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新型コロナで宿泊キャンセル続出、宿は客に請求できるか? 中国人の宿泊拒否は可能?

2020年02月21日 10:42  弁護士ドットコム

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新型コロナウイルスの影響で、全国各地の宿泊施設で、宿泊キャンセルの動きが広がっている。


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2月19日の日本経済新聞電子版によると、中国人に人気の富士山観光が盛んな山梨県では、少なくとも計約3万1000人の予約キャンセルが発生している。中国人のキャンセルだけでなく、日本人観光客が旅行を取りやめる動きもあり、地元では風評被害を懸念しているという。



別の県では、「中国人は予約はあるのか」と問い合わせをして、宿泊キャンセルをする日本人がいたという情報もある。このような場合、キャンセル料はどうなるのか。そもそも、宿泊施設が中国人の宿泊拒否をすることは可能なのか。金子博人弁護士に聞いた。



●中国人だからという理由で宿泊拒否はできない

「旅館やホテルには、旅館業法5条で、一定の場合以外は、宿泊拒絶ができないことになっています。



拒絶できる理由としては、疾患に関しては、『伝染性の疾患にかかっていると、明らかに認められる時』とあります。『明らかに認めることができない』のであれば、宿泊は拒絶できません。



ですから、中国人だからという理由で、宿泊は、拒絶できないのは当然ですし、咳をしている程度でも、拒絶できないでしょう。病院に行くことを薦めるくらいです」



●キャンセル料を請求できる場合、できない場合

では、日本人客が、「中国人が泊まっている」「泊まる可能性がある」と言うことで、キャンセルした時、キャンセル料はどうなるのか。



「法的には保護する理由はなく、ホテルは通常のキャンセル料を請求できます。



むしろ問題は、キャンセル料を支払う契約が成立しているかです。ネットを経由している場合、サイトにアクセスするときに、キャンセル約款をみて予約しているといえるのが普通です。しかし、電話だと、日にちと人数と到着時間程度しか決めておらず、キャンセル料に関する契約が不成立と言うことが普通でしょう。



契約が成立していたとしても、消費者契約法9条により、『平均的損害』を超える部分は無効となるので、損害の請求額は限られます」



約款がない場合はどうなるのか。



「キャンセルに関して約款がないと、民法の一般原則に従って、債務不履行による損害賠償となりますが、この場合は、実損を証明しなければならないのでやっかいです。金額も、無駄になった食材代金など、限られたものとなります」



●新型インフルの際に、団体宿泊キャンセルの裁判例も

感染症とキャンセルをめぐって、裁判例はないのか。



「新型インフルエンザに関しては、東京地裁平成23年11月17日判決があります。50名の大学ラグビー部の合宿を予約しておいたところ、一部部員にインフルエンザが発生したので、前日にキャンセルしたというケースです。キャンセル約款がありましたが、『平均的損害』を超えたか否かの訴訟となり、判決では一部の損害が削られました。



これは、団体予約契約なので、訴訟となりましたが、少人数の予約の時は、キャンセル料を支払う契約が成立していたとしても、キャンセル料を請求するのは面倒だし、気が引けるようで、結局キャンセル料を請求しないで終わるケースも多いようです。ましてや、キャンセルに関しての約款がないなど、契約が成立していない場合、最初から諦めて請求しないケースが大部分のようです」




【取材協力弁護士】
金子 博人(かねこ・ひろひと)弁護士
「金子博人法律事務所」代表弁護士。国際旅行法学会の会員として、国内、国外の旅行法、ホテル法、航空法、クルージング法関係の法律実務を広く手がけている。国際旅行法学会IFTTA理事。日本空法学会会員。
事務所名:金子博人法律事務所
事務所URL:http://www.kaneko-law-office.jp/