2020年02月10日 10:32 弁護士ドットコム
勤務先や近所の公園。自分に身近な場所がまさか「女性の下着覗き(パンチラ)の名所」と呼ばれていたら、良い気分はしないはずだ。ところが全国津々浦々の「下着がのぞけるスポット」を紹介するサイトが数多く存在する。
【関連記事:「流産しろ」川崎希さん、ネット中傷に「発信者情報開示請求」 追い詰められる投稿主】
弁護士ドットコムニュースの取材に対し、こうした施設からは「ネットの情報には抗議しにくい」と苦しい胸の内をこぼした。
あるサイトには「長いエスカレーターと高い天井。見上げると女性のスカートの中が丸見えになるのでとてもおすすめです」。都内の大型百貨店はこのように紹介されていた。この百貨店以外にも、サイトには全国の様々な商業施設が紹介されている。
商業施設だけでない。世界遺産や国宝指定の名だたる城、長い石階段で有名な神社などもお構いなしに掲載されていた。
城が紹介されている理由は、天守閣への階段が急勾配であるからのようだ。東京都文京区の地下鉄某駅は「強い風が吹き、スカートがめくられる」などとして「下着覗きスポット」の烙印を押されていた。
槍玉にあげられたほとんどの施設が、名称と写真付きの特定可能な形で紹介されている。中には「12:00~20:00」「終日」など覗きやすい時間帯を記載しているサイトや、全国の約100地点の情報をグーグルマップに埋め込んで「見える化」したサービスまで確認できた。
このようなサイトの性格には2種類ある。
ひとつは性的な興味を露わにしたもの(例「うまくいけば一気に2人のパンチラを見ることができました」)。もうひとつは、あたかも注意喚起の形を装うもの(例「スカート姿で訪れることは避けたほうが良いでしょう」「のぞきは犯罪です。防犯目的の紹介です」)。
どちらにしても紹介の事実に変わりはなく、覗きや盗撮などの犯罪を誘発していると言ってもおかしくないのではないだろうか。
編集部では、サイトに名指しされていた全国の複数の施設を取材した。
前出の地下鉄駅を管理する鉄道会社は「下着覗きスポット」として紹介されていたことを把握していなかったが「盗撮や覗きの被害については2018年4月1日から本日(回答した1月24 日)まで、被害の報告はない」と回答。多くの施設が掲載の事実を知らなかった。
あるサイトで「国宝級に急な角度の階段」と紹介されてしまったのは、まさに国宝(天守)の松本城(長野県松本市)だ。
松本市役所教育部松本城管理事務所によると「松本城の階段は急で危険なため、該当の階段には警備員等が常駐しています。これにより、覗きや盗撮等が判明、または疑わしい場合は、常に警備員が監視し、注意するようにしています」と対策を講じている。
実際に覗きや盗撮など不審な行動を取る不届き者に対して「警備員等が注意等したことは何度かあります」と明かした。
サイトに取り上げられてしまった都内の神社では、過去にも週刊誌で特集記事が掲載されたという。
神社の広報担当者は「10年前ほど前に週刊誌の特集で、パンチラを見られる場所として私たちの神社が取り上げられたことがあります。出版社に抗議し、謝罪文を掲載してもらいました」と明かす。
今回のサイトの掲載は初めて知ったが、前回同様の抗議は「やりにくい」とこぼす。「ネットの匿名の運営者を特定して抗議しにくい。抗議することで相手を刺激して、さらにひどい記事を掲載されるおそれがあって怖いです」。
下着を覗きやすいスポットとして、特定できる形で施設を取り上げる行為は法的に問題があるのか。髙橋裕樹弁護士に聞いた。
ーーインターネットで特定の施設を「パンチラ(下着覗き)のスポット」と紹介する行為はどんな罪に問われる可能性があるか。
たとえば風でめくれ上がったスカートの中を見てしまったというのであれば犯罪にはなりませんが、階段の下で待ち構えたり、女性に付きまとうなどしてスカートの中を覗き込んだりするような行為、さらに携帯電話のカメラ機能などで撮影する行為は、女性に対する「卑猥な言動」として各都道府県の迷惑防止条例に違反する犯罪行為になります。
商業施設、神社や城などの建造物に、覗きや盗撮目的で立ち入ることは、建造物侵入罪にもあたりえます。
「パンチラスポット」の情報提供は、下着覗きをそそのかして犯行を煽ったり、下着覗きをしたいと考えている人に犯行場所を提供して覗きをやりやすくさせるといった効果を生みますので、場合によっては、迷惑防止条例違反や建造物侵入罪の共犯(教唆犯、幇助犯)となる可能性はあります。
ーー施設側からサイトに対して情報の削除を求めることはできるのか
施設管理者側は、犯罪抑止や観光スポットとしてのイメージ保護のために、サイト管理者に対して削除を求めることができます。また、サイト管理者を相手方とした裁判手続によって削除を求めることもできます。さらに投稿者やサイト管理者を相手に損害賠償請求ができる場合も多いでしょう。
施設管理者としては、匿名の投稿者やサイト管理者に恐れることなく、しっかりと削除や損害賠償請求といった毅然とした対応を行うべきだと思います。
【取材協力弁護士】
髙橋 裕樹(たかはし・ゆうき)弁護士
無罪判決多数獲得の戦う弁護士。依頼者の立場に立って、徹底的に親切に、誰よりも親切でスピーディな、最高品質の法的サービスの提供をお約束!でも休日は魚と戦う釣りバカ弁護士!
事務所名:アトム市川船橋法律事務所
事務所URL:http://www.ichifuna-law.com/