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けみおの言葉はなぜ共感を呼ぶ? “SNS疲れ”を吹き飛ばすヒット動画から考察

2020年02月13日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

動画サムネイルより

 スマホやSNSがいつも身近にある私たちは、毎日その便利さを享受している。しかし一方で、ふと常に自分と繋がっているそれに疲れてしまうこともある。「SNS疲れ」といわれるものだ。筆者は現役女子大生で、写真を撮ったりストーリーを上げたり、それにコメントをもらったり、SNSを利用していて楽しい部分は数えきれないほどある。だからこそ、みんなこんなに依存してしまっているけれど、ふと“病む”ときもある。


(参考:けみお(kemio)、伊集院光と“再会” ポジティブ過ぎる思考&リスナーへの配慮で称賛される


 そんな私たちの本音を受け止めるかのように、2月9日、こんな動画が投稿された。若者世代のカリスマであるkemio(けみお)の、「ウチらってタグ付けしないと友達じゃないわけ?」だ。この動画が投稿されたその瞬間からバズを起こし、多くの視聴者の共感を呼んだ理由を考察したい。


・「SNSってダルくね?」
 けみおは動画の冒頭、自身の友達から「私といて楽しくないの?だってストーリー上げてなかったから」と言われて「え、なんで?」と思ったことがあると切り出した。「遊んだことをSNSに上げなかったら、その時間が有意義ではなかったと思うのはなぜ?」と疑問を投げかけ、「ウチらの友情関係ってウチらの中のものじゃなくて、他人に売るもの……バーゲンセールみたいな感じになってるんじゃないかなって」と語る。


 確かに今の若者の友情関係にSNSは必須だといえる。遊んだ日には写真を撮ってSNSでタグ付けして、それが友情の証のようにフォロワーに発信されている。まさにけみおが言う「SNSがウチらの履歴書みたいな存在で、金魚のフンみたいにうちらにつきまとってくる」状態だ。普段私たちはその状態を楽しんでもいる。しかし一方で、けみおが言うように一切が煩わしくなるときもある。


 そんな私たちは、けみおの「ウチらはインターネット上で繰り広げられるパーティの裏側にある世界を忘れがち」とか、「情報が消費されるスピードが速すぎてたまに疲れない?」という身近で飾らない言葉につい深く頷いてしまう。それは、けみおが話す言葉が、うまく言語化できなかった私たちの本音を表に引っ張り出してくれるからだ。


 私たちの日常において、SNSとの付き合い方はある意味、政治や経済よりはるかに身近で危急の課題だといえる。けみおが言う「SNSとの付き合い方って難しいと思う、マジでこれからの人類の課題」というのも、あながち間違いではないように思える。この動画の結論も「特にない」と言うが、当然のように使われるSNSに対して一度距離を取り、生活の中での位置付けを考える時間を作ること自体が重要なのではないか。


・ポップで大胆な言葉選びが生むカリスマ性
「うちらはメモリーのために遊んでるの、あんたのフォロワーのために遊んでるんじゃない」


 今回の動画の中で、私にはこの言葉が一番心に響いた。けみおの魅力は、正論だけれどみんなが言えなかったことを分かりやすく、かつ飾らないポップな言葉を使って発信できるところだ。正論は時として偉そうな口ぶりに聞こえてしまったり、聞く人を不快にさせたりするが、けみおにはそれがない。それは、いつもみんなと同じ立場に立って、様々な“サゲ”な出来事に対して一緒に悩み、考えてくれるからだろう。けみおは若者のカリスマでありながら、同時にどこにでもいる“ウチらの友達”なのである。


 今回の動画のコメント欄は共感の声で満ちている。私たちが“病んで”立ち止まったとき、「ウチも同じだよー」って寄り添ってくれるけみおの動画は、これからも支持を集めていくだろう。けみおが等身大の若者として色々なことに悩んで、それを発信することによって救われる人は、これからどんどん増えていくに違いない。動画の更新通知をオンにして、その力強い言葉を待ちたい。(堀田愛美)