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NEWSのアルバムプロジェクト4部作は現実を生きる私たちの物語ーー最終章『STORY』から感じたこと

2020年03月06日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

NEWS『STORY』(通常盤)

 NEWSの最新アルバム『STORY』がついにリリースされた。2017年より、N=『NEVERLAND』、E=『EPCOTIA』、W=『WORLDISTA』と続いた、コンセプチュアルアルバムプロジェクト。S=『STORY』は、4部作の最終章となる。


(関連:NEWSのアルバムプロジェクト『STORY』が面白い ファン参加型で作られる4つ目の新たな世界


 夢の島、宇宙、そして仮想空間……と、アルバムごとに異なる舞台へ誘ってくれた、このアルバムプロジェクトもついにエンディングを迎える。何年もコンスタントに楽しんできた長編作品がクライマックスを迎えることに、楽しみと寂しさとが入り交じる複雑な気持ちを抱えつつ、アルバムを開いた。


 これまでの3作品では、最初に世界観を表すBGMと共に、案内人のアナウンスが聞こえてくる、というお決まりの流れがあった。今作も、まず私たちの耳に飛び込んでくるのは、まるで往年の名作映画のオープニングを彷彿とさせるゴージャスなファンファーレ。いよいよ始まるという高揚感と同時にちょっぴり懐かしいような、不思議な感覚に包まれる。


 そして、聞こえてきた「STORY」。歌詞には〈NEVERLAND〉〈EPCOTIA〉〈WORLDISTA〉の文字が。さらに耳をすませば、各アルバムで登場したキーワードも囁かれている。〈声あげた2003 旅ははじまり〉と歌うのは、もちろんNEWSのデビューした年のこと。 〈そして僕ら 2020 夢見たあの場所へ〉すべての点が振り返ると線につながっていく。これまでの日々が、一瞬一瞬が積み重なって、人生というSTORYになっているのだと気づかされる。


 コンセプチュアルなアルバムは、現実とはかけ離れた夢の世界を描いているように見えた。だが、前作『WORLDISTA』で、私たちの意識は大きく揺さぶられた。現実と非現実を分けるものなんてあるのだろうか、と。「想像することがみちしるべ」自分自身の想像力次第で、この世界は素晴らしいものに変わる。


 そう、かつての夢物語が、現実のSTORYになる日が来るということ。夢の島の大冒険も、異星人と宇宙旅行を楽しむことも、そして時間や空間の概念を超えることも……はじまりは過去の誰かが思い描いた空想だった。それが小説や歌、舞台、映画をはじめとしたエンターテインメントの力で広まり、それ受け取った誰かの夢になり、そして現実になっていった。NEWSが、アルバム4部作で見せてくれたのは、人類が叶えてきた夢の旅路であり、NEWS自身がファンと紡いできた歩み。そう、紛れもなく現実を生きる私たちのSTORYだったのだ。


 4部作を通じて現れてきた7という数字も「SEVEN」という曲に収束されていく。ドレミファソラシの〈7音階〉は、そのあとに「ド」ではなく「ゲ」と続けたくなる、暗黙の了解が私たちの中にはある。〈7つの惑星〉と聞けば、あの宇宙旅行を思い出さずにはいられない。歌詞内にある( )は、自分たちのパートだと思える特別なシルシになった。「4」も「7」も、今や単なる数字ではないのだ。そこには、もう忘れられないSTORYがあるから。


 もちろん、困難や挫折のない物語はない。ここまでたどり着いたNEWSとファンにも、多くの痛みがあった。歯を食いしばって耐えた日々。自分の存在がなんてちっぽけなんだと感じることも。だが、これまでなんとか乗り越えて、生きてきた。それだけで、もうスーパースター。私たち1人ひとりが自分のSTORYの主人公であるということを、続く「SUPERSTAR」という楽曲で思い出させてくれる。


 「ファンのみなさんと一緒に創りたかった」というメンバーの言葉通り、アルバム『STORY』の制作に際して、ファンから「“STORY”の手描き文字」、「現実のSTORY」そして「未来のSTORY」を募った。それぞれ「手書き文字」が2万3063件、「現実のSTORY」が1万6962通、「未来のSTORY」が2万4546通も寄せられたという(初回限定盤DVD映像より)。1人ひとりの想いが込められた手描きの文字は、ジャケットや衣装に散りばめられ、ファンの声も「君の言葉に笑みを」に収録。そんな挑戦的な取り組みが実現できたのも、このアルバムならではだ。


 よくよく考えてみれば、NEWSと長年タッグを組んでいるクリエイター陣もまた、NEWSのファンであることに違いない。ヒロイズム、☆Taku Takahashi(m-flo)ら、おなじみのメンバーに加えて、本作には加藤シゲアキがファンを公言している向井太一が参加。また、若きシンガーソングライターのeillも「STAY WITH ME」を提供し、Twitterで「NEWSさんに 楽曲提供させて頂きました “STAY WITH ME” 少年倶楽部にて歌って頂きました。 最高すぎて思わず涙。ありがとうございます。」とツイート。NEWSが、誰かの夢を叶える場所にもなっているのだ。そして、NEWSメンバー自身も4人で「クローバー」を合作している。


 出会いと別れ、喜びと悲しみを繰り返してきたNEWSの物語は今、こんなにも愛に満ちあふれている場所にたどり着いた。このアルバム4部作を通じて、彼らの表現力が大きく変化したのを感じたのは筆者だけではないだろう。紆余曲折を経て、肩の力がふっと抜けたような。そんなリラックスした心境だからこそ、気持ちよく歌声が通るのかもしれない。


 音楽で、ファッションで、文字で、トークで……様々な表現で楽しい時間を創り出せる楽しみを知ったNEWS。この『STORY』は、4部作の最終章ではあるけれど、〈一度きりの物語が 自分(きみ)のSTORY〉と歌う「NEW STORY」で締めくくられているように、終わることのない物語の一部なのだろう。NEWSが届けてくれるエンターテインメントは、これからも誰かの夢となり、そして私たちの現実のSTORYへと続いていく。(佐藤結衣)