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「別れさせ屋」を利用して離婚を画策する夫…妻が罠にハマったら、どうなる?

2020年02月27日 09:52  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

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妻と離婚するため、「別れさせ屋」の利用を画策しているーー。そんな夫をもつ女性が、「夫は私と離婚し、浮気相手と結婚したいのだと思います。離婚を拒否できますか」と、弁護士ドットコムに質問を寄せました。


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一方が離婚を拒否している時、離婚話はどう進むのでしょうか。



話し合いによる離婚が成立しない場合、長い別居期間を経ることなどで「夫婦関係が破綻している」と裁判所が判断すれば、離婚が認められる場合もあります。その際、もし夫が浮気をしている証拠があれば、慰謝料をもらうことになるでしょう。



気がかりなのは、夫が「別れさせ屋」の活用を検討していること。今回は事前に気が付いたので良かったですが、もしそれに気づかず、工作員と接触してしまった場合、相談者である妻も「浮気」をしたことになるのでしょうか。木村康紀弁護士に聞きました。



●「別れさせ屋」の工作で肉体関係に及んだら「不貞行為」になる?

ーーそもそも「別れさせ工作」は公序良俗には反しないのでしょうか



「『別れさせ屋』は公序良俗に反しないとした裁判例が話題となったことがありました(大阪地判平成30年8月29日)。しかし、この事例は食事に行っただけのものですので、肉体関係に及ぶことまでも含む依頼であった場合には公序良俗に反すると判断される余地は依然あります」



ーー「別れさせ屋」の工作に騙されて、食事をしたり、肉体関係に及んだりした場合は「不貞行為」となるのでしょうか



「『不貞行為』とは、『配偶者のある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の異性と性的関係をもつこと』(最判昭和48年11月15日)とされています。



一般的には、食事をしたのみでは『不貞行為』にあたりません。しかし、肉体関係に及んだ場合、たとえば相談者が工作員と肉体関係に及んだ場合は、そこに至る経緯を夫が作ったのだとしても、『不貞行為』に該当するとされるのが原則です。



ただし、『別れさせ屋』への工作の依頼が肉体関係に及ぶことを認めるものであった場合は、不貞行為にならないと判断されるか、または裁判所の裁量でそれを理由とした離婚を認めてもらえない(民法770条2項参照)可能性があります」



ーー肉体関係に及んだとしても、「不貞行為」にあたらない可能性もあるのですね。それは何故でしょうか



「不貞行為が離婚事由とされる根拠は、『夫婦間の貞操義務に違反する行為』という点にあります。



そのため、肉体関係に及ぶことを認めるような依頼内容の場合、依頼した時点で『対象者(今回のケースでは相談者)が第三者と肉体関係に及ぶことを認めていた』とも評価できます。また、対象者(相談者)の貞操義務違反の発生の原因が依頼者(今回のケースでは相談者の夫)自身にあると評価すべき場合もあり得るでしょう」



●妻からの慰謝料請求を認める根拠になりうる?

ーーもし、夫が「別れさせ屋」を利用して妻に不貞行為をさせようとしていた場合、そのことは離婚訴訟において、何らかの影響を与える可能性はあるでしょうか



「はい。先に述べたように、不貞行為が離婚原因となる根拠は『貞操義務に違反する行為』である点にあります。



しかし、そのような工作を依頼すること自体が不誠実な行為であるとされ、『婚姻関係を継続し難い重大な事由』(民法770条1項5号)に該当する可能性があります。



また、そのような行為自体が『不法行為』にあたるとされ、妻から夫に対する慰謝料請求を認める根拠となる可能性もあるでしょう」




【取材協力弁護士】
木村 康紀(きむら・やすのり)弁護士
様々な分野の顧問企業を抱える傍ら、ベンチャー支援にも注力しており、シードラウンドのベンチャー支援も行う。内閣府への3年間の出向経験もある。
事務所名:メリットパートナーズ法律事務所
事務所URL:http://www.meritopartners.jp/