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ウディ・アレン監督「#MeToo」運動の最中、回顧録出版へ 性的虐待を告白した養女が猛反発

2020年03月04日 20:12  Techinsight Japan

Techinsight Japan

4月に回顧録を出版するウディ・アレン
世界中で「#MeToo」運動が広がる中、過去に養女への性的虐待疑惑で注目されたウディ・アレン監督(84)の回顧録が出版されることになった。『Apropos of Nothing』というタイトルで、アシェット系列であるグランド・セントラル・パブリッシングから米国で4月7日に発売される。

現地時間3月2日、グランド・セントラル・パブリッシングがウディ・アレンの回顧録を出版すると発表した。

「この本はウディ・アレンの仕事と私生活面における人生を包括的に説明したものであり、映画、演劇、テレビ、ナイトクラブ、印刷物などの作品について描写している。」
「また家族や友人、最愛の人達との関係についても綴っている。」

米国のほかカナダ、フランス、イタリア、ドイツ、スペインでも出版予定だという自叙伝は、2003年にペンギン・パブリッシャーが出版すると噂されていたが、ウディ側から契約を撤退した。その後ウディは出版する意向を示すが、過去に養女のディラン・ファローさんに対する性的虐待疑惑があったため、どの出版社からも拒否された。

ウディの私生活に大きな変化が訪れたのは、1992年だった。この年、ウディは長年の恋人で女優のミア・ファローの養女スン=イー・プレヴィンさんと交際していることが発覚した。スン=イーさんはミアと彼女の前夫との間の養女だったが、ウディと1997年に結婚した。1992年には、ウディとミアの養女ディラン・ファローさんが、ウディから7歳の時に性的虐待を受けたと告白している。ウディは完全に否定し、証拠不十分で訴追されなかった。

ディランさんには、ウディとミアの実子であるローナン・ファローさんという弟がいる。ジャーナリストとして活躍するローナンさんは、米誌『The New Yorker』で映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインら業界の権力者たちによるセクハラ被害を暴露した。ローナンさんはピューリッツァー賞を受賞し、この報道をきっかけに米国ではセクハラを告発する「#MeToo」運動が誕生した。皮肉なことに、この報道の経緯を描いたローナンさんの著書『Catch and Kill』は、アシェット系列のリトル・ブラウン・カンパニーから出版されている。

なおウディ・アレンの回顧録出版の発表に対して、ディランさんはこのような声明を発表した。

「アシェットがウディ・アレンの回顧録を出版するという発表は、私個人にとって非常に不快であるとともに、勇気ある報道をした弟への裏切りです。弟はパワーのある男性達から受けた性的被害者たちに、発言する場を与えました。そんな弟をアシェットは利用したのです。」

「アシェットから私に、回顧録の内容について事実検証をするといった連絡は一度も受けていません。アシェットが非道的で、最も基本的な責任の放棄をしたことの証明です。」
(TechinsightJapan編集部 寺前郁美)