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新型コロナウイルスが中国やイタリアなど衣服の製造拠点を直撃、国内ブランドへの影響は?

2020年02月27日 23:02  Fashionsnap.com

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イメージ Image by: FASHIONSNAP.COM
新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、国内ブランドの生産体制にも影響が出始めている。一部企業では今後について納期の遅れによる出荷の後ろ倒しを予測するほか、現在商談が進められている秋物の受注減少を懸念するブランドもあり、感染症の広がりが各所で影を落としている。国内企業やブランドに現在までの影響を聞いた。

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 各社店頭では春物の展開が始まる時期だが、中国を含む海外に生産工場を持つ「ニコアンド(niko and ...)」や「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」を抱えるアダストリア(ADASTRIA)は影響について「(春物は)6割近くは予定通り入荷し、残りは1~3週間の幅で遅れが生じている」と回答。夏物は「中国の工場もほぼ全社稼働し始めているので、問題なく生産・入荷する予定」というが、夏以降の生産に関しては、「中国の動向を注視しながら状況次第では生産国の変更も視野に入れながら対処する」と事態の長期化も見据えている。
 「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS、以下 UA)」では「3月の商品の一部から納期遅れが出始め、ゴールデンウィーク前あたりからもう少し影響が広がるだろう」と見込んでおり、「(UA単体で)最大、全商品の25%程度に納期の影響が出る可能性が考えられる」と予測を立てている。生産地の変更も一部検討し、現在工場の空き状況などを確認中だという。
 また、百貨店やセレクトショップなどで取り扱われている小~中規模の国内ブランドは国内生産の比率が高いため、春物の出荷スケジュールには現状ではほぼ影響がないとしながらも、中には生産の集中により「国内サプライヤーからの納期の遅れが徐々に増えてきている」と答えるブランドもあった。
 開催中のパリのファッションウィークに参加する国内ブランドの担当者は「各国からのバイヤーの欠席が目立ち、オーダーの減少も避けられない状況にあり、対策を検討している」と話す。現在までに日本国内の工場は通常通り操業しているが、事態収束の目処が立たないことから今後の先行きに不安の声も上がっている。
 新型コロナウイルスは中国のほかイタリアでも感染が急増。先週まで行われたミラノファッションウィークで無観客でのコレクション発表に踏み切った「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」では、現状を鑑みてミラノが位置するロンバルディア州を含む北イタリアにあるオフィスと工場を一時的に閉鎖するなど対策を講じた。
 ジェトロのビジネス短信によるとイタリア・ファッション会議所が発表した繊維、皮革、皮革製品、アパレル、靴の2018年の総売上高は約666億ユーロ(約8兆80億円)にのぼり、うち国外での売上げは約8割を占めるという。イタリアで素材調達・製造を行う企業やブランドは日本を含め世界的にも多いため、工場の操業停止などが長期にわたって続けばイタリア国内の経済的な損失のみならず、取引先など影響は広範囲に及びそうだ。
 国内のアパレル小売業は、昨年から続く暖冬や増税による買い控えで軒並み秋冬物の売り上げが落ち込んだ。各社春夏シーズンでの挽回を図っていたが、今回の感染症拡大がさらなる追い打ちをかける形となっている。感染症の余波がどの程度の規模と期間で広がっていくか見通しが不透明な中で、関係者の間でもあらゆる事態を想定した対応が迫られている。