トップへ

DracoVirgo、ハイカラ時代から変わらぬ音楽への思い ステージ上で示すバンドのアイデンティティ

2020年03月05日 18:02  リアルサウンド

リアルサウンド

DracoVirgo(写真=yukubo)

 元HIGH and MIGHTY COLOR(以下、ハイカラ)のメンバー3人によるミクスチャーロックプロジェクトのDracoVirgoが、東名阪ツアー『Opportunity 2020~Rainbow Butterfly~』を開催。1月25日に東京・渋谷WWWで開催されたファイナルでは、1stアルバム『Opportunity』に収録の全24曲を披露したほか、ゲストに元ハイカラのメンバーのユウスケとMEGが登場してハイカラのメジャーデビュー15周年を祝うと共に、DracoVirgoとしての躍進を印象づけるステージになった。


参考:DracoVirgo×毛蟹が語る『Fate/Grand Order』の魅力と「清廉なるHeretics」制作秘話


■変幻自在に聴かせたMAAKIIIのボーカル


 DracoVirgoは、元HIGH and MIGHTY COLORのメンバーMAAKIII(VOCAL)、mACKAz (BASS)、SASSY(DRUMS)の3人によって2017年に結成。MAAKIIIのソロアルバム『兎に角、ジェネシス!!!!!』のDracoVirgo versionを含む全24曲の2枚組1stアルバム『Opportunity』を、1月15日にリリースしたばかりだ。このツアーはそのアルバムのリリースを記念して開催されたもので、アルバムに収録の全24曲をすべて演奏することが事前に告知されていてファンの間で話題になっていた。


 そんなアルバムについて「1stアルバムは高カロリー、高タンパク、高品質」と評したMAAKIII。ライブはアルバムと同じく「Rainbow Butterfly」でスタートし、WWWでやっていることが不思議に思うくらいスケールが大きく、完成されたステージで観客を圧倒した。


 ダンスとヘヴィロックが融合した楽曲を、次々と繰り出した序盤。四つ打ちのビートとサイケデリックな雰囲気が相まって、会場はまるで竜宮城のディスコのようなダンス空間へと変貌した。MAAKIIIの合掌ポーズから、天女のように妖艶に舞いながら歌った「KALMA」。人気アプリゲーム『Fate/Grand Order』のテーマソングとして、毛蟹 feat. DracoVirgo名義で発表し、iTunesで1位を獲得した「清廉なるHeretics」では、MAAKIIIがエモーショナルなボーカルを聴かせ、それに触発されるようにリズム隊の二人が分厚い音でプレイを響かせる。また「DASH!脱出!奪取!」では、MAAKIIIがロボットダンスのような動きを繰り出すと、観客がそれをマネて一緒に踊って会場が早くも一体となった。


 MAAKIIIのボーカルは、ハイカラ時代からさらに増して圧倒的な存在感を発揮していた。「阿弥陀の糸」では絶叫とも呼べるようなシャウトで観客を引きつけ、展開の多い「FLY」では、髪を振り乱すようにしながら、ノドが張り裂けびそうなほどのパワーを込めた歌声で観客を圧倒する。後半にはチャイナドレス風の衣装も披露し、観客が手で×を作って踊った「××××」では、〈チョメチョメチョメチョメ〉と、声色もユーモアたっぷり。また、途中でレゲエに展開する構成も楽しい「いーじゃんっ!」では、キュートな歌声も聴かせるなど、まさしく変幻自在といったボーカルで観客を魅了した。


 アニメ『ありふれた職業で世界最強』のEDテーマとして話題を集めたバラード「ハジメノウタ」は、「みんなに愛を込めて歌います」と紹介して歌い、会場を感動的な空間に変身させた。ステージの後ろには同アニメのキャラクター=ユエが月に願う様子が描かれた、アニメ盤ジャケットのイラストが映し出され、サビではミラーボールが回り、会場をキラキラとした光が埋め尽くす。その中でMAAKIIIは、聴く者を優しく抱きしめるような温かく優しい歌声を聴かせて、歓声と拍手が沸き起こった。


■デビュー15周年に元ハイカラメンバーが集結


 mACKAzとSASSYの2人は、パワー全開のテクニカルな演奏で歓声を浴びた。特に中盤で演奏した、インストゥルメンタルナンバー「Massatsu」は圧巻。バキバキの重低音が鳴り響くベースプレイと、スティックをくるくる回しながら超絶技巧で聴かせるドラムで、演奏で観客を引きつけた。


 そこから一転、自分たちで「プリンのカラメルソースのようなコーナー」と評したリズム隊2人のMCコーナーでは、笑いを交えたトークで観客をほぐした。MCコーナーの最後には、1月26日がちょうどハイカラがメジャーデビューして15周年の記念日であることに触れる。SASSYが「ハイカラの時からの人間関係が俺のすべてで、同じ環境で今も音楽を出来ているのは、みんなに感謝しかない。ありがとう」と感謝を述べて、ハイカラ時代からのファンの胸を熱くさせる場面もあった。


 そんなハイカラの元メンバーのMEGとユウスケが、ゲストで登場して観客を沸かせた終盤。子どもの頃の遊びをモチーフにした「hanaichimonme」では、グルーヴィーなサウンドにMEGのトリッキーなギターが絡む。ユウスケは、登場早々「渋谷、楽しむ準備は出来てるか!」と観客を挑発し、「ABRACADABRA」でMAAKIIIのボーカルに、デスボイスやシャウトで合いの手を入れて楽曲に色を添えると、観客はリズムに乗ってタオルを回しながらジャンプした。


 アンコールでは、「ヤバイ、すごい。めちゃめちゃエネルギー交換出来てる気がする」と嬉しそうに目を輝かせたMAAKIII。「これが幸せって言うのかな?」と、感無量で言葉に詰まる様子もあった。また当日はユウスケの誕生日で、みんなで祝う場面もあり、「こんな日に呼んでくれてありがとう」と、ユウスケも嬉しそうに笑顔をほころばせた。15年変わらない仲の良い雰囲気に、会場にも笑顔の輪が広がった。


 「今日は旧正月で、しかも新月。こんな日にみんなと会えて嬉しいです。沖縄のおじいとおばあも喜んでくれているかな~?」と、MAAKIII。遠く沖縄の家族への思いも馳せながら、最後に沖縄の伝統音楽をベースに、メタル、ラップやデスボイスも合わさった、DracoVirgo流のミックスチャーサウンドの「RYUKYU」を披露した彼ら。会場には〈ハイヤ、イヤサッサッ〉と沖縄民謡のかけ声が飛び交い、観客も手拍子をしながらジャンプして、会場はまるでお祭りのような騒ぎに。彼らのアイデンティティの集合体とも呼べるこの1曲に込められた、愛と畏敬の念がきっとDracoVirgoを次なるステージへと導いてくれるだろう。(榑林史章)