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『アライブ』が説く、がん治療の複雑さと患者たちの戦い 松下奈緒×木村佳乃の仲は戻るのか?

2020年02月14日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

『アライブ がん専門医のカルテ』(c)フジテレビ

 匠(中村俊介)が亡くなった原因が、自分が手術中にミスをしたことだと心(松下奈緒)にようやく打ち明けた薫(木村佳乃)。しかしそれによって2人の信頼関係は崩れてしまう。心の「消えて」の言葉に従い病院を辞めようと決心する薫だったが、手術を控える患者がいるため認めてもらえずにいた。2月13日に放送されたフジテレビ系列木曜ドラマ『アライブ がん専門医のカルテ』第6話は、心と薫の2人の関係性の変化について以上に、注目すべき題材を扱ったエピソードであったといえよう。


参考:【ほか場面写真多数】木村佳乃に語りかける高畑淳子


 胃がんのステージ3と診断された土方絵麻(清水くるみ)に治療方針を説明する心だったが、絵麻の父・徳介(ベンガル)は抗がん剤治療に著しいまでの拒否反応を示す。そんな中、抗がん剤治療の副反応による脱毛が現れはじめた佐倉(小川沙良)が、病院内で体調を崩して倒れ込んでしまう。そこを偶然通りかかった徳介は、彼女が抗がん剤治療中であることを知り動揺。治療を始めようとしていた絵麻を連れて帰り、科学的根拠に基づく標準療法ではない、民間療法に頼るという選択肢をとるのである。


 今回の劇中の終盤で、悪質な民間療法ビジネスを行なっていた会社の社長が逮捕されるというニュースを見ながら、高坂(高畑淳子)は心にこう呟く。「何で患者がこんなもんに騙されるか不思議でしょ? 治りたいからよ。生きたいからよ。何だっていいからすがりたくなるの」。科学的根拠のない民間療法は、近年とくに問題視されていると見受けられる。劇中に登場したような「がんが治る水」のようなものから、少し前に話題になった「血液クレンジング」や「キャベツ枕」などなど。場合によっては健康を損ねかねないリスキーなものや、法外な値段を請求されるものは、たしかに“患者の弱みにつけ込んだ”悪質なものだと判断しても致し方あるまい。


 しかしその一方で、阿久津(木下ほうか)のセリフにもあるように「すべてを否定できないしするべきではない」というのも納得できるものがある。例えば前述の「キャベツ枕」しかり、昔からよく言われている、風邪を引いた時に首にネギを巻くことや枕元に玉ねぎを置くことなど、科学的に効果が証明されていないもののローリスクであり、かつほとんどプラセボ効果に頼ったものも数多く存在している。それらは少なからず、患者やその家族の不安や心理的な負担を和らげる働きをしていると言ってもいいのではないだろうか。


 劇中で心は、徳介に抗がん剤治療を理解してもらうために結城(清原翔)と共に資料を集め、数年前にアメリカで発表された研究データを教える。がん治療において病院の標準治療を受けた患者の5年生存率が8割であったのに対し、民間療法では5割だったと。この数字を、決して民間療法が致死率を高めるのではなく、あくまでも標準治療のほうが生存率が高いのだと捉え、正しいものから誤ったものまで様々出回る情報の中から、肉体的にも心理的にも経済的にも最も適した治療方法を、可能であれば複数の専門家と一緒に見つけていくことが必要なのだと、改めて考えさせられるばかりだ。 (文=久保田和馬)