2020年02月13日 16:42 弁護士ドットコム
同性婚ができないのは憲法に違反するとして、国を相手取り、同性カップルらが全国で起こしている訴訟が2月14日、提訴から1年を迎える。札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5地裁で訴訟が行われており、原告は13組26人となっている。
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原告の代理人「結婚をすべての人に」東京訴訟弁護団は2月13日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を行い、原告として新たにトランスジェンダーの40代男性(戸籍は女性)と40代女性のカップルの2人が東京地裁で追加提訴することを明らかにした。
性同一性障害特例法により、トランスジェンダーの人は戸籍の性別を変更できるが、性別適合手術を受けることなど厳しい条件がある。男性は「手術を受けていないため、戸籍が変更できませんが、私たちは異性愛カップルです」と訴え、パートナーの女性とともに戸籍の性別にかかわらず結婚できる社会の実現を国に求めていくとした。
男性は、一橋穂さん(仮名)で、都内で会社員として働いている。パートナーの女性、武田八重さん(仮名)もまた都内で公務員として働き、2人は5年以上にわたるパートナーシップを結んできた。
一橋さんは会見で、親の反対にあい、手術を受けられなかったことを明かした。
「健康な体にメスをいれるなんてとんでもないと、親の理解は得られませんでした。20年以上、女子として振る舞い続けてきたため、突然、(性自認が男性であることを)カミングアウトしても、親には受け入れられなかったのでしょう。
将来を描けずに何度も『死んでしまいたい』と思いましたが、なんとか生き延びることができ、パートナーと出会うことができました」
しかし、一橋さんが武田さんと結婚することを告げると、他のきょうだいが結婚した時と同じようには両親は喜んでくれなかったという。
「それでも、両親を責める気にはなれませんでした。両親は男尊女卑の色濃く残る田舎で育ち、多様な性のあり方についての教育は受けていません。ですから、トランスジェンダーである我が子が、戸籍上は同性の女性と結婚することを素直に喜べなくても仕方なかったと思います」
一橋さんは今回、原告となることを決意した理由について、トランスジェンダーの生きづらさを指摘した。「学校に行けず、仕事も不安定な人が少なくない。自分も一歩間違えばそうだったかもしれない姿です。今、本当にたまたま生き延びることができて、たまたま素敵な人と出会うことができましたが、自分にできることがあればと思いました」
弁護団の上杉崇子弁護士によると、戸籍の性別変更に必要な条件である性別適合手術は、身体に重大な影響を及ぼし、健康面に負担をかけるために、手術を望まない人は多いという。
「現行法では法律上異性のカップルの婚姻しか認められていないため、戸籍を変更していないトランスジェンダーが異性のカップルになっても、戸籍上は同性カップルのために、婚姻できない事態が生じます」と指摘。あらためて、同性婚実現を訴訟で訴えていくとした。一橋さんたちの提訴の日程は未定。