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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『ヲタクに恋は難しい』『37セカンズ』

2020年02月07日 19:32  リアルサウンド

リアルサウンド

(c) 2020映画「ヲタクに恋は難しい」製作委員会 (c) ふじた/一迅社

リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、ブサカワヲタクの大和田が2本のイチオシ作品をプッシュします。


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■『ヲタクに恋は難しい』


 本作は、マンガ、アニメ、BLをこよなく愛する“隠れ腐女子”と廃人クラスの“重度のゲームヲタク”の微笑ましいピュアラブストーリー映画。Web漫画が人気を呼び、アニメ化もされ、ついに高畑充希と山崎賢人の初共演で実写映画化された。


 監督を務めるのは『勇者ヨシヒコ』シリーズ、『銀魂』シリーズの福田雄一。山崎賢人×福田雄一のタッグは2017年公開の『斉木楠雄のΨ難』が代表作であるが、今回も福田監督は、クールなキャラクター宏嵩が恋に悩む内面を表現する山崎を、巧みにカメラに収めている。


 本作にはオリジナルキャラクターが登場し、キャスト陣が歌い踊るシーンが満載など、漫画とアニメとはまた別の作品に仕上がっている印象を受けた。福田監督は一番苦労した点として、「ヲタクな人にもヲタクじゃない人にも観てもらえる映画にしなきゃなと思った」(プレス資料より)と挙げている。ガチ腐女子、古参声優ドルヲタなど、ヲタクキャラを増やしたことで、幅広いジャンルのヲタクの層に楽しませる要素を加えている。また、映画版では、成海(高畑充希)の側には何のヲタでもない森田(今田美桜)がいることで、ヲタク気質がない人との違いが常に浮き彫りになり、面白さを与え、ヲタクではない側の観客は森田の視点で楽しむことができる。


 また、「人気漫画の実写映画」よりも「ミュージカル映画」のインパクトが強い。本編が始まって間も無く、高畑と山崎がたくさんのダンサーに囲まれて東京ビッグサイトの前で踊り、1曲を通して歌い上げる。豪華なオープニングだなと観続けていると、次々とキャラクターたちが歌って踊るシーンが挟まれ、1曲まるごと歌い上げるのだ。そしてそれらの楽曲は全てオリジナル曲で、『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの鷺巣詩郎が手がけている。エンディング曲はまさに『エヴァ』を彷彿とさせる音楽で、ところどころに福田監督の遊び心が散りばめられているようだった。兼ねてから定評のある高畑のパフォーマンスはもちろん、山崎の歌声がたっぷりと聞けるのはなかなか貴重な機会かもしれない。


 また、お馴染みの福田組常連メンツ、佐藤二朗、ムロツヨシ、賀来賢人が開くプチ劇場も堪能してもらいたい。


■『37セカンズ』


 Netflixでの海外配給も決定するなど、すでに世界中の映画ファンから熱気をもって迎えられている本作は、主⼈公・貴⽥ユマ(佳⼭明)が“新しい世界”を切り開いていく物語。


 本作が⻑編デビュー作となるHIKARI監督は、18歳から渡⽶して映画を学び、すでに海外各国からの⾼い評価を受け、ハリウッドから企画のオファーが何本も舞い込んでいる。


 ⽣まれた時にたった37秒間呼吸が⽌まっていたことが原因で、⼿⾜が⾃由に動かない⾝体になったユマは、親友の漫画家のゴーストライターとして働いているが、⾃分の作品として出せないことへの寂しさや⻭がゆさ、そしてシングルマザーでユマに対して過保護になってしまう⺟・恭⼦(神野三鈴)との⽣活に息苦しさを感じていた。⾃分にハンディキャップがあることをつきつけられる⽇々だが、それでも23歳の⼥性として望んでいいことだってあるはずと、そんな思いの狭間で揺れる⽇々を過ごしている。主人公には数々の登場人物や事件などから、あるきっかけが与えられる物語がほとんどだが、ユマはそれよりも自分で動こうとするエネルギーがすごい。周りの登場人物たちは、ユマが決めたことに対して手助けをする、それくらいの役割で、ユマが道を進んでいく過程には、見たことのないものを見せてくれるという感覚を覚えた。CHAIのポップな主題歌や、美しくきれいな映像も、作品に引き込まれてしまう要素の一つだ。


 2019年2⽉に開催された第69回ベルリン国際映画祭の観客賞と国際アートシアター連盟(CICAE)賞をW受賞のほか、ポスターにビジュアルにも刻まれている通り数々の賞を受賞している。今後大作が控えるであろうHIKARI監督の初めの一作としても見逃してはいけない作品だろう。


 バラエティ豊かなラブコメ『ヲタクに恋は難しい』と映像が美しいヒューマンドラマ『37セカンズ』。かなり温度差が違う2作品、気分に合わせてどうぞ。


※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記。


(リアルサウンド編集部)