2020年02月20日 11:12 弁護士ドットコム
新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、インターネット上に不確かな情報が出回っている。ツイッターなどSNSでは、デマといえるようなものも混じっており、市民の混乱を広げている。
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たとえば、若者に人気のファッションブランドの原宿店で『新型コロナウイルスの店員がいる』といった不確かな情報も流れたが、同店はツイッターで「そのような事実はない」と否定している。
不安などから、そうしたデマが出回っているのかもしれないが、場合によっては大きな影響を及ぼすこともある。法的には問題ないのだろうか。インターネットの法律にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。
「一般論として、言論は原則として保護されなければならない、とされています。いわゆる『表現の自由』と呼ばれるものです。そのため、仮にデマであっても保護される、というのが原則ではあります。
デマと一言でいっても、単なる冗談のようなものから、深刻な影響を与えるものまで、幅広いものがあります。
たとえば、エイプリルフールに流されるウソも一種のデマと言えますが、これは多くの人が『ネタ』として楽しむことが予定されているでしょう。それを見た人も、一瞬信じるものもあるかもしれませんが、最終的には『ネタ』として見ているわけです。そのため、このようなものは当然許されるということになります。
一方で、いくら『表現の自由』があるといっても、他人に迷惑をかけるようなものは、規制される必要があります。たとえば、他人の名誉を毀損するものや、他人の業務を妨害することになる表現です。
『新型コロナウイルスの店員がいる』といったデマの場合、指定感染症に罹患(りかん)する可能性が高い店に行きたいと思う人は通常いないと思います。このデマによって、店への抗議の電話が殺到したという状況があったり、来店が減っていれば、業務妨害罪が成立することになります。
また、たとえばですが、『新型コロナウイルスは、実は◯◯会社が起こしたバイオテロだ』といった陰謀論が持ち出されたケースであれば、その会社の社会的評価を低下させることになります。この場合、名誉毀損罪が成立することになるでしょう。
人の不安を煽るようなデマは、不安を煽るがゆえに、拡散のスピードが速いと言われています。一人ひとりの冷静な対応が、デマ拡散の抑止になります。冷静な対応をするよう心掛けてほしいと思います」
【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、Twitter、Facebookに対する開示請求でともに日本第1号事案を担当し、2018年3月、Instagramに対する開示請求の日本第1号事案も担当。2020年1月14日には、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第3版(弘文堂)」が出版されている。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp