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THE YELLOW MONKEY、30周年ドームツアーで目撃した奇跡の瞬間

2020年02月20日 17:32  リアルサウンド

リアルサウンド

THE YELLOW MONKEY(メイン写真=横山マサト)

 THE YELLOW MONKEYが2020年2月11日、京セラドーム大阪にて『THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary DOME TOUR』大阪公演を行った。結成30周年を迎えるバンドが、このタイミングで初のドームツアーを開催。解散から再集結を経たバンドは、直後の“バブル“が終われば、少しずつ人気は安定していくことも少なくないが、THE YELLOW MONKEYに限ってはまったくそういうことがない。再集結後にリリースされた19年ぶりのアルバム『9999』の出来も素晴らしかったし、つくづく末恐ろしいバンドだなあ、と思う。


参考:THE YELLOW MONKEYのライブはなぜ魅力的なのか 現場スタッフが振り返る、再集結から新ドームツアーに至る激動の日々


 この日のライブでは開演の少し前から、龍谷大学吹奏楽部の生演奏が披露された。「MY WAY」と「見てないようで見てる」が披露されて、会場はどこか温かい空気に包まれる。と、すぐにそのまま会場は暗転。やがて、メインのステージにTHE YELLOW MONKEYのメンバーが現れて、間髪入れずにそのまま楽曲の披露へ。冒頭で披露された曲は、昨年12月28日に開催されたナゴヤドーム公演とは異なるものだった。この日はメジャーデビュー曲である「Romantist Taste」からライブが始まったのだ。早速この歌で、会場のボルテージは青天井となる。そこから「楽園」「ROCK STAR」「Balloon Balloon」などキャリアを横断するように様々な時代の楽曲が披露されていく。30周年というタイミングにぴったりな集大成的なセットリストだ。


 それにしても、こうやって連続してTHE YELLOW MONKEYの楽曲を聴いていると、このバンドの“面白さ”を痛感する。THE YELLOW MONKEYという名前をバンド名にしていることもあり、元々は洋楽ロックへの憧憬と、日本人がロックをするというある種のコンプレックスが内在しているバンドだ。そのため、楽曲には常に自分たちの好きな洋楽ロックとの折り合いの付け方みたいなものがにじみ出ている。そして、それは時代ごとに変わっているように感じるのだ。


 初期の楽曲は、素直に自分たちが憧れている洋楽ロックをストレートに音にした爽快さを覚える。しかし、キャリアを積んでいく中で、どのような曲を作れば、よりバンドとしての結果を出すことができるのか、といった苦悩が感じられて、その「揺らぎ」にこそ、THE YELLOW MONKEYらしさが宿っているように感じられて面白いのである。個人的にライブ中にぐっときたのは“生命”について歌う「球根」だった。ボーカルとサウンドの重厚さが壮大なテーマを表現した同曲に説得力をもたらしていた。紆余曲折のキャリアを重ねたTHE YELLOW MONKEYだからこそ為せる技だと思う。


 この日のライブは自身の30周年を振り返る場面がいくつかあり、その中で自分たちの楽曲がたくさんの人に愛されてきたことの感謝を言葉にする場面も多かった。ライブの中盤、活動の総括をするようなMCを挟んだ後に、満を持して披露された「JAM」では、最初のキーボードのイントロの段階で、大きな歓声と拍手が自ずと沸き起こる。楽曲がいかに愛されているかを証明するような象徴的なシーンであった。


 こうやってライブを振り返ると、どこを切り取ってもハイライトになることを実感する。きっと30年のキャリアを歩むバンドだと、どうしても昔のヒット曲ばかりに光が当たりがちだ。しかし、THE YELLOW MONKEYはそういうことがほとんどないのだ。「バラ色の日々」でシンガロングが起こったかと思えば、「ALRIGHT」で割れんばかりの歓声があがる。「SUCK OF LIFE」で会場の空気をがっちり掌握したかと思えば、まだリリースにもなっていない新曲「未来はみないで」では、それ以上に会場の心を掴んでしまう。本当にすごいバンドだと思う。


 そして。


 この日のライブで何よりも感じたことは、THE YELLOW MONKEYというバンドのかっこよさだった。吉井和哉がライブのMCでも触れたように、日本のロックは大きく流行りが変わってきており、ロックバンドのあり方もどんどん変わってきている。そんな中で、THE YELLOW MONKEYは流行りに流されずに、自分たちが信じているロックンロールを貫き通している。それは60年~80年代のロックにルーツがある、という言葉に還元されるのだろうけど、とはいえ彼らの音楽には一切の古さを感じない。そこには、ただかっこよさが宿っているのだ。


 吉井和哉の佇まいを見ていると、「ああ、ロックスターってこういう人のことを言うんだな……」と不思議と納得してしまう。この日のライブで、そのことを強く感じた。過激な煽りや言葉の応酬がなくても、どんとステージに立ち、高らかに自分の歌を歌い上げる。それがそのまま、バンドとしての魅力に直結する。THE YELLOW MONKEYのライブには、そういう奇跡のような瞬間が、常に溢れていた。そして、次に控える東京ドーム公演に足を運ぶ人々も、きっとそれを目撃することになるだろう。(ロッキン・ライフの中の人)