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夏帆×臼田あさ美×佐藤玲×山田真歩が語り合う、バカリズムの不思議な台本 『架空OL日記』番外編

2020年03月04日 16:02  リアルサウンド

リアルサウンド

(左から)山田真歩、臼田あさ美、夏帆、佐藤玲(撮影:映像企画MOVE-ON)

 バカリズムが2006年から3年の月日をかけ、銀行勤めのOLのフリをしてネット上にこっそり綴っていたブログを書籍化した『架空OL日記』(小学館文庫 全2巻)。バカリズム自身が脚本・主演を務め、2017年にはドラマ化もされた同作が今回映画化され、現在絶賛公開中だ。


 今回、ドラマ版でバカリズムのOL仲間を演じていた夏帆(藤川真紀/マキちゃん)、臼田あさ美(小峰智子/小峰様)、佐藤玲(五十嵐紗英/サエちゃん)、山田真歩(酒木法子/酒木さん)にインタビューを実施。取材現場では、インタビュー前の時間にお互いの衣装について、演じたキャラクターたちさながらの会話をしている様子も見せた彼女たちに、主演のバカリズムの印象や彼が手がけた脚本の魅力、そしてそれぞれのキャラクター作りについて、語り合ってもらった。


【動画】『架空OL日記』特別スポット映像


■「不思議な台本」


ーーバカリズムさんが作る物語、脚本の魅力はどう感じましたか?


臼田あさ美(以下、臼田):やっぱり会話劇が魅力ですよね。


山田真歩(以下、山田):台本読んで爆笑した?


臼田:爆笑した(笑)。脚本が面白いから、ドラマ版の最初の頃は、「このハードルをどう越えていこう?」と難しく考えていた時期もあって。映画版になったら、みんなを信用して、みんながいるから大丈夫って思えたけど、ドラマの現場に入る前は、そういう意味での緊張はありましたね。


夏帆:大きな事件も起こらない日常を描いているのにこれだけ面白いのって、升野さん(バカリズム)が書くセリフの言葉選びやテンポ感が大きいんじゃないかなと感じます。


山田:あと心の声が面白いよね。私たちは必死に真面目にやってるのに、心の声がサエちゃんにツッコミを入れたりして、それがおかしくて。聞こえてるのに、私たちは笑っちゃいけないのが大変だった(笑)。


夏帆:悪口とか愚痴とかを話していても、それでも愛らしく感じますよね。あだ名の付け方にもクスッと笑えるし、かわいいなって。この5人がとてもチャーミングに見えますし、そもそもこの世界観が成立できてるのもすごいですよね(笑)。


臼田:あと、掛け合いの連続だから、誰がどのセリフを言ってもおかしくないような気もするんだけど、このセリフは絶対このキャラが言うだろうなっていうのがあって、しっくりくる。自分のセリフを自分の良いタイミングで、本当に役のままポンって言える感覚があった。


山田:そうなんだよね。だから説明台詞とかも、自分のキャラクターが言いそうなセリフだったから覚えやすかったね。


佐藤玲(以下、佐藤):ドラマ版の最初の時に、それこそ「うん」とか返事もたくさんあって、全部覚えられるか不安だったんですけど、5人での会話が進んでいくと「うんうんうん」とか自然に言ってたり、すごく楽に出てきて、私も不思議な台本だなと思いました。


臼田:人それぞれに無理のないセリフを言わせて、それがポンポンポンっていくから面白い。


夏帆:セリフが面白いですね、本当に。


■「無茶ぶりのダンスがいつも本当に困ります」


ーーそれぞれのキャラクターはどんな風に役を作っていきました?


臼田:何もしないことの方が多かった気がします。


山田:自然に喋っているとそういうキャラクターになるから、やっぱりセリフがすごいんだね。


臼田:それもだし、真歩さんだけど、真歩さんじゃなくて酒木さんだし(笑)。同じくサエちゃんもそうで。


佐藤:セリフを言ってると、だんだんとサエちゃんに自分自身も思えてくるというか。


夏帆:この5人で集まると、カメラが回っていない時も自然とその役と同じ立ち位置で会話してますよね。その役が言いそうなことをそれぞれが話していて(笑)。


臼田:口から出ちゃうよね。それが妙に心地良いんだよな。


夏帆:役作りのためにあえてやっているわけではなくて。


山田:あー、確かに。でも逆に「物凄く役作りしてました!」みたいに話したら面白いのかな?


臼田:本当はこんなんじゃないですって?


佐藤:嘘を(笑)。


山田:そういう苦労話とかが聞きたいのかなって。


臼田:エピソードが何もなさ過ぎるもんね(笑)。


山田:大変でしたよ。大変なこともあったよね?(笑)


佐藤:私はサエちゃん結構大変でした。テンションが高いのと、あとかわいく見えて、たまに発言でイラっとされる、けど憎めない、みたいなラインが分からなくて。


山田:それは大変だよね。


佐藤:でも、みんなと会話していくうちになんとなく分っていったかなという感じで、最初はたぶん結構めちゃくちゃなことを言ってたと思います。


山田:マキちゃんがジムのシーンで持ってたダンベルって本当は重かったの?


夏帆:あれは重くない(笑)。


山田:役作りしたのかなって思ったんだけど。


夏帆:違う(笑)。あれは軽いのを作ってもらいました。


佐藤:フォームとかすごく綺麗でした。


臼田:でも、役作りで言ったら真歩さんの札勘が1番練習の成果じゃない?


山田:札勘はドラマで散々やったから手が覚えてたの。一番大変だったのはポスター巻き。「ポスター巻き業界でもやっていけるレベル」って台本に書いてあって、どういうことだろうと思って、ずっと家で練習してたから、そういう地味な役作りはあったかも。


夏帆:でも私も、営業の窓口でお客さんと一番接客しなきゃいけないポジションが大変だったかも。お客さんとの接客の時に話す業務的なセリフが長くて、しかも難しくて。


山田:小峰さんは苦労したことないの? 


臼田:私は無茶ぶりのダンスがいつも本当に困ります。あそこ演出ないから。


山田:「自由にやってください」みたいなね。


臼田:「今までと違うのやってください」みたいに言われるから。でも絶対に準備しちゃいけないと思ったし、練習しちゃいけないと思った。


山田:確かに何度もやると即興な感じが出ないよね。


臼田:監督が突然、「椅子に乗ってください」とか「ここから去っていくところの隙間でやってください」とか、バッグを持っていたり靴を持っていたり、その状況になってみないと分からないから。ドラマ版の時にすごく緊張して、準備していかないと怖いと思ったけど、もう絶対準備しちゃダメと思って。


山田:それたぶん、お笑いの人に近いよね。


夏帆:瞬発的(笑)。


山田:今回はあえて準備しないってことが大変だったのかな。


臼田:よく言ったらそうかも。


■「私たちはコントロールされてたんだ」


ーーバカリズムさん本人については共演してどんな印象を受けました?


臼田:緊張感を与えないでいてくれたことがすごくありがたかったです。普通だと撮る時に脚本家さんがいると意識してしまって、とても緊張するので。升野さんは脚本家さんであり原作者さんでしたけど、何もなく自由にやらせてくれたのは、升野さん自身のキャラクターのおかげだったからかなというのは感じましたね。


夏帆:唯一、升野さんがいないシーンがあった時も、升野さんがいないととても心配になるというか、心許ないというか……あの空気感ができたのは升野さんがいらっしゃったからだなって。


佐藤:やっぱりどのシーンもリードしてくれましたよね。


山田:演じてる時も、映像を見てても思ったんだけど、本当に演技をしていない感じがなかった?


夏帆:分かります。すごいですよね。


山田:あれに引きずられたんだと思う。ずっと雑談してるみたいな感じだから、「本当に作品撮ってるのかな?」って話してたよね。


夏帆:「これで大丈夫なのかな?」ってみんなで話してましたね(笑)。


佐藤:ギリギリまで雑談して、撮影の中でも雑談して、カットかかってからもまた違う雑談して……本当に始まる前も終わってからもずっと(笑)。


山田:あと中空きがあって、ファミレスに行った時にみんなでご飯を食べていたら、「こんなに楽しかったのすごい久しぶり」って話していて、その時にすごい感動しちゃった。


夏帆:私もです。すごく楽しそうにしてらっしゃったから、良かったなぁみたいな(笑)。


山田:日常の一コマだったけど、それを感動できるってすごいなと思った。


臼田:ちょっと心配にもなるけど(笑)。


夏帆:あと常に“笑い”っていうものがあるのがすごく面白くて。試写が終わった後にみんなでご飯行って、映画の話をしてた時も、まず“笑い”のことを考えていて、私たちにない感覚だなと。


山田:確かにね。


夏帆:芸人さんだから当たり前なんですけど、シーンの組み立て方も、全部にまず“笑い”があって。やっぱりこれじゃオチがないとか。


臼田:そういうこと普段のうちらは考えないね。


山田:そうだね、「あそこはもっと笑わせられた」とか考えないもんね。


夏帆:それがすごい面白いなって。


臼田:すごく普通にみんな一緒の感覚で升野さんといるような気がしたけど、実は全く同じ感覚ではないままいたってことだよね。すごいリーダーシップだったし、引っ張ってくれていたし、私たちはコントロールされてたんだね。


山田:野放しだと思っていたけどそうだったら、1番すごいね。


夏帆:それはあるかもしれないです。実は升野さんに全部操られていて(笑)。


臼田:そんな気もする(笑)。


(取材・文=大和田茉椰)