2020年03月05日 19:02 弁護士ドットコム
新型コロナウイルスに関連して「トイレットペーパーが品薄になる」などのデマをSNSに投稿した米子医療生活協同組合の職員について、事情を聴いていた鳥取県警米子署は「悪意の意図がなかった」として、刑事責任を問う可能性は少ない見込みだと同組合の担当者は話しています。
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職員のデマが全国的に大きなトイレットペーパー買い占め行動を巻き起こすことになり、怒りに震える消費者は少なくありません。偽計業務妨害罪や民法上の不法行為に問われるのか検証する記事にも反響があります。
担当者によると「職員本人が警察と話をした結果、職員には『悪意の意図が全くない』と確認されたようです」「警察は『法に触れて刑罰を(課す)という対象でないことは、経緯を聞いて確認しています』と言っておりました。それで処罰の対象にないという認識でおります」と話す。
この騒動をめぐり、米子医療生協本部には連日、「トイレットペーパーを届けろ!」など、1日あたり100件をこえる抗議の電話が入りパンク状態になっているほか、米子市役所や県の消費生活センターにまでクレームの電話が入り、米子市全体が大騒動になっているそうです。
米子医療生協本部の担当者の話をもとに、一連の経緯を振り返ります。
米子医療生協本部がネットの炎上を把握したのは、2月末のことでした。本部に苦情のメールが届きだしたことがきっかけで職員本人に確認を行ったところ、事実と認めたといいます。一方で、ネットで批判のあった「転売屋」という指摘については、事実ではないと否定しました。
そこで米子医療生協は3月3日、「職員の不祥事のご報告とお詫び」をホームページに公表し、謝罪しました。
「このたび、『新型コロナウィルスにかかわりトイレットペーパーが品薄になる』旨の事実とは異なる誤った情報のSNSへの投稿者の1人が、当組合の事業所に勤務する職員であることが判明しました。当組合の職員の極めて不適切な行為により多くの皆様方にご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます」
HPに掲載された後、弁護士ドットコムニュースの編集部は米子医療生協本部に電話をかけ続けましたが、ようやくつながって担当者と話ができたのは3月5日午後、20回目の電話でした。
事態の公表後、マスコミからの取材連絡だけではなく、全国から怒りの電話が殺到し、回線がパンクしていたのです。
担当者は、デマを投稿したのが職員であることを改めて認め、疲れきった声で次のように状況を説明しました。
「全国から電話をいただき、対応に追われております。『今日スーパーに行って、トイレットペーパーを手に入れられなかった。トイレットペーパーを届けろ!』とか、『どうしてくれるんだ』というお声です。入手できなかった矛先のターゲットが米子医療生協になっております」
公表後の本部には連日、1日あたり100件以上の電話とメールが届くだけでなく、関連の「診療所やデイサービス、訪問看護ステーションにまで抗議の電話がかかってきているそうです。
「それでもつながらないと、今度は米子市役所や県の消費生活センターにまで連絡が及んでまして。市役所の職員さんが『なんとかしてくれないか』と訪ねてこられたんですけど、精一杯対応しているとしか言えなくて…」
日常の業務に支障が出るほどの騒動になることをわかっていて、それでもなぜ、公表を決断したのでしょうか。
「うちの職員であることは間違いありません。職員管理のうえで、やはり教育が足りなかったという反省もありますし、社会的責任を果たさなければいけません。このまま知らん顔はできませんでした」
「警察は『ここにも迷惑電話などあろうかと思いますが、脅迫じみたものであれば都度相談してほしい』ということでした」
そう言いながらも、現実に全国からの怒りを受け続けると「正直なところ、公表してよかったのかどうかと頭の中によぎりました」という本音ものぞきます。
ネット上には、職員の自宅として画像や住所、電話番号もアップされてしまっています。
「自宅にはマスコミのほか、不審な人がやってくるそうです。誤って近所の家を『犯人の家』として紹介されているようで、ご近所の家に迷惑な電話が頻繁にかかってきているといいます」。
騒ぎが収束してから、改めて本人の弁明を聞き、社会的影響を考慮したうえで、処分が下される見込みです。
「私刑」は許されることではありません。気持ちもわかりますが、冷静で落ち着いた行動がもとめられています。