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『初音ミク Project DIVA』10周年最新作が発売 初音ミクが刻んだ足跡を振り返る

2020年02月12日 17:22  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)SEGA

 2020年2月13日、『初音ミク Project DIVA MEGA39’s』(以下、MEGA39’s)がセガゲームスより発売となる。同作は、2009年発売の『初音ミク -Project DIVA-』を初作とするリズムゲームシリーズの最新作。家庭用のみならず、アーケードでも展開が続く人気シリーズの、発売10周年を祝うアニバーサリータイトルだ。


(参考:人間とAIは結婚できるか? 初音ミクと「Gatebox」が示した未来の恋愛


 名前からもわかるとおり、同シリーズの主人公は、ボーカロイド・初音ミクである。2007年、音声ソフトとして登場して以降、すぐにインターネットカルチャーの寵児となった彼女。本コラムでは『MEGA39’s』の発売を記念し、初音ミクが現在のカルチャーシーンに与えてきた影響を考察する。


・「ボカロ」という言葉を定着させた初音ミクの功績
 今や誰もが知り、使うところとなった“ボーカロイド(ボカロ)”という言葉は、初音ミクの登場によってシーンに定着した。現在でこそ、ひとつの音楽カテゴリとして成立しているボカロ楽曲だが、彼女の登場以前(正確にはボーカロイドソフトの登場以前)は生身の人間による歌唱が当たり前。歌えないクリエイターは、ボーカリストに協力してもらうことでしか歌モノを発表できない時代だった。


 2007年にボーカロイド・初音ミクが発売されると、サブカルチャーのるつぼだったニコニコ動画などでたちまち話題に。彼女をボーカルに起用した楽曲が次々と生まれ、初音ミクとボカロ楽曲は大きなカルチャームーヴメントとなっていった。


 やがてボーカロイドを駆使しながら活動するクリエイターを「ボカロP」と呼ぶようになる。近年ではこのカテゴリ出身のクリエイターが、ポピュラーミュージックシーンで活躍する姿も目立つ。「Lemon」や「パプリカ」などのヒットにより、国民的シンガーソングライターの地位に上り詰めた米津玄師もそのひとりだ。彼は現在の名義で活動する以前、ボカロP・ハチとして数々のボカロ楽曲を発表している。


 このように初音ミクが「ボカロ」という言葉を定着させ、シーンに与えてきた影響はあまりにも大きい。もしボーカロイド・初音ミクが発売されていなかったら。普段聴いているその音楽は、この世に存在しなかったかもしれない。


・ゲームシステムから見るVTuberとの類似性
 『MEGA39’s』では、選んだ楽曲をリズムに合わせてプレイし、初音ミクに最後まで歌唱させることを目的としている。プレイ中はモーションキャプチャーによってリアルに動く彼女が画面を彩る設計だ。また、コスチュームや髪型をカスタマイズして、自分好みのビジュアルで彼女をゲーム内に登場させることもできる。プレイヤーひとりひとりがパフォーマー・初音ミクを自由にプロデュースできる、『MEGA39’s』はそんなタイトルとなっている。


 本来、初音ミクという存在は、ユーザーが自身の表現を補完するためにツールとして扱う代物だった。しかし、同タイトルに登場する彼女には間違いなくアイデンティティがあり、アイコンとしてひとつのコンテンツになっている。その姿はVTuberに通ずるものとも言えるだろう。


 遡って考えると、VTuberというカルチャーもまた、初音ミクの登場によって発芽したものと言えるのかもしれない。現代のカルチャーにさまざまな影響を与えた彼女の存在。そのようなことを考えながら、『MEGA39’s』をプレイするのも一興なのではないだろうか。


 初音ミクの歴史はこれからも紡がれていく。10周年を記念したアニバーサリータイトルの発売は、まだ続く道の1ページに過ぎない。


(結木千尋)