人件費削減のため、アルバイトやパートなどの非正規雇用で人を採用する企業は多い。総務省が発表した「労働力調査」によると、2019年に非正規雇用で働く人の人数は過去最高の2189万人。今や非正規雇用がいない職場の方が珍しいだろう。
ただ、非正規にも関わらず正社員並、もしくはそれ以上の重い仕事を任せられてしまっている人も多い。キャリコネニュースの読者からも「アルバイトなのに社員の倍の仕事をさせられた。給料は3分の1」(40代男性)など、辛い経験談が寄せられた。(文:林加奈)
「契約社員やアルバイトを犠牲にしてもいいとは思えません」
管理・事務職の40代女性は、非常勤職員として小さな事務所のアシスタント業務に携わった。
「本職員が体調を崩し、出社が遅れたり、ほとんど会社に来なくなったりしたので、こちらの残業が多くなりました。契約では残業なしでしたので、残業代も一切出ませんでしたし、体調も崩れる中、何とか契約期間を勤めました」
職業訓練に通いやっと見つけた再就職先だったが、体力的にも精神的にも限界を感じ、退職を余儀なくされた。
「正社員は会社にとってプライオリティの高い存在だと思うのですが、契約社員やアルバイトを犠牲にしてもいいとは思えません。人口減少に伴い、貴重な労働力となりうる非正規労働者の雇用環境を少しでも考えていただきたいです」
と切実な思いを吐露する。
「有給がないかわりに飲み会がタダ。意味がわからない」
非正規ということで軽く見られるのか、本来なら当たり前の権利がないがしろにされているケースもある。20代女性は、非正規職員として勤務していた会社でのエピソードをこう語る。
「法定労働時間を満たしていたとしても有給を支給されない。その件で取締役に直談判したところ『有給はあげられないが、その代わりに会社の飲み会はタダで参加させてやる』と言われた。全く意味がわからなかった」
この職場は「毎日終電ギリギリまで勤務させられて、深夜手当は一切つかない。勤務中は一切外出禁止で飲み物1本買いにすら行けなかった」という。まさに絵に描いたようなブラック企業だったようだ。
その一方、非正規でも有休を取得した人もいる。販売・サービス職の40代女性は「非常勤特別職には有給休暇はないと言われ取れなかったが、よく調べ抗議したらちゃんと有給が取れました」と安堵する。
有給休暇は、「6か月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者」なら正規・非正規を問わず当然に適用される(労働基準法第39条)。現在、非正規雇用で働いている人で、有給休暇をもらえていない人は、自身の労働時間を計算してみてはどうだろうか。