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JASRACに完敗した「音楽教室」が控訴「社会一般の感覚から乖離した判決だ」

2020年03月05日 12:42  弁護士ドットコム

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音楽教室での演奏について、JASRAC(日本音楽著作権協会)に著作権使用料の徴収権がないことの確認をもとめた訴訟で、東京地裁から請求棄却の判決を受けた音楽教室は3月5日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いて、判決を不服として、知的財産高等裁判所に控訴したことを明らかにした。控訴は3月4日付。


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この日の会見で、音楽教室でつくる「音楽教育を守る会」の会長で、ヤマハ音楽振興会常務理事の大池真人氏は「今回の判決は結論ありきの判断で、到底納得できるものではない」と述べた。さらに、生徒の練習や教師の手本に著作権使用料が発生するという判断について、「社会一般の感覚から大きく乖離している」と訴えた。



JASRACは2017年2月、音楽教室で生徒や教師が管理楽曲を演奏することに対して、著作権使用料を徴収する方針を示した。これに反発したヤマハ音楽振興会など、音楽教室が「音楽教育を守る会」を結成し、同年6月、東京地裁に提訴した。しかし、東京地裁は今年2月28日、音楽教室の請求を棄却していた。



●音楽教室に「演奏権」が及ぶかどうか

この裁判では、音楽教室での演奏が(1)「公衆」に対する「公の演奏」にもあたるのか、(2)「聞かせることを目的」とした演奏にあたるのか--が争点になっている。



著作権法は「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下『公に』という)上演し、又は演奏する権利を専有する」として、「演奏権」をさだめている(同22条)。



音楽教室で生徒や教師が演奏することに「演奏権」が及ぶとなると、JASRACに著作権使用料を徴収する権利があることになるのだ。



●「カラオケ法理が機械的にあてはめられた」

東京地裁は、(1)について、音楽の利用主体は、「教師や生徒ではなく、音楽教室事業者であると認めるのが相当」としたうえで、生徒の入れ替わりなどがある実態を踏まえて、「音楽教室の生徒は、不特定または多数にあたるから『公衆』に該当する」と判断した。



(2)の争点については、「音楽教室のレッスンは、教師が演奏をおこなって生徒に聞かせることと、生徒が演奏をおこなって教師に聞いてもらうことを繰り返す中で、演奏技術の教授がおこなわれる」として、「聞かせることを目的」は明らかであるとした。



音楽教室側は控訴審で、教室での具体的な演奏状況を理解してもらいつつ、1審で適用された「カラオケ法理」(カラオケスナック店での楽曲の利用主体はカラオケスナック店であるとした考え方・判例)が「機械的にあてはめられた」などと主張していくとしている。