 Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏は、Libraは収益のためではないとするが、Calibraはレンディングといった銀行のようなサービスも行う計画で、『The Verge』はCalibraが収益化の秘密兵器だとしている。


 この件の根底にあるのは、一企業が世界的な通貨を支配することへの行政側の恐怖心だろう。一度は恭順の姿勢をみせたFacebookだが、デジタル通貨で実績を積み、将来的には各国の規制当局との調整をクリアして、仮想通貨Libraを発行するという野心を抱いているのかもしれない。


(Nagata Tombo)