2020年02月26日 18:22 弁護士ドットコム
あしなが育英会とあしなが学生募金事務局は2月26日、都内で記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染や拡散を防ぐため、2020年4月に行う予定だった「あしなが学生募金」の中止が決定したことを明らかにした。中止は今回が初めて。
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あしなが学生募金は、病気、災害、自死(自殺)などで親を亡くした子どもの進学を支えるためのもので、毎年春・秋の各4日間、全国の主要駅前などの街頭で行っている。4月の学生募金は第100回という節目の募金となるため、募金箇所を例年の約1.5倍に拡大し、通常の2倍に当たる奨学生やボランティアが参加する予定だった。
会見に出席したあしなが育英会の玉井義臣会長は「この大切な時期に街頭に立てないというのは、あしなが学生募金にとって大きな痛手。奨学金が不足するおそれがある。今や大学全入時代、進学を希望する学生にはなんとしてでも大学まで行かせてあげたい」と語った。
あしなが学生募金を資金基盤とする「あしなが奨学金」の利用者は、2018年度に返還不要の給付型を新設したことで急増しており、2019年度は、高校、専門学校、大学、大学院を合わせて6551人、奨学金交付総額は48億2000万円になったという。
2020年度の申請者はさらに増える見込みで、利用者は約8000人、交付総額は60億円近くになると予想されており、今回の中止で不足する資金は約40億円と想定されている。
玉井会長は「学生たちによる街頭活動は、単に募金をお願いする場ではない。その場での交流やチラシの配布によって、その後の寄付に繋がることも少なくなく、寄付の減額も含めた資金不足が心配」と話す。
また、「あしなが学生募金をはじめて50年。変わらず続けてきた街頭活動は、春・秋の風物詩として定着した。それがなくなってしまい、あしなが学生募金のことをそのまま忘れられてしまうのでは、という思いもある」と継続してきた活動への不安をにじませた。
政府が、大規模なスポーツや文化イベントなどを今後2週間程度、中止か延期または規模を縮小するよう要請する考えを示すなど、新型コロナウイルスの脅威は広がる一方だ。あしなが学生募金の中止も、その流れに沿った形だ。
会見したあしなが学生募金事務局で事務局長をつとめる岡本蓮さん(20、大手前大学2年)は「中止は昨日(2月25日)決めた」と話す。
「街頭で活動することの危険性を考えたとき、どんな人が通るのかがわからないというのはリスクが高い。活動する学生の安全を一番に考えて決定した」
岡本さんは、小学5年生のときに父親を心臓病で突然なくし、父親の死と向き合えず、しばらくの間ふさぎこんで過ごしていたが、高校生のときに、母親があしなが奨学金の存在を教えてくれたという。
「奨学金を利用するようになり、あしなが育英会のプログラムを通じて、自分と同じような遺児の方と出会い、仲間がいることに気づくことができた。そして、自分たちの奨学金のためにお金を集めている人がいることも知り、自分も何かやらないといけないと感じて活動をはじめ、今この場にいる。
あしなが学生募金は、(自分より若い)子どもたちが経済的な理由で進学を諦めないようにするための活動であるとともに、自分の想いを一番伝えられる機会。その機会を失うということは、本当にくやしい気持ちでいっぱいだ」
4月のあしなが学生募金が中止になるとはいえ、奨学金の利用を希望する子どもたちのための活動をやめるわけではない。
中止決定直後のため、今後の活動はこれから具体的に検討するということだが、岡本さんは「SNS等の媒体を用いて、様々な人へ奨学金の存在や遺児の現状というものを広く伝えて、寄付につなげていきたいと考えている」と話した。
一般財団法人あしなが育英会は、下記口座で寄付を受け付けている。また、あしなが育英会ホームページでも寄付できる。寄付の問い合わせは0120-916-602。
あしながさん奨学金支援口座番号 郵便振替:00180 - 0 - 15595 加入者名:あしなが育英会あしながさん奨学金係