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Apple Storeの交換用iPhoneが不足? 新型コロナの影響受けるも市場の業績予測は強気

2020年03月06日 07:02  リアルサウンド

リアルサウンド

Apple公式サイト「お近くのApple Store」より

 新型コロナウイルスの影響で業績を下方修正したことが記憶に新しいAppleだが、その影響はさらにiPhoneユーザに直接的なかたちで及びそうだ。一方で、市場関係者による同社の長期的な業績予測は、むしろ強気なものだ。


(参考:Appleが最大550億円支払い和解ーーiPhoneの“意図的な減速”巡る集団訴訟、決着の動き


・iPhoneの貸し出しで対応
 ブルームバーグは5日、修理時に交換するためのiPhoneが不足していることを報じた。この報道の情報源となったあるApple Storeの従業員によると、損傷の激しいiPhoneと交換するための端末が2~4週間ほど供給されなくなるという。具体的にどのモデルの交換用iPhoneが不足するのかまでは、明らかになっていない。


 iPhoneが故障した場合、ユーザはApple StoreかApple正規サービスプロバイダに端末を持ち込むと修理対応を受けることができる。画面のひび割れやバッテリーの交換のような部品の交換で修理が完了する場合は、故障部品を交換してもらう。さらにAppleCare+に加入していれば、エクスプレス交換サービスを受けることができる。このサービスを活用すると、新品または新品同様のiPhoneを宅配便で届けてもらい、使用中の端末と交換することができる。また、AppleCare+盗難・紛失プランに加入していれば、iPhoneが盗まれたり紛失したりした場合でも新しいiPhoneと交換できる。


 以上のような新品のiPhoneとの交換が必要になった場合に関して、Apple Storeに常駐する同社製品に詳しいGenius(ジーニアス)スタッフには対応をアドバイスしたメモが渡されたという。そのメモには、交換が必要なユーザには交換用端末を郵送し、交換用端末が届かないあいだは貸し出し用iPhoneを提供できる、と書かれていた。


 ブルームバーグの報道は、Appleからの公式発表にもとづいているわけではない。それゆえ、実際にGeniusスタッフが受け取ったメモのような対応を実行するかどうかは定かではない。


・今月中に製造能力回復か?
 ところで、Appleの業績や営業活動に影響を与えている中国のiPhone組み立て工場の現状はどのようになっているのか。この点に関して、大手メディア『FOX NEWS』は4日に近況を伝える記事を公開した。iPhoneの組み立てを受注している台湾企業FoxconnのCEOであるYoung-Way Liu氏は、新型コロナウイルスの流行が悪化するようなことがなければ、今月中には通常の製造能力に回復すると予想している、と3日に発言した。


 周知の通り、中国にあるFoxconnの工場は新型コロナウイルスの影響により操業が滞っている。同社は製造能力を回復させるべく努力しており、深センにある主要な工場の従業員に対して750ドル(約80,000円)以上の現金ボーナスを支給した。また、中国で著名な疫学者であるZhong Nanshan博士を招聘し、工場再開に関して指導を受けた、とのこと。中国国家衛生委員会で指導的な顧問でもある同博士が、民間企業を指導するのは極めて異例のようだ。


 Foxconnは中国工場の操業完全再開に向けて努力する一方で、生産拠点を中国から分散させることを検討しているようだ。Liu氏は、トランプ大統領が再選された場合、中国から生産拠点を移転する可能性が高い、ともコメントしている。移転先としては東南アジアに注目している、とも同氏は語った。


・揺るがぬApple神話
 新型コロナウイルス流行収束の兆しがまだ見えないなか、市場関係者はAppleをどのように評価しているのだろうか。こうした疑問に関して、Appleニュース専門メディア『9to5Mac』は3日にアナリストのコメントを報じている。


 投資会社WedbushのアナリストDan Ives氏は、Appleを強気に評価している。同氏の評価を裏付けるように、同社の株価は2日には9.3%上昇した。同氏をはじめとした市場関係者が強気に評価するのは、今年後半にリリースされると予想されるiPhone 12(仮称)が大規模な買い替え需要を生み出すと考えているからだ。


 2020年は、日本を含む世界各国が5G通信網の実装に向けて動き出した言わば「5G元年」である。そうした5Gの普及のカギを握るとされるのが、5G対応スマホである。こうしたなか、4機種展開となると見られるiPhone 12は全機種5G対応すると予想されている。それゆえ、5G対応端末への買い替えとしてiPhone 12シリーズが多くのユーザに選ばれる、というのが市場関係者の見立てなのだ。同シリーズへの買い替え需要に関して、Ives氏は「需要のパーフェクト・ストーム(完璧な嵐)」が生じると表現している。


 無論、市場関係者が新型コロナウイルスのAppleに及ぼす影響を忘れているわけではない。しかし、そうした影響を考慮しても、以上のような「パーフェクト・ストーム」に加えて年間500億ドルの売上をもたらすApple Musicをはじめとしたサービス事業によって、結局は同社は成長すると見ているのだ。


 長期的には業績に関して好材料が揃っているAppleが2020年に記録的な売上を達成する、という可能性も否定できないだろう。


(吉本幸記)