2020年02月08日 10:22 弁護士ドットコム
新型コロナウイルスの感染拡大とともに、国内ではマスクの売り切れが続出。一部のネットオークションやフリマでは高額で転売されるなど、パニック状態に陥っている。
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これを受けて、厚労省は業界団体やメーカーに対し、安定供給への協力を求める一方、消費者庁はネットで高額転売されていることについて、望ましくないと企業に対応を要請している。
「マスクがない…」
都内で働く30代男性は、ドラッグストアですっからかんの棚を前に呆然とした。1月末、風邪を引いた妻にマスクを買うよう頼まれ、仕事帰りに寄ったが、全て売り切れていた。何軒かドラッグストアを回って探したものの、1枚も見つけることができず、結局、地方の実家から送ってもらうことにしたという。
同じ頃、都内で小学生の子どもを育てている40代女性も頭を抱えていた。子どもは喘息持ちで、インフルエンザのシーズンも迎えることから、子ども用のマスクを探していたが、どこも売り切れ。仕方なく、通常の数倍の値段で販売されているAmazonで購入することにした。「これからもずっとこの状態が続くのかと思うと不安です」と話す。
また、別の40代の会社員女性もマスクを探していた。女性は花粉症持ちで、これからの季節にマスクは欠かせない。1月30日にやっと見つけたのが、通販大手「フェリシモ」で月に1度、マスク30枚が届くセット。多めに注文して安堵していたが、1週間後に届いたメールを開けたら、「急激な注文の集中」による注文キャンセルの文字が目に飛び込んできた。女性は悲鳴を上げた。
マスクが売れ始めたのは1月16日、厚労省が日本で最初の新型コロナウイルスの感染者が発生したと公表してからだった。
マスクの注文が集中してしまい、キャンセルせざるを得なかった「フェリシモ」は、「あらかじめ多めに仕入れていましたが、私たちの想像を超えるレベルの注文が集中していまいました。こうしたことは初めてで、本当に心苦しいです」と話す。今後も入荷予定はない。
国内大手メーカーも、増産体制をとるが、間に合わないという。「ユニ・チャーム」では、「国内で新型コロナウイルスが発生して以後、24時間体制を維持しながら、マスクの増産体制をとっています。通常の2~3倍は注文いただいてますが、供給が遅れてしまいご迷惑をおかけしています」と説明。今後も増産体制を継続するという。
一体、どれだけのマスクが売れたのか。
「一般社団法人 日本衛生材料工業連合会」によると年末年始には国内に10億枚の在庫があったが、新型コロナウイルスの騒動により、1月にはほぼ一掃されたという。「現在は各社が製造したらすぐに出荷している状態で、どれくらいの量になるのかまだ集計が取れていない。とにかく異常な量のマスクが出荷されている」と話す。
マスクの品薄状態を解消するため、厚労省でも、製造・販売業者には増産と安定的な供給への協力を呼びかけているが、オークションサイトやネットのフリマでは、高額で転売するケースが増えている。
中には、買い占めたマスクを数千枚単位で高額転売するなどの出品もみられる。消費者庁の伊藤明子長官も2月5日、会見で「転売目的ではないかと思われる動きがあり、望ましくない」と苦言を呈し、各社に対応を求めたという。
メルカリでは2月4日、異例の「お願い」出した。「社会通念上適切な範囲での出品・購入」を求め、取引状況によっては、事務局から入手経路を確認したり、商品の削除や利用制限も実施するとした。
また、ヤフーでも2月7日、「緊急事態に際し個人間取引が及ぼす社会的影響」から、「ヤフオク!」への出品禁止物に「災害などの緊急事態において、供給不足により人の身体・生命に影響がある物品を不当な利益を得る目的で入手し、出品していると当社が判断する出品」を加え、マスクの出品をコントロールする方針を示した。
すっかり「マスク争奪戦」に出遅れてしまったのは、都内の70代男性。妻と二人暮らしで、マスクは風邪をひいた時のために10枚程の予備があるだけだ。ニュースを見て、近所の薬局に出かけたがすでに売り切れていた。「もし、日本で本格的に新型コロナウイルスが流行するようになったら、外出せずに夫婦2人で引きこもるしかないですね」と諦めの境地で、マスク・パニックの行方を見守っている。