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楽天「送料無料化」で公取委とガチバトル 強行突破なら「課徴金」リスクも?

2020年03月05日 10:21  弁護士ドットコム

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楽天の送料無料化の方針をめぐる問題で、公正取引委員会は2月28日、緊急停止命令の申立てを東京地裁に対して行った。緊急停止命令の申立ては16年ぶり。公取委は、楽天に対して立ち入り検査を実施するなど、送料無料化は独禁法違反の疑いがあるとして調査していた。


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今回の緊急停止命令の申立ては、独禁法違反をやめるように命じる排除措置命令が出るまで、出店事業者が一律に別途送料を受け取れないような施策を実施してはならないという決定を求めるものだ。



この申立てに対し、楽天は同日、予定通り3月18日に送料無料化を実施するとすぐさま発表。2月10日に公取委の立ち入り検査を受けた際、送料無料化は法令上の問題はないものと考えているとしていたが、依然としてそのスタンスに変更はないようだ。



緊急停止命令とはどのようなものなのか。また、今後この問題がどのような展開となるのか。独禁法に詳しい籔内俊輔弁護士に聞いた。



●裁判所が緊急停止命令を出す可能性はある

ーー緊急停止命令とはどのようなものですか



「緊急停止命令は、公取委の申立てにより、独禁法違反の疑いがある行為をしている者に対して、その行為を一時停止すべきこと等を命じる裁判所の決定です(独禁法70条の4)。



一般的に、公取委が独禁法違反行為に対して『排除措置命令』によって違反行為の取りやめ等を命じるまで、立入検査等で違反事実を立証するに足りる証拠を収集したり、命令の前に意見を聞く手続等をする必要があるので、通例1~2年程度かかります。



そのため、その間に違反の疑いがある行為により競争に悪影響が生じたり、関係者への不利益が生じたりすることを避ける緊急の必要がある場合には、公取委は裁判所に緊急停止命令の申立てをします」



ーー緊急停止命令の申立ては、どのくらいの期間で判断されますか



「緊急停止命令は過去の事例が多くありません。また、事案によって、違反の疑いの程度、違反の成立を否定するような事情の有無、緊急性の程度等が異なりますので、裁判所の決定までに要する期間は一概には言えません。



ただ、本件では、公取委としては、楽天が送料無料化を実施するとしている3月18日までに、裁判所の判断を得たいと考えていると思われます」



ーー緊急停止命令が出される見込みはあるのでしょうか



「公取委としては、緊急停止命令を得られるだけの証拠収集ができていると判断して申立てを行っていると思われるので、裁判所が緊急停止命令を出す可能性はあるとは考えられます。



他方で、報道によれば、楽天側も送料無料化によって売上が増加する等の出店者へのメリットがあるといった主張をしているようです。



法律上は、正式に楽天側の意見を聴取する手続はないですが、楽天側はそのような主張や証拠を裁判所に提出するものと考えられますので(裁判所も検討対象には入れると考えられます)、裁判所がどのように判断するかが注目されます」



●緊急停止命令後の送料無料化には、制裁やさらなる法的措置も

ーー緊急停止命令が出た場合、楽天側の取りうる手段としてどのようなものがありますか



「独禁法上、法務局に一定の金銭を供託することで緊急停止命令の執行停止が得られる制度があります(独禁法70条の5)。



これは、金銭を担保にして、命令に従うことを猶予してもらう制度で、刑事事件でいう『保証金と保釈の関係』をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。



しかし、実際には、供託のみを条件にして執行停止申立ては認められていません。



単に金銭の供託だけで執行停止を認めてしまうと、競争への悪影響等を除くため緊急の必要性があって行われている緊急停止命令の意味を失わせることになるためだと考えられます。



なお、緊急停止命令に対しては、不服申立てとして即時抗告もできます。楽天側は緊急停止命令を受けて不服があれば、東京高裁に不服申立てをすることになります」



ーー緊急停止命令が出てなお、楽天が送料無料化の方針を押し通したらどうなりますか



「緊急停止命令に従わない者には30万円以下の過料という制裁が科されることがあります(独占禁止法98条)。



今後、楽天が予定通りに送料無料化を実施した場合には、公取委としては過料の制裁の申立てのほか、独禁法違反(優越的地位の濫用)での調査を進めて、排除措置命令や課徴金納付命令を行うことになると考えられます。



最終的に、本件が排除措置命令や課徴金納付命令に至るかは断言できませんが、課徴金納付命令がなされる場合には、送料無料化実施以降に、その対象となった出店者と楽天側との間の取引額の1%に相当する課徴金の納付が命じられることになります。違反行為が長く続き、対象者の数が多くなれば、課徴金の額も大きくなる可能性があります」




【取材協力弁護士】
籔内 俊輔(やぶうち・しゅんすけ)弁護士
2001年神戸大学法学部卒業。02年神戸大学大学院法学政治学研究科前期課程修了。03年弁護士登録。06~09年公正取引委員会事務総局審査局勤務(独禁法違反事件等の審査・審判対応業務を担当)。12年弁護士法人北浜法律事務所東京事務所パートナー就任。16年~神戸大学大学院法学研究科法曹実務教授。

事務所名:弁護士法人北浜法律事務所東京事務所
事務所URL:http://www.kitahama.or.jp