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22/7 帆風千春&西條和&海乃るりが語る、念願のアニメ化やメンバー卒業を通して再発見したグループの強み

2020年02月26日 17:42  リアルサウンド

リアルサウンド

22/7(海乃るり、西條 和、帆風千春)

 デジタル声優アイドルグループ・22/7(ナナブンノニジュウニ、ナナニジ)が5thシングル『ムズイ』をリリースした。今年1月からスタートしたTVアニメ『22/7』のオープニングテーマである表題曲「ムズイ」にはキャラクター全員の台詞パートも織り込まれ、これまでも22/7が表現してきた生きていくことへの葛藤を、さらに突き詰めた作品に仕上がっている。


参考:22/7(ナナニジ)結成3周年で迎えた大きな節目 花川芽衣卒業と河瀬詩加入を経て紡ぐ新たな始まり


 またTVアニメが放送を開始したことで、アイドルグループとしての活動と、それぞれが声優として担当するキャラクターたちが物語をつむぐアニメーションとの、二つの活動がようやく足並みを揃えたことになる。


 22/7というプロジェクトがまさに完成形を見せ始めた現在、メンバーたちは何を思うのか。今回、リアルサウンドでは22/7の海乃るり、西條和、帆風千春の3人に話を聞き、『22/7』主題歌となった新シングルの手応えやそれぞれのキャラクターソングへの思い、そしてアイドル活動とアニメーションとが重なり合う22/7というグループの醍醐味について語ってもらった。(香月孝史)【最終ページに読者プレゼントあり】


■「いい意味でアイドルアニメっぽくない」(海乃)


ーー1月からTVアニメ『22/7』の放送が始まりました。グループ結成から3年を経てアニメがスタートした今の気持ちを聞かせてください。


帆風千春(以下、帆風):毎週、リアルタイムでかかさず放送を観ているんですけど、いつも見ていた時間帯の番組の並びに『22/7』があって、流れるCMも『22/7』三昧というのが感動です。本当に待ち望んでいたことなので、シンプルな言葉ですけれど嬉しいなっていう気持ちが一番ですね。


西條和(以下、西條):TVアニメというのは私たちにとって大きな目標だったので、それがついに実現したんだと思うとすごく緊張します。個人的には、滝川みうちゃんの役を演じさせていただいてるんですけど、私はアニメっぽい可愛い声ではないので、みんなの邪魔をしていないか不安です(笑)。


海乃るり(以下、海乃):私も不安はあったんですけども、声優さんやアニメ大好きっ子だったので、始まってみたら嬉しい気持ちでいっぱいです。オープニングでスタッフの方々の名前が表示されるのを見るたび、こんなにもたくさんの方が私たちに関わってくださってるんだなって、毎回驚くんです。私たちだけではなく、本当にいろんな方々の気持ちを背負っているプロジェクト。その中心にいさせていただいて、本当に感謝の気持ちです。


ーーそのオープニングテーマが表題曲になった5thシングル『ムズイ』が、2月26日にリリースとなりました。「ムズイ」という曲の印象はいかがですか?


帆風:これまでのナナニジの楽曲は、なかなか人に言えない気持ちを歌詞にすることで、心の中で同じことを考えている方々に寄り添えるような楽曲になっていたんじゃないかなと思うんですが、今回はそのナナニジらしさを受け継ぎつつさらにその奥深くに行ったような印象です。


ーーある種のシリアスさは、22/7楽曲の特徴のひとつでもありますね。


帆風:アイドルアニメのオープニングというと、元気な曲がイメージとして思い浮かぶかもしれないんですけど、『22/7』はわりと設定自体も変わっていますよね。「壁」という謎の存在が指令を出していたり、メンバーたちもある日突然集められたり。アイドルアニメとしてちょっと変わった入り口であることを、「ムズイ」という楽曲が表しているようですし、新しい感覚で観ていただけるきっかけになるんじゃないかと思います。


西條:「ムズイ」は、アイドルアニメのオープニングとしては珍しい感じだよねと言われることが多いんですけど、正直、私はあまりアニメを観てこなかった人間なので、個人的にはけっこうしっくりきているというか。22/7は今までも、生きる意味や自分の存在について歌った曲が多いので、私たちらしい曲になってるんじゃないかなと思いました。


海乃:最初に歌詞を見た時の率直な印象は、「(テーマが)お、重い……」だったんですけど(笑)。ただそれも、二人が言っていたようにナナニジらしさだと思いますし。オープニングのアニメーションでも、タイトルロゴが平行に倒れたあとシュンってこちらに迫ってくるところなど、いい意味でアイドルアニメっぽくないなと思って。楽曲にしてもアニメーションにしても、その「いい意味でのアイドルアニメっぽくなさ」が個人的にすごく嬉しいですね。


帆風:今回聴いてほしいポイントとして、「ムズイ」は表題曲として初めて一人一人に台詞のパートがあって、そこにそれぞれの気持ちが込められていると思うんです。アニメの主題歌になるので、そうやって自分たちのキャラクターを背負っているのは、今までとちょっと違うところかなと。


海乃:私自身、楽曲の中で台詞をいただいたのが初めてですし、アニメのオープニングテーマなので自分が演じる戸田ジュンちゃん役として台詞を言ったり歌ったりできるのが嬉しいですね。


ーーこれまでのシングルリリースと違い、『ムズイ』はシングルとアニメという2つの制作が並行しているわけですよね。


海乃:レコーディングする際も、「これがオープニングテーマになるんだな」と思いながらやっていましたし、振り入れのときにも、「もしアニメが多くの人たちに広まっていったら、こういう会場でライブできたりするのかな」とか、皆で和気あいあいと話していました(笑)。


■「ジュンちゃんの何の嫌味もないあの言葉に私自身も救われた」(西條)


ーーアニメが始まったことで、メンバーそれぞれの個性や関係性も具体的に見えてきました。あらためて、それぞれが担当するキャラクターについて教えて下さい。


帆風:私が演じる佐藤麗華ちゃんは、「清く正しく生きる優等生」という言葉が本当にピッタリ合う女の子。ライブの最中に機材トラブルで音が止まってしまってメンバーが慌てているところで、すぐに「みんな、落ち着いて」と声をかけたり(第3話)、周りを見る力がある子なのかなというところも見えてきました。でもたまにポンコツな部分が見えてしまうのが、可愛らしいところですね。第5話、河野都ちゃんがメインになる回では具体的に麗華ちゃんのポンコツが描かれているので、そんなギャップも楽しんでもらえるキャラクターだと思います。


海乃:私の演じる戸田ジュンちゃんは、何事も楽しむ性格ですね。第1話で初めて登場するシーンでは、動物園のゴリラの檻の前で「ゴリラに食べられちゃう」ってとても怖がってはいるんですけど、でも状況を最大限楽しんでいるようにも見えますし。精一杯、生きているなって思います。あと、発想も味覚もすごく子どもっぽいですよね。何事も全力で楽しんでいるのも、子どもっぽいところなのかも。


西條:滝川みうちゃんは、基本的には引っ込み思案で周りを怖がっているところがあるんですけど、ここぞという時の行動力がある子だと思います。そういう行動力が自分にはないので、すごく格好いいなって思いながらやっています。


ーー物語のなかで実際にキャラクターが動き出すことで以前とは印象が変わったり、あるいは皆さんがリアルメンバーとして活動するうえで影響されたりするのでしょうか?


西條:自分にはセンターなんか無理だと思ってみうちゃんが練習に行けなくなったところにメンバーみんなが来てくれた場面(第2話)、ジュンちゃんが「一番前なんて楽しそうじゃん!」って言ってくれたのが、個人的にすごい心が楽になったというか。実際に私も22/7の活動の中で「ここにいていいのかな」って思う時があるですけど、ジュンちゃんの何の嫌味もないあの言葉に、私自身も救われたなって思います。そういう言葉を嫌味なく言える人ってなかなかいないと思うので。


海乃:ジュンちゃんには、「人生は遊園地。来てしまったら楽しまなければ損だ」という座右の銘があるんですけど、私もつまずいたことなどがあると本当にすごく助けてもらいますね、その言葉に。


ーー帆風さん演じる佐藤麗華は、帆風さんと同じくグループのリーダーでもあります。


帆風:麗華ちゃんはリーダーもやっているし優等生と呼ばれているから、何でも完璧にこしちゃうのかなと初めは思っていたんですけど、実はリーダーとしての自分と一人の女の子としての自分が葛藤している姿が描かれていて。麗華ちゃんにも、どうしても譲れないものや乗り越えられないと感じる壁がある。そんな麗華ちゃんの姿を見ると親近感を覚えますし、そこに向き合って殻を破っていく麗華ちゃんを見ると、自分もちゃんと向き合わなきゃいけないなって思えるきっかけにはなりますね。


ーーアニメ『22/7』は、リアルメンバーとしての皆さんの活動とリンクするところもあり、グループのここまでの歩みをもう一度なぞっていくような瞬間もありますよね。


西條:それこそ自分が過去に言った言葉が、そのまま台詞になっていたこともありましたね。それから、第1話でまだ22/7に入る前のみうちゃんが携帯を見ながら泣いているシーンがありますよね。私も22/7に入る前、どうやって生きていったらいいかわからなくなっていた時があって。そういうことを思い出しながら声を録っていたら、終わったあとに「本当に苦しそうだったね」って声をかけられました。


海乃:戸田ジュンちゃんがメインになる第7話では、ジュンちゃんが泣くシーンもあるんですけど、初めは感情移入できるかなと不安だったんです。でも、やってみたら号泣(笑)。台詞を録らなくちゃいけないから、涙も流したまま声には出さないようにしてこらえてたんですけど、カットがかかった瞬間、「うわー!」って泣いてしまいました。そうやって感情移入することで、この子はこんな気持ちを抱えているんだな、でも今頑張ってるんだなと、ジュンちゃんを深く知ることができましたね。


帆風:お披露目ライブに向けて、ゼーハー言いながらレッスンしているシーンを見ると、そういえば私たちも初めて振付していただいて踊ったときは、一曲だけで精一杯だったなということも思い出しました。一生懸命に一つの楽曲に向かう姿勢も懐かしくて、今だってもっと一生懸命になれるはずだなと思います。


■「殻を破れたらいいなっていう気持ちを込めて歌ってる」(帆風)


ーー各メンバーのキャラクターソングも誕生し、アニメでもエンディングテーマとして流れています。


海乃:私はキャラソンを聴いて声優さんになりたいと思ったくらい、キャラソンが大好きなんです。なので、キャラクターソングを歌うのがずっと夢だったんですよ。その夢が叶って本当に嬉しいです。


ーー海乃さん演じる戸田ジュンのキャラクターソング「人生はワルツ」という曲は、どのように捉えていますか?


海乃:ジュンちゃんの生き方そのものだなって思います。彼女の座右の銘が盛り込まれていて、決して暗くならずに前向きに歌っているのも、とても彼女らしいですし。アニメの内容ともつながっているし、ジュンちゃんの座右の銘も生き方も明るさも全部反映されていて、この曲をいただけて本当にありがたいです。


西條:私は逆に、メンバーのみんなが「いつかキャラソン歌えたらいいね」と言っているのをほや~っと聞きながら、(なんだろう、それ)って思っていたくらい、初めはキャラソンのことをよく知らなくて……。なので、まさかそれを自分がやることになるとは思っていなかったです。


ーー西條さん演じる滝川みうの「One of them」は第3話、メンバーのキャラソンとしては最初に登場します。


西條:エンディングテーマで流れたんだって思うと、今もちょっと恥ずかしいんですけど(笑)。でも、どのキャラクターもそうなんですけど、みうちゃんというキャラに沿った歌詞を書いてくださっていて。みうちゃんの家と同じように「団地」というキーワードも出てきますし、内容も本当に22/7に入る前のみうちゃんだなという感じがしますね。


ーー佐藤麗華のキャラソンは、優等生キャラを逆手に取るような曲「優等生じゃつまらない」です。


帆風:「えっ、あんなにずっと優等生って言ってたのに」と思って(笑)、驚きました。麗華ちゃんのお当番回になる第6話では、リーダーに指名された麗華ちゃんが目の前の問題に直面します。さっきも少し言いましたが、リーダーとしてはこうあるべき、でも佐藤麗華という一人の女の子としてはそうしたくない、という葛藤が描かれている。その回のエンディングテーマになるこの楽曲にも殻を破りたい、この枠を飛び越えたいという気持ちが感じられて。私自身の中にも同じように、なかなか一歩を踏み出せない部分があるので。


ーーその踏み出せなさはどのようなところで感じているものですか?


帆風:声優の現場で役をいただいて演じるときなどに、ただその役をやるだけじゃなくて何かプラスアルファが要る。それは私だけじゃなく、みんながいろいろな場で言われてると思うんですけど。なかなかそのプラスアルファに至るまでの発想力や実力が追いつかないのが、自分の中でもすごくもどかしくてもやもやしてて。それは現場に出させていただいているからこそぶつかる問題なんですけどね。物語の中でもキャラソンの中でも、麗華ちゃんが力強く変わろうとしているのを見て、そこに追いつきたいな、殻を破れたらいいなっていう気持ちを込めながら歌っています。


■(花川芽衣に)「頼っていたんだなと実感しています」(西條)


ーー『ムズイ』初回仕様限定盤 Type-B付属のDVDには、昨年12月24日の『Birthday Event 2019』の模様も収録されています。結成3周年の区切りでもあり、花川芽衣さんのラストライブや新メンバー河瀬詩さんへの引き継ぎなど、いくつもの意味があるイベントでした。振り返ってどんな日でしたか?


帆風:いやあ、いろんなことが……。


海乃:いろんなことがありすぎて。


ーー当初、花川さんはご挨拶のみの参加とされていました。


海乃:そうです、最後の方だけという感じでした。でも芽衣ちゃんが私も(ライブ本編に)出るねって言ってくれて嬉しかったですし、最後だなと噛み締めながら力の入ったパフォーマンスをしているので、『ムズイ』付属のDVDもぜひ見ていただきたいです。結果的には、芽衣ちゃんと詩ちゃんの二人が一緒に出ることによって、ファンの方々もわたしたちも、ちゃんと区切りをつけられたのかなって思いますし。


ーー西條さんはあの日をどう振り返りますか?


西條:最後に一緒にパフォーマンスしたいとずっと思っていたので、芽衣ちゃんがライブに出ると言ってくれたときはすごい嬉しかったです。芽衣ちゃんの卒業に関してはメンバー内でもたくさん話して、芽衣ちゃんを応援しようと決まったので心残りとかはなくて。でも、個人的には芽衣ちゃんと歌割りが一緒になったり、ポジションが隣になったりすることが多くて、デビューのときからずっと頼っていたところがあったんです。12月24日のイベントは芽衣ちゃんもすごく笑顔だったし、「卒業おめでとう」という気持ちだったんですけど、いなくなって1カ月くらい活動してみるとあらためて、とても頼っていたんだなと実感しています。


ーーその『Birthday Event 2019』は朗読から始まってライブへとつながってゆく、22/7の特徴が強く現れた構成で、結成3年を経たこのグループの強みが見えるイベントでした。


帆風:それこそ芽衣ちゃんも出てくれたし、あの日は本当に特別でしたけど、22/7らしいイベントだったなと思います。22/7はデジタル声優アイドルグループなので、前半の朗読劇は声優としての私たちの一面を見ていただけたし、後半のライブパートでは、毎月の定期公演などでメンバーと遠慮なく言い合いながら培ってきたパフォーマンスを楽しんでいただけた。声優という観点からも、アイドルという観点からも楽しんでいただけるというのは、22/7の強みかなと思います。


■「結果としてアニメ化までの3年があってよかった」(海乃)


ーー22/7の強みを西條さん、海乃さんはどう考えますか?


西條:私たちはずっと、担当するアニメのキャラクターを演じるために演技レッスンをしていたので、グループとして楽曲を披露する上でも歌詞を読み取って自分で考えながら、「じゃあ私はこういうパフォーマンスをしよう」と一人一人が考えている。これは、今までのレッスンが活きているのかなと思います。ニコニコ笑って踊れる曲は少ないんですけど(笑)。


海乃:キャラクターとのリンクの点で言うと、今までバラエティ番組をずっとやらせていただいてきて、その中でキャラとの心の重なり方が強くなってきていると思います。私たち自身とキャラクターが似ているということではないんですけど、「このキャラならこんなことを言うかな」とわかってきているし、それを実際に試してみたらそのまま採用されることも結構多いんです。


ーーTVアニメは今年からですが、キャラクターとの付き合いはかなり長いわけですよね。


海乃:キャラクターを最初に生み出してくださった方々を別とすれば、そのキャラクターのことを一番か二番くらいにわかっている自信はありますね。あらためてアニメまで3年と考えると長いなと思うんですけど、だからこそキャラを理解できた部分もあるし、演技やダンスの面も含めて、結果としてこの3年があってよかったなと思います。キャラクターのこともキャストのことも知っていただけたら、二倍楽しめるグループなんじゃないかなと思います。


ーーついにTVアニメとリアルメンバーとが同時に動いていくことになりました。この先の目標を教えて下さい。


帆風:TVアニメも放送開始して、春には22/7のリズムゲームアプリの配信も始まります。個人的にも、あまり連絡をとってなかった友達から久しぶりに「アニメ見たよ」と連絡が来たりもして、「あ、この子も見てくれてるんだ」みたいな驚きもあるくらい(笑)、本格的に22/7が広がっていってるのを感じます。過去にもキャラクターのVRライブをやらせていただいたことがあるんですけど、これからまたキャラクターたちだけでライブを開催してもたくさんのお客さんが来てくれるくらいに、キャラクターたちが愛されていくといいなって思います。


海乃:いろんな方が出演されるアニメフェスなどに今後出ていけたらいいなと思います。私自身、そういう場所で見応えのあるパフォーマンスをされる方々が大好きだったんです。ナナニジもこれまで3年間やってきたことを活かして、見応えあるよね、かっこいいよねと言っていただけるようなグループになっていきたいです。


西條:私たちは結成当初から、アニメを好きな方とアイドルを好きな方、どちらの方々にも好きになっていただきたいとずっと考えていました。去年くらいまでは主に私たちリアルメンバーが前に出る活動が多かったんですけど、これからアニメを好きな方にも少しずつ知っていただけたらいいなと思います。私たちを通じて、アニメをあまり見たことがないけどちょっと見てみようかなとか、アイドルのライブに行ったことがないけど行ってみようかなっていう人が増えたらいいなと思っています。(香月孝史)