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ライブ会場の「家虎」コールは違法なのか?「ヲタ文化の衝突」でトラブル浮き彫りに

2020年02月07日 11:02  弁護士ドットコム

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「家虎を根絶する方向で動く」「場合によっては法的手段も検討する」。アニメやゲーム、イベントなどを手がける「ブシロード」の取締役で、創業者の木谷高明さんがツイッター上で、このように投稿したことが話題になっている。


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●「文化の衝突の結果だ」

木谷さんは2月2日、ツイッター上に「家虎根絶する方向で動きます。今後、明らかにライブの妨害に当たるものは退出に留まらず、ブラックリスト化。場合によっては損害賠償請求など法的手段の検討もさせて頂きます」と投稿した。



あまり「家虎」という言葉は聞き慣れないかもしれない。一般的には、アイドルや声優のライブで、「イエッタイガー!」と大声で叫ぶコールや、またはそのファンそのものを指すようだ。



悪目立ちも少なくないと言われており、ライブによっては「家虎禁止令」が出ることもあるという。アイドル文化に詳しいロベルト麻生氏は、弁護士ドットコムニュースに次のように説明する。



「もともと三次元好きのアイドルヲタと、二次元好きの声優ヲタは、はっきりと分かれていました。アイドルヲタは、大きな声を出してみんなで盛り上がりたいという人が多いです。一方で、声優ヲタは声優をアーティストとしてリスペクトしているので歌をじっくり聴きたい。



ところが、『アイドルアニメ』というジャンルで、両者が交わった結果、声優の現場にアイドルヲタのノリが持ち込まれ、文化の衝突が起きたと思われます」



●「家虎」は違法になりうる

いずれにせよ、ライブ会場で『トラブル』のきっかけになるようなことが起きている、ということのようだ。では、ライブ主催者としては、どのような法的手段が考えられるのだろうか。河西邦剛弁護士に聞いた。



――そもそも「家虎」は違法なのでしょうか?



ライブ主催者が、家虎禁止を周知徹底している場合には違法になりえます。主催者には施設管理権限があり、会場の禁止行為を設けることができるからです。



たとえば、「演出の妨げになる行為」や「他のお客様のご迷惑になる行為」を一般的に禁止していることが多いですが、これは法的な施設管理権限に基づくものです。なので、主催者としては、家虎についても禁止行為とすることはできます。



――家虎をしているファンを退場させることはできるのでしょうか?



禁止行為違反として退出させることは可能です。しかし、客としても、入場料を支払っているので、『公演を見る権利』があります。家虎禁止という新たなルールを設ける場合には、公式ウェブサイトで告知したり、わかりやすく会場に張り紙をしたり、開演前にアナウンスするなど、周知徹底が必要になります。それにもかかわらず、家虎をおこなう入場者は退場させることもできます。



――主催者は、損害賠償を請求することはできますか?



一般的には、損害発生の立証が難しいでしょう。ですが、実際に「公演が妨げられた」「公演続行が不可能になった」「演出が妨害された」といえる場合には、損害賠償の余地はあります。さらにいえば、行き過ぎた迷惑行為は、威力業務妨害罪(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)という犯罪行為にあたる可能性すらあります。自分だけが楽しめればいい、というのではなく、みんなで公演を楽しむという視点が大切になると思います。




【取材協力弁護士】
河西 邦剛(かさい・くにたか)弁護士
「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。アイドルグループ『Revival:I(リバイバルアイ)』のプロデューサー。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/