学生に"就職をする企業を選ぶ軸"を質問した際、必ずと言っていいほど「成長できる環境」という言葉が出てきます。特にここ数年、この言葉を聞く機会が多くなったように感じます。
おそらく大手企業の大幅な人員削減、終身雇用制度の崩壊の影響だと考えられます。そのため「副業」や「パラレルキャリア」といったキャリア感が影響し、「会社に頼らず独り立ちできる力を身につけたい」という想いから出る答えなのだと思います。
実際、企業側もそこに合わせるように就職説明会や面接の場面で「自社がいかに成長出来る会社か」をプレゼンしています。
私自身、就活時は将来的な独立を見据え、自分を鍛えられる環境を探していました。今の学生が「成長できる環境」を求める外的要因も含め、非常に納得できる部分はありますが、その捉え方に違和感を覚えることがあります。
今回は就職先に「成長できる環境」を求める学生に伝えたいことが3つあります。(文:キャリアコンサルタント 坂元俊介)
"成長できる環境"とは"厳しい環境"のこと
1つ目は、「"成長できる環境"は人によって違う」ということ。企業選びの際、成長できる環境か否かという点を重視している学生から、よく「どの企業も成長できる環境と言っていて、どこを選んでいいのかわかりません」という相談を受けます。
その時に伝えしていることなのですが、成長出来る環境とは、その人の「成長の目的」「成長のために必要な要素」によって、大きく変わってきます。
そのため企業が言う「弊社は成長出来る環境」というのは、確かに「ある人」にはフィットするので、嘘ではありません。
2つ目は、「"成長できる環境"="厳しい環境"」であるということ。学生と話していて、成長できる環境の要素として良く挙がるのが、
・自分に向き合ってフィードバックをしてくれる人が多い
・若いうちから裁量権をもって仕事を任される
・レベル感の高い先輩・上司が多い
などがあげられます。
これは、嫌な言い方をすると、
・自分が出来ていないことを、適切に、かつ逃げることが出来ないぐらいひたすらに追及される
・経験していない仕事がガンガン振られてくる
・自分が全く通用しない環境
ということを意味しています。このように言い換えて学生に伝えると「そういう環境はちょっと自分には合わないかも知れません」となるケースがあります。このような学生にとっては"成長できる環境"は単純に一般論でしかなかったのです。
本来"成長"とは"出来ないことができるようになること"。出来ないことに向き合う必要がある環境ということは、決して自分にとって心地よい環境ではありません。つまり、心地よくない環境=厳しい環境。それこそ自分にとっての"成長できる環境"となるのです。
社会人が成長したと思うのは「死にそうになりながらやり切った時」
3つ目は、「"自分の成長"に意識がいかない環境こそ"成長できる環境"」であるということ。成長を自分で意識できている時点で、余裕がある環境、ということになります。その状態では、実はあまり大きな成長は得られません。
実際、成長をテーマにした企業研修で「一番成長できたこと」を振り返ってもらうと、社会人からは
「先輩が急に辞めて自分しかいない状態で、死にそうになりながらやり切った時」
「お客さんを任されて、その中で大きな仕事が始まり、右も左もわからない中で、お客さんに怒られながらやりきった時」
「全く成果が出ず、もう後がない、という状態の中で、何とか踏ん張った時」
といった事例が挙がります。「自身の成長」に目がいかないぐらい忙しい状態や崖っぷちの状態、コトに向き合えているときこそ、大きな成長を手にしているのです。
就活生で"成長できる環境"を探している人は、是非なぜ自分が成長出来る環境を求めているのかを考えてみてください。その上で、"自分自身にあった成長できる環境"を選択し、社会人として大きく羽ばたいて欲しいと思います。
坂元 俊介
株式会社STORY 取締役/キャリアコンサルタント・ヘッドハンター
同志社大学経済学部卒。新卒でリクルートHRMK(現リクルートジョブズ)入社。中途・新卒領域における求人広告媒体の営業に従事、その後、営業として3つの新メディアの立ち上げを行う。リーダーや大手担当を経験。Webベンチャーでのオフィス長経験を経て、30歳になるタイミングで家業の和菓子屋を継ぐとともに、企業の採用コンサルティング会社を立ち上げ、採用人事支援なども行う。リクルートの同期が立ち上げた株式会社STORYの法人化に伴い、取締役に就任。大学生・第二新卒層のキャリア支援をおこなうSTORY CAREER事業部の責任者を兼任。毎年数百名の大学生・社会人のキャリア支援を行っている。