2020年02月28日 13:22 弁護士ドットコム
日弁連は2月26日、法務大臣、厚生労働大臣、および出入国在留管理庁長官に対して、技能実習生の在留資格の変更について速やかに判断するとともに、その判断がでるまでの期間の就労を認めるなど生存権を侵害しないための措置をとるよう勧告したことを明らかにした。勧告書は、各大臣宛ては2月25日付、長官宛ては2月26日付。
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2016年3月、技能実習生として来日したベトナム人男性の支援者が申立人となり、在留資格の変更申請の許否の判断を速やかに行わなかったことは人権侵害であるとして、人権救済申立てをしていた。
松本隆行弁護士(日弁連・人権擁護委員会委員長)らによると、このベトナム人男性は溶接の仕事を希望していたが、入国管理局に提出された履歴書には職歴として「鉄筋施工職」との記載があったという。
履歴書には、ベトナム人男性の署名はあったものの、母国語による翻訳がなく、本人は溶接の技能実習を行うものと認識して来日。ところが、実習先の会社では希望していた溶接業務ができず、金属の運搬業務などをしていたという。
実習実施機関で想定外の業務を強いられたことから、技能実習のやり直しを求め、在留資格の変更申請を行ったという。
ところが、変更が許可されるまで約11カ月かかったという。その間、就労が認められない在留資格しか受けられなかったため、新たな実習先から採用内定が出ても就労できず、生活に困窮していたという。最終的には在留資格の変更が認められた。
日弁連は、引き続き正規に在留が継続できたとしても、許可申請の審査などが長期化して就労が認められないままだと、結果的に帰国を余儀なくされる恐れがあると指摘。実質的には移籍の機会が保障されていないことになるという。
そもそもこの男性のケースだと、審査に必要な期間は2週間~1カ月(在留資格変更許可申請の標準処理期間)で十分であるところ、著しく遅延し違法であるとも非難した。
審査期間中に生活費確保のための就労許可を与えなかったことも違法であり、技能実習生の生存権を侵害していることから、今後同様の人権侵害が生じないよう、必要な措置を講じるよう求めた。