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記憶だけは治らない エレン・ペイジ主演の近未来スリラー『CURED キュアード』予告編

2020年03月02日 15:02  リアルサウンド

リアルサウンド

『CURED キュアード』(c)Tilted Pictures Limited 2017

 3月20日公開の『CURED キュアード』より、予告編と場面写真が公開された。


参考:映像はこちら


 アイルランドの新鋭デヴィッド・フレインが監督を務めた本作は、ゾンビ・ウイルスのパンデミックが収束した“その後”を描く異色の近未来スリラー。ウイルスに冒されて無差別に他者を噛み殺すモンスターに豹変したのち、画期的な治療法によって回復した“元”感染者たち。獰猛なゾンビだった頃の悪夢にうなされ、心に傷を負った彼らは、真の人間性を取り戻すことができるのか。


 人間を凶暴化させる新種の病原体、メイズ・ウイルスのパンデミックによって大混乱に陥ったアイルランド。6年後、治療法が発見されたことで秩序を取り戻し、治療効果が見られない25%の感染者は隔離施設に監禁され、治癒した75%は“回復者”として社会復帰することになった。回復者のひとりである若者セナンは、シングルマザーの義姉アビーのもとに身を寄せるが、回復者を恐れる市民の抗議デモは激しさを増すばかり。やがて理不尽な差別に不満を募らせ、過激化した回復者のグループは社会への復讐テロを計画する。


 公開された予告編では、ゾンビ・パンデミックが終焉した世界の様子が映し出される。荒廃した世界で、人を噛み殺した過去に悩む人々の姿が切り取られている。


■監督・脚本:デヴィド・フレイン コメント
映画製作者としての私の情熱は、常に気の利いたジャンル映画を作ることにあった。ゾンビものに病的なくらい魅せられていた。現代の社会問題を見事に反映することのできるジャンルだからだ。そんなゾンビ感染に治療法があったらと考え始めたら、止まらなくなった。治るという状況は、元ゾンビにとってどんなものになるだろう?
治癒しても感染していた頃の行いの記憶に悩まされるという概念は、恐ろしく、とりわけ悲痛なものだった。その思いは私の心の中で渦巻き続けた。家族は元ゾンビを受け入れるだろうか? 本当にまた人間になれるのか? 登場人物を造形し、それを基盤にして『CURED キュアード』の世界を作った。
私はヨーロッパ中に救済措置と抗議が広がっていた頃、この脚本を書き始めた。当時も存在し、今でも残る激しい怒りの空気が私の執筆を焚きつけた。あれは自分には手に負えないことによって苦しめられ、責任を取らされるということに他ならず、それは本作の元ゾンビたちとまったく同じだった。彼らの行動に対する責任と罪はどこにあるのか。そして、記憶に取り憑かれている本人にとって、そんなことは本当に重要なのだろうか?
また、私はメディアや政治家が自らの目的のため、いかに人々の恐怖心を煽るかにも興味を抱いた。その恐怖の対象が移民、宗教、ジカ熱など、いずれであっても。そうした行為は怒りと分裂の雰囲気を作り出し、どんな病気よりもはるかに有害だ。このように恐怖を誇張する行為が『CURED キュアード』の世界の基礎を築いている。
要するに『CURED キュアード』は恐怖についての話だ。感染した者の恐怖や感染する恐怖だけではない。自分の中にある恐怖、すなわちそれは恐怖に苛まれる中での自分たちの無力さによる恐怖なのだ。


(リアルサウンド編集部)