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歌広場淳が語る“敬愛する格ゲーマー” 「eスポーツファンは、どぐら・ナウマン・大須晶を追いかけろ!」

2020年02月29日 15:31  リアルサウンド

リアルサウンド

ゴールデンボンバー・歌広場淳

 大のゲームフリークとして知られ、ゲーマーからの信頼も厚いゴールデンボンバー・歌広場淳による連載「続・格ゲーマーは死ななきゃ安い」。今回は歌広場淳が敬愛する、格闘ゲームプレイヤーについて語ってもらった。「eスポーツに関心があるなら、彼らを追いかけておけば間違いない」という、3人の魅力とは?(編集部)


(参考:歌広場淳が語る『EVO Japan 2020』で出会った“奇跡” 「注目を浴びるシーンではこういうことが起きる!」


・最高に面白い“どぐら”と、次世代の主人公“ナウマン”
 今回は、僕が敬愛する格闘ゲーマーについて語りたいと思います。ただ、テーマを絞り込まないと無限に出てきてしまうので、いま僕が力を入れている『ストリートファイターV』にかかわっていて、かつ“この人を追いかけているとシーンがグッと楽しくなる”という人をピックアップさせてもらいました。「eスポーツ」という文脈のなかで、画面を通して伝わってくる“表の魅力”だけでなく、個人的に接してわかった“裏側の魅力”も含めて、大好きな人たちです。


 一人目に取り上げたいのは、CYCLOPS athlete gaming所属のプロゲーマー・どぐら選手。梅原大吾選手やときど選手など、語られ尽くしているプレイヤーと比べれば、一般的にはあまり知られていないと思いますが、関西を中心に活動するめちゃくちゃ面白いプレイヤーなんです。


 どぐら選手は今まさに行われている「TOPANGA CHAMPIONSHIP」という『ストV』のトッププレイヤーだけを集めたとんでもない大会で、決勝リーグ進出の6人に残った実力者ですが、もともとは『GUILTY GEAR』シリーズをはじめとするアーク(システムワークス)ゲーのトッププレイヤーで、どのタイトルでも強く、マルチに活躍しています。だから、「どぐら」という名前を聞いたときに、どの作品を想像するか、人によって違う。今のプロゲーマーはタイトルをひとつに絞るのが主流になっているなかで、本当にいろんなゲームで結果を出していて、何より“そもそもゲームが好きなんだ”ということが伝わってくるんです。


 ここまではいわば“表”の魅力ですが、少し裏側に入っていくと、最初に言ったように、とにかく人としてめちゃくちゃ面白い。僕が出演しているTOKYO MXの冠番組『格ゲー喫茶ハメじゅん』にも最多出演していただいていて、それはゲームに関係ないところでも面白いから出演依頼をされるのだと思うんです。頭が良くて、常に話を盛り上げてくれるし、カメラが回っていても回っていなくても、ずっとしゃべっていて。『ハメじゅん』にプロゲーマーと僕が対戦するコーナーがあって、普段はまったく歯が立たないのに、どぐら選手が緊張していて、なぜか僕が勝ててしまう、という珍事があったんですが、そこから「え……俺『ハメじゅん』には出てへんけど?」と言い張るというくだりが生まれたりもしました(笑)。


 プロゲーマーとしてとても精力的に活動されていて、全国各地のイベントにも参加していることもあって、“いま最も話しかけてみてほしいプレイヤー”です。見かけは失礼を承知で一言でいうと“ガリガリピアス”で、やや強面ですが、本当に気さくでいろいろ教えてくれると思います。名言もたくさん残していて、「どぐらbot」なるツイッターもあるので、ぜひそこからチェックしてみてください。もちろん、格ゲーを知らなければなんのこっちゃわからない言葉も多いはずですが、そこから興味を持って少し調べてもらえると、自然とシーンに詳しくなれると思います。


 二人目は、DetonatioN Gaming所属のプロゲーマーで、先日の「EVO Japan 2020」の『ストV』部門で劇的な優勝を飾った若手プレイヤー、ナウマン選手。早くも今年を代表するプレイヤーの一人になりました。


 特に『ストV』では、国内の大きな大会で若手が優勝するということがなく、準優勝ですら難しかった。『ストリートファイター』シリーズは経験が物を言うので、長らく格闘ゲームに触れてきたプレイヤーが当然のように強く、若手が活躍しにくいのではないか、という思いもあったのですが、全然そんなことはなくて、若くても努力すれば報われるんだ、というシンプルなことを思い知らせてくれました。もけ選手、竹内ジョン選手、カワノ選手など、若手が台頭するなかで、ナウマン選手もいつかブレイクしてくれるんじゃないかと思っていましたが、想像もしなかった大きな舞台でそれが実現して。“本命”があまりに多すぎる大会で、並み居る強豪をはねのける快進撃は、本当にすごかった。


 重要なのは、彼が「EVO Japan」という大舞台で、“みんなでゲームを楽しむ”という瞬間を作ってくれたこと。これはプロゲーマーの本分にかかわることだと思います。配信の視聴者も含めた観客には、当然、個々のプレイヤーのファンもいれば、格闘ゲームをよく知らない人もいる。そのなかで、“どうやら聞いたことがない選手が決勝の壇上にいるぞ”という熱気が全体に高まり、みんなで固唾を飲んで試合を見守る、という状況が生まれたんです。「ウメハラなら観るけど……」という人も少なからずいるなかで、実はこれ、なかなかできないことなんですよ。


 それも、とても真面目でカッコよく、ゲームがなくても大丈夫そうな子が、正攻法な戦い方で勝利した。新時代のヒーローというか、“主人公”的存在になる資質は十分なので、ぜひ追いかけてみてほしいです。


・“豪傑”こと大須晶のすごさ
 今回最後に取り上げたいのは、第一線のプロゲーマーではありませんが、主に格闘ゲームシーンを専門とするフォトグラファーとして活躍する大須晶さん。彼を知っておくと、eスポーツ全体を見通すことができるようになります。


 一般的なカメラマンでは絶対におさえられない瞬間が、ゲーマーにはあります。試合に負けたあと、会場の隅で一人俯いていたり、さっきまでバチバチに戦っていた二人がふと笑いあっていたり、そういう瞬間はゲーマーじゃないと撮れない。そういうエモーショナルな一瞬を捉える、戦場カメラマンに近い仕事だと僕は思います。大須さんは長らく、超一流のゲーマーとして活躍されていたので、そうやってプロゲーマーの光と陰を写し出すことができる。大須さんが構えるカメラの前で、気取って腕組みするゲーマーはいません。だから、彼の仕事を追いかけていれば、全国各地のeスポーツシーンでどんなことが起こっているか、深いところまで自然と目に入ってくるようになると思います。


加えて、僕は大須さんをプロゲーマーの走りだと思っていて。今でこそ、プロゲーマーというものに対して制度ができたり、スポンサーが支えたりという環境になりましたが、彼は『バーチャファイター』シリーズのスタープレイヤーで、愛知県の大須を拠点に活動し、結城晶というキャラクターを使っていたことがプレイヤーネームの由来です。地名+キャラクター名が流行っていた時代ですね。


 大須さんは『バーチャファイター4 エボリューション』というゲームの大会で優勝し、“豪傑”という世界に一人だけの称号を勝ち取りました。プレイヤーのチーム化や組手イベントなど、プロゲーマー的な活動が生まれたのはこの『バーチャファイター』というタイトルからで、大須さんはまさにその中心にいたんです。『バーチャファイター』で晶を使うというのは、『ストリートファイター』でリュウを使うようなイメージで、正面から正攻法でぶつかっていく、というスタイルが一般的。しかし彼は、トリッキーな戦い方を率先して取り入れていて、他の晶使いとは一線を画す華のあるプレイに、当時から僕は夢中になっていました。


 そんな大須さんが格ゲーシーンを写真として記録に残すことで、過去と現在、そして未来のゲーマーをつなげていく。こういう取材ではなかなか名前が挙がらないと思いますし、“表”にはなかなか出てこない人ですが、ゲーマー同士の飲み会など、少し“裏側”に入ると、絶対に名前が出る人です。


 そして、いま第一線で戦っているわけではないけれど、格ゲーをやらせたら絶対に強い、というおじさんプレイヤーを集めた「おじリーグ」という企画でも大活躍中で、プレイヤーとしてもファンを楽しませ続けています。繰り返しますが、eスポーツを追いかけたい人は、大須さんのツイッターをフォローしておくと、自然と知識が入ってきますし、楽しみがひとつ増えるのでおすすめです。


 最近は『ハメじゅん』を通して『鉄拳』勢の底の知れない面白さにハマっているし、『ストV』以外のプレイヤーにも、そして日本だけでなく海外にも、大好きなプレイヤーはたくさんいます。また別の機会に、じっくり語らせてください。