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新型コロナ対策で「お札」を煮沸消毒、動画拡散…財務省の見解は?

2020年02月22日 09:02  弁護士ドットコム

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新型コロナウイルスによる新型肺炎の広がりが国内外で不安視される中、インターネットには驚きの動画がアップされている。


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「中国ではコロナウイルス対策で現金を煮沸消毒している人もいるようです」という説明とともにツイッターに投稿された動画を開くと、煮えたぎったお湯を張った鍋の中で、人民元の紙幣がグツグツと煮込まれていた。



多くの人の手から手に渡る紙幣を消毒しているのだろうか。紙幣の真贋や、撮影地が中国であるのか不明だ。しかし、日本で同様の行為をした場合、何か問題はあるのだろうか。



●日銀は

発券銀行である日銀では日頃から「お札はみんなが使うものなので、落書きなどはやめて丁寧に扱ってください」と発信している。



紙幣を煮る行為について、日銀の担当者は「一概にハッキリ申し上げかねますが、熱を加えたり、冷やしたり、煮たりしたことがない」と首をひねる。



「硬貨は使っている金属に価値があるので、鋳(い)つぶして転用したり、損傷したりする行為は明確に禁じられていますが(貨幣損傷等取締法)、紙幣を同じように取り締まる法律はありません。お札を故意に破いても、落書きをしても、煮ても罰せられるのか日銀では判断しがたいです。判断は財務省にお願いします」



●法的な解釈の問題は財務省に委ねられた

バトンタッチされた財務省は、どう答えるのだろうか。



財務省の担当者は「お札を損傷させることに関する直接的な法律はありません。ハッキリ言えないが、煮るのは違法行為とは言えないものだと思います」と回答した。



ただし、「通貨当局としてはお札を大切に使ってほしい。煮ることはオススメしません」とけん制することも忘れなかった。



「煮てしまって紙幣が変形した場合は、レジやATMなどの機械で使えなくなるおそれがあります。また、模様が消えて日本銀行券だとわからなくなれば、紙幣としての価値がなくなります」(先の財務省担当者)



汚れたり破れたりした紙幣は日銀で引き換えができるが、それにも基準はある。持ち込んだ紙幣について、日銀から「煮ましたか?」などの事情を問われることはない。



しかし、その真贋や破損した面積の鑑定がなされて、厳格な引換基準に則って交換可能か決定される。万が一交換できなくなれば、煮た人が損をするだけのこと。法律上、罪に問われることはなさそうだが、煮るのはやめたほうがいいだろう。