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採用担当者のメンタルヘルスが危ない! 心理的サポートが採用難時代の成否分ける

2020年02月06日 07:10  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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あらためて言うまでもなく、現代は「採用難」の時代です。少子化による若者の構造的な減少で求人倍率は全体平均でも2倍近く、業種や規模によっては10倍という、企業にとって危機的な「売り手市場」になっています。

このことは報道などで知られていますが、「採用難」の結果、採用担当者のメンタルヘルスが危険にさらされていることにはあまり目が行っていないようです。厳しい状況で戦いを続けていけば精神的に消耗するのは当然ですが、彼らはあまり表に出ないので注目されないのでしょう。(人材研究所代表・曽和利光)

意中の人からフラれ続ける日常


採用はよく恋愛や結婚に例えられますが、今の採用担当者たちは毎日「意中の人からフラれ続けている」ようなものです。会社に対するロイヤリティが高く頑張っている採用担当者ほど、辞退やキャンセルなどの拒絶を自分事として捉えてしまい、まるで自分の人格が否定されたような悔しい思いをして心に傷がつくのです。

採用担当者からは「あれもやったし、これもやった。それなのに全然成果が出ない。説明会にも人が来ない。予約もすぐキャンセルされる。内定を出しても辞退。もうどうすれいいのか分からない」といった恨み節ばかりが増えています。

このようなことが続くと、無意識のうちに「もう傷つきたくない」と考え、チャレンジを止めてしまうのは人として普通のことです。

実際、企業の採用合同説明会に参加すると「本当に採用する気あるの?」と思うくらい採用担当者のやる気のなさに驚くことがあります。高いブース料を支払っているというのに、目の前のたくさんの学生に声がけすら行わず、自社のブースにボーッと座っているケースも珍しくありません。

「学習性無気力」につながる危険性

これはまさに心理学者セリグマンの言う「学習性無気力」(Learned helplessness)に当てはまります。長期に渡ってストレスを回避することが困難な環境に置かれた人は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなってしまうのです。

学習性無気力に陥ると、本当は少し努力すれば成果が出るような場面でも「何をやっても無駄だ」と思ってしまい、自発的行動をしなくなってしまいます。もし採用担当者がこのような状態になれば、良い採用活動などできるわけがありません。

多くの採用担当者たちが、今まさにそのようなひどいストレスにさらされていますが、この状況を理解していない経営者や人事責任者もいます。採用の成果が出ないことで焦燥感に駆られ、採用担当者を叱責しても解決策にはなりません。

本当にしなければならないのは、彼らの「心のサポート」です。失われた自信を取り戻すために励ましたり自社の可能性について語り合ったり、採用活動のアイデアを出し合ったり。さらにいえば、担当者とともに採用の最前線に立って厳しい状況に直面したりと、できることはたくさんあります。

担当者の自信が「採用戦闘力」になる

私は常々、「採用の成否は戦略や戦術よりも戦闘力で決まる」と考えています。戦略や戦術はもちろん重要ですが、他社がすぐにマネできることでは差別化しにくい。

もし募集がうまくいき優秀な候補者に会えたとしても、採用担当者が自信を持って自社の明るい未来や夢を語り、候補者を思い切って口説けなければ、それまでの活動はすべて水の泡です。引く手数多の優秀な人材は、他社へ逃げてしまうでしょう。

そこで大事なのが採用担当者の「自信」なのですが、学習性無気力に陥った担当者には望むべくもありません。結論を申し上げますと、このような「採用難時代」には、採用担当者のメンタルヘルスのケアが大変重要になってきているということです。

もちろん「採れない」のは、採用担当者自身の能力や採用戦略、各種施策の巧拙による面もあるでしょう。しかし冒頭に述べたように、求人倍率の向上や少子化などの構造的な「不可抗力」の要素も大いにあります。

経営者や採用責任者はそれを念頭におき、採用担当者を責めるだけのマネジメントに陥ってはいけません。それどころか、採用担当者たちを心理的に支援しモチベーションアップを図ることによってこそ、この「採用難時代」における採用成功が実現できるのです。

【筆者プロフィール】曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。近著に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)。

■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/